第174回<多文化共創フォーラム>を開催いたしました!

多文化研の皆様

第174回多文化共創フォーラム「国際労働力移動を多元的視座から探究する ― 協働・共創の未来」を多文化社会研究会と学習院大学国際社会科学学会との共催で行いました。

冒頭、原田壽子立正大学名誉教授(多文化研名誉顧問)の開会挨拶で、女性の社会的地位、社会参加の変遷、課題などについてお話しをいただいたのち、多文化研理事長の川村千鶴子大東文化大学名誉教授の本フォーラムの趣旨説明がありました。

3部構成の開催の概要は以下の通りです。

第一部(問題提起)

その1「国際労働力移動の歴史的変遷から」
万城目正雄氏(東海大学教養学部人間環境学科教授、多文化研理事)

その2「移住労働者における数のアプローチと権利のアプローチから考える」
杉田昌平氏(弁護士、JICA国際協力専門員。多文化研会員)

第二部(基調講演)
「国際労働移動ネットワークの中の日本」

是川夕氏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長)

第三部(パネルディスカッション)

モデレーター:野崎与志子氏(学習院大学国際社会科学部教授)

1.「日本の中小企業を可視化できる」      万城目 正雄氏
2.「数のアプローチから未来を拓く」      杉田 昌平氏
3.「国際移動におけるモードの差異とそこにおける課題」  是川 夕氏
4.日本を目指す留学生、労働者、家族滞在。多様化する「日本移住」への流れ   
織田 一氏(朝日新聞社)

5. トルコの移民政策、現状等    伊藤 寛了氏(帝京大学)
6. 「ライフサイクルの視座と世代間サイクル」   川村 千鶴子

第一部から第二部では、さまざまな調査データをもとに、マスコミ報道の影響を色濃く受けた外国人労働者に対する日本社会の認識を翻すデータ分析や知見に、会場は静かな驚きに包まれました。また、是川氏は、OECD SOPEMIという加盟国の移民政策の専門家会議からフォーラム前日に帰国されたばかりで、ウクライナ問題も含んだホットな情報も伺うことができたのも幸運なタイミングでした。

最後のパネルでは、朝日新聞の織田一氏のネパール取材を通した日本留学熱再燃の状況に関するご報告と、トルコから帰国した帝京大学の伊藤寛了氏によるトルコの移民政策についての話の後、それを受けて、パネリストが感想や意見を述べ合いました。

最後に、川村多文化研理事長より、国際労働力移動の分析には外国人の世代間サイクルが進んでおり、さらに「生と死」を包括するライフサイクルの視座を念頭に置いた共創社会の重要性が指摘されました。多文化研の存在意義を再確認して、パネルを閉じました。

パネル後、多文化研ユースの立ち上げと運営に尽力されている東京大学の土田千愛博士・多文化研理事の挨拶で閉会となりました。

帰り支度をしながら「出席して本当によかった!」とおっしゃっていた方々の笑顔が印象に残っています。多くの視座を与えて下さったご登壇の皆様、本当にありがとうございました。

当日の写真も添付いたしますので、ご覧ください。

多文化社会研究会理事
山本弘子

=======

フォーラムに参加した学習院大学の学生のみなさんから、感想が寄せられています。
野崎与志子教授がまとめて下さいました。
————–

学習院大学国際社会科学部学生の感想

*******************

Hana Hosokawa(学習院大学国際社会科学部3 年)

異なる人種や文化を持った人たちが共生する「多文化社会」について、理解を深めることができた。「多文化社会」については、ぼんやりとしたイメージを持っていたが、今回のセミナーを通して、『“皆”が生きやすい世界の創造』であるなと感じ、とても興味深く充実した時間であった。日本の少子高齢化・人口減少が進むと同時に世界的に経済のグローバル化が進み、人の国際移動が活発化している。日本は既に多文化社会の中にいることを自覚し、外国人が持つ社会問題に1人1人が目を向けなくてはならない。
多文化社会の理解を深めるためには、意識だけでなく、交流の機会の提供、地域行事、人材育成など、今回のような多文化研究会のアクションや各々の啓発が大切であり、今後さらに求められていくと感じた。

*************

Mayu Kohama (学習院大学国際社会科学部4年)

Thank you for today’s 多文化共生フォーラム!! Today, I learned the importance of Co-working and Co-creation with foreigners including international immigrants. I found that the lectures at today’s forum are linked with what I learned in the UK during my study abroad and what I’m studying now in Gakushuin University about migration and those challenges and problems. Honestly, I hadn’t known the history of migration (especially in Japan) until I took a class about human rights and economic development. I guess many Japanese people don’t know about the issues because these are unfamiliar issues for them. With the spread of threat of Russia-Ukraine war, I reckon it’s time to think international migration challenges and problems to co-work with asylum seekers and migrants during the time of war. I want to know more about how we can help migrants.

*************

Iyoko Someya(学習院大学国際社会科学部3 年)

日本は戦後の時点では外国人を受け入れない方針であったものの、人口構造の変化により今後は外国人労働者の受け入れを更に拡大する必要があるようになると思います。それにあたり、どのような受入れルートを選ぶか、また現行の在留資格制度による審査を続けるべきか、様々な課題があることが分かりました。制度上の課題のみならず、実際には杉田先生の仰っているように国家以外の主体を外国人の方の人権を尊重する必要があると思いますし、個人レベルでも労働者の方を単に「労働力として必要」ではなく、共に社会をつくっていく大切な構成員であり仲間であると考えなくてはならないでしょう。また、常に知識のアップデートを行い、在留外国人の現状や課題を把握することも欠かせないと考えています。今回のフォーラムで、私は「日本の高度人材受け入れのハードルが低い」という点について質問しました。講師の先生に詳しくご説明頂きました。ありがとうございます。

************

Haruo Sekiguchi (学習院大学国際社会科学部4年)

東南アジアにおける日本への留学は、日本人で例えると大学進学のようなもので、一種のステータスなんだろうと思っていたが、内陸などでASEAN のように大企業を呼び寄せて、加工貿易のような貿易拠点になる事が出来ないから、外国に出ないと職や金がないという明確な理由がある事を学ぶ事が出来た。講義の中であったさびれてお客が入っていないインド料理屋がなぜ成り立っているのかという話は、低賃金で働かされている外国人労働者問題の根本的な原因な気がして、負の連鎖のようなものを感じた。また、日本への留学がヨーロッパの各国より人気な原因が、日本のみstudy and work であるということを知り、日本への労働移民の多さを再確認し、このまま労働移民が増えると日本も多民族国家の仲間入りをする事があるのかもしれないと思った。

***************

Ayli Fatheghavi(学習院大学国際社会科学部2年)

現代の若者のライフスタイルが変化しているということを最初に学びました。移民の受け入れはコロナ禍であっても増え、30 年で在留外国人は30 倍になり内なるグローバル化が進んだことがわかりました。そんな中で国と役所がどのような関係を作るかが課題となってきました。日本には政策目標がないにもかかわらず技能実習生の数をコントロールできているのは、日本に技能実習生としてくるには入国前借金が高いからであると考えられます。今回の講演で取り上げられていた分野はどれも私が興味のある分野で、わかりやすく教えてくださったのでとても楽しかったです。

*********************

Momona Niwa (学習院大学国際社会科学部2 年)

To begin with, I was surprised to find out that Japan was one of the countries that accepted many foreign people because now Japan seems to be very negative about it. However, I also learned that it was because there has been less migration flow due to the pandemic and this problem of less international flow of people has become a problem not only for Japan, but also many other countries that need human resources from outside of their countries. Moreover, especially in Japan, this problem has been making the worker shortage more serious since foreign workforce is no longer helping to cover the shortage. I only made it to Part II unfortunately, but it was a really interesting forum so I wish I could attend all the parts. I made a comment: The differences between the phenomena that Asia has and that Europe and/or the United States has about migration are interesting.

第174回<多文化共創フォーラム>を開催します!

「国際労働力移動を多元的視座から探究する ―協働・共創の未来」
Multicultural Synergetic Society
Analyzing the migration of international workers from various multi-functional viewpoints = Values of co-operation and synergetic society with Human Rights and Business

共催:多文化社会研究会&学習院大学国際社会科学学会
日時:2022年10月15日(土)13:30~17:50
場所:学習院大学南館2号館200教室(豊島区目白1丁目5-1)
教室(定員100名)とオンラインとのハイブリッドで開催します。Zoomでも配信予定

参加費:無料

司会:山本弘子(カイ日本語スクール代表。多文化研顧問)

☆開会挨拶:Opening Comment

多文化研創立から34年。多元価値社会の地道な研究を持続可能にした安心の居場所です。
原田壽子 (立正大学名誉教授。多文化研初代副会長。多文化研名誉顧問。男女共同参画功労者内閣総理大臣賞表彰)

☆趣旨説明:グローバル化は地域の独自性や多様性の主張をも随伴し、情報は瞬時に脈動します。複眼をもって国際労働力移動の多元性を理解しましょう。     川村千鶴子 (多文化研理事長。大東文化大学名誉教授)

第一部 
☆問題提起 その1:「国際労働力移動の歴史的変遷から」(13:40~14:20)
International Labor Migration in Historical Perspective

今、注目を集めている日本の外国人労働者問題を、まずは、その歴史的変遷を踏まえて解説します。初学者、大歓迎です。
万城目正雄 (東海大学教養学部人間環境学科教授、多文化研専務理事。主な著書に、『岐路に立つアジア経済-米中  対立とコロナ禍への対応(シリーズ:検証・アジア経済)』(共著、文眞堂、2021年)、『インタラクティブゼミナール新しい多文化社会論』(共編著、東海大学出版部、2020年)、『移民・外国人と日本社会』(共著、原書房、2016年)などがある

☆問題提起その2:(14:30~15:10)
「移住労働者における数のアプローチと権利のアプローチから考える」
The numbers approach and the rights approach in International Labor Migration.

国際労働移動は、ホスト国からは、開放的な国境と市民権の平等という2つの観点から検討されてきました。そこで、日本においてどの程度国境の開放性を持たせるか、また、平等な市民権をいかに達成するかについて、数のアプローチ・権利のアプローチと題して問題提起を行います。
杉田昌平 (弁護士法人Global HR Strategy、弁護士。JICA国際協力専門員。多文化研会員。慶應義塾大学法科大学院KEIGLAD研究員。主な著書として『改正入管法関連完全対応 法務・労務のプロのための外国人雇用実務ポイント』、『外国人材受入れサポートブック』、『改正入管法対応 外国人材受入れガイドブック』、『グローバルスタンダードと送出国法令の解説』等)

第二部
☆基調講演:「国際労働移動ネットワークの中の日本」(15:20~16:10)
Japan amid the International Labor Migration Network

外国人労働者の受入れに関するこれまでの日本における議論はもっぱら日本国内の状況にのみ注目し、国際的な環境変化を十分に視野に入れてこなかったと言えます。本講演ではアジアで現在、勃興しつつある国際労働市場の実態を明らかにし、そこにおける日本の位置づけを明らかにします。このことは国際移動を考えるにあたって、日本社会が主体的に決定できる/できないことを峻別することを可能にするものであり、今後、急速に移民社会化する日本において、「道徳的に正しくあることが、選ばれることにつながる」という、いわば自己完結的なロジックを越えて、真の課題を明らかにする視点といえます。
是川 夕(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。
OECD移民政策会合ビューローメンバーなどを歴任。
OECD移民政策専門家会合(SOPEMI)政府代表も務める。
主な著書に、『移民受け入れと社会的統合のリアリティ:現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題』勁草書房2019、「国際労働移動ネットワークの中の日本:誰が日本を目指すのか」日本評論社2022等。

休憩<多文化研ユースの紹介とチラシ配布>

第三部
☆パネルデスカッション (フロアから学生も参加できる)(16:20~17:20)
Panel Discussion – Welcoming the speech from the floor
モデレーター:野崎与志子(学習院大学国際社会科学部教授)

1.「日本の中小企業を可視化できる」            万城目 正雄
2.「数のアプローチから未来を拓く」            杉田 昌平
3.「国際移動におけるモードの差異とそこにおける課題」  是川 夕
4.日本を目指す留学生、労働者、家族滞在。
            多様化する「日本移住」への流れ   織田 一(朝日新聞社)
5. 「ライフサイクルの視座と世代間サイクル」        川村 千鶴子

☆集合写真撮影
☆閉会挨拶:Closing comment

多文化研創立35周年を控えて新しい時代を切り拓く。
Coming 35th Anniversary of Society for Multicultural Community Studies, creating the new era of multicultural synergetic community.
 土田 千愛 東京大学地域未来社会連携研究機構特任助教。博士(国際貢献)。