第184回多文化共創フォーラム「在蘭日系IT企業A社欧州地域統括本社における多文化共創経営」リポート

多文化社会研究会の皆様

お世話になっております。大東文化大学の長谷川でございます。
4月26日のフォーラムにご参加くださいました皆様には、心より御礼申し上げます。
フォーラムについて、下記、ご報告いたします。

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4月26日、カイ日本語スクールにおいて、第184回多文化共創フォーラム「在蘭日系IT企業A社欧州地域統括本社における多文化共創経営」を開催しました。

2024年3月、オランダ、アムステルダムで行ったA社の欧州地域統括本社でのインタビューの報告になります。この企業は、ヨーロッパ、中東、アフリカにある24の販売子会社を統括しています。35の国籍を有する185人の従業員が働く、実に多文化な組織です。オランダは非英語圏で最も英語の通じる国であり、英語を社内公用語としています。

これだけ多くの国籍の人々が協働しているにもかかわらず、ある種日本企業特有の一体感が醸成されています。フロアの先生方からもご指摘があったように、戦後、高度経済成長を背景に企業規模の拡大と長期雇用が可能となり、日本型雇用制度が形成されました。優れた創業者の理念、哲学、時には宗教観に裏打ちされた人間性などに惹かれて入社する若者も少なくなかったと思います。A社もそうした企業の1つです。従業員は仲間意識を共有し、近年メンバーシップ型と呼ばれる働き方につながりました。そうした気持ちがA社の欧州統括本社で働く非日本人社員にも共有されているのは興味深いことです。

同時に、オランダの働き方はいわゆるジョブ型といわれる制度であり、日系企業といえども例外ではありません。種々の法律を遵守しなければなりません。給料と結びついたジョブ・ディスクリプション、同一労働同一賃金の徹底、様々な決定プロセスの透明化など、日本企業にはないものばかりと言わざるをえません。オランダはパートタイム労働者の比率が世界で最も高い国ですが、日本のような正規雇用と非正規雇用のような格差はありません。

多文化共創経営を目指すためには、少なくとも多様な従業員のニーズをしっかりと理解し、選択肢を用意することが必要でしょう。ちなみに、オランダ人は昇進よりも、ワークライフバランスを大切にする国民だそうです。日本企業にとって、国籍に関わらず、公平性、透明性、自己実現の可能性を感じられる具体的な制度設計が今後は急務であると感じました。

フロアからは、今後も多文化共創経営の多角的研究を継続していきたいというご要望がありました。

大東文化大学経営研究所所長 

長谷川礼

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