第196回多文化共創フォーラム「過去から未来へのバトン」振り返り

多文化研正会員のみなさま

 9月6日、第196回多文化共創フォーラムが東京・飯田橋の東京ボランティア・市民活動センターで開かれました。この日のテーマは「過去から未来へのバトン」~多文化共創の今後を問う、です。広島、長崎への原爆投下から80年という節目の年を迎える中、世界で核兵器使用の脅威が高まり、移民排斥の流れが強まっているとの認識のもとに今後の日本のあり方を考えることが今回のフォーラムの目的です。

 まず増田・多文化研副理事長が開会の挨拶、7月の参議院選挙を念頭に「日本でおかしな風が吹いている」と核保有や排外主義を訴える政治家が所属する政党の台頭に危機感を示す中、川村千鶴子理事長の講演が始まりました。「世界のヒバクシャとグローバル・テクノスケープの視座」と題して行われた講演では、マーシャル諸島ビキニ環礁での米国の水爆実験に着目し、世界のヒバクシャについて研究を進めてきた経緯が詳細に明らかにされました。川村先生が科研費補助金の研究代表者になって実施した「太平洋島嶼諸国における経済発展と環境問題」の研究成果やマーシャルに平和部隊の一員として派遣され、現地の女性と結婚した米国人との交流やトルーマン・ライブラリーを訪問した時の逸話などが語られ、参加者が興味深く耳を傾けました。ヒバクシャと家族の苦悩に寄り添ってきた立場から「核兵器の利点が議論されているが、人類にとって壊滅的な脅威であることを知らない人が多い」と指摘、核兵器の廃絶と原爆被害に対する国家賠償の必要性を訴えました。

(平木咲衣さん)

 10分間の休憩の後、9月下旬に早稲田大学大学院日本語教育研究科に進学する平木咲衣さんが「現地から見た日本語教育~国際交流基金パートナーズに参加して」をテーマに、ベトナムでの参加体験を報告しました。現地の小学校、中学校、高校の日本語の授業の様子が写真や動画を使ってリアルに再現されたほか、ベトナム人生徒が日本語で書いた作文も紹介されるなど大変興味深い報告でした。平木さんは北海道出身で、大学時代に日本語教員養成コースを受講、函館の水産加工業に従事するベトナム人技能実習生と交流したり、北海道東川町の日本初の公立日本語学校の調査研究を行ったり、地域の多文化共生に関わってきました。報告ではこうした経験も明らかにされ、大学院進学後の日本語教育に関する研究計画についても語ってくれました。平木さんの報告を受けて文部科学省日本語教育課の増田麻美子・日本語教育調査官が「日本語教育は大きな転換点を迎えている」と日本語教師が国家資格になった後の状況の変化を説明し、文科省が様々な対応策を取っていることが示されました。

(司会:藤巻理事)

 戦後80年に及ぶ原爆被害の歴史から日本とベトナムの関係の未来、外国人が急増する日本での多文化共創の今後。ヒバクシャと日本語教育という一見繋がりのないテーマでしたが、最後に閉会の挨拶をした貫隆夫・名誉顧問は排外主義を唱える政党が核抑止論にも言及していることを念頭に「二つは繋がりのあるテーマで、有意義な議論ができた」と述べ、フォーラムは終了しました。

(企画担当理事 藤巻秀樹)

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