<多文化トーク『中東・ウクライナ危機の最新情報〜NATOの憂鬱』>(日時:7月3日(木)18:00~20:00 / 場所:東京ボランティア市民活動センターB会議室(飯田橋・ラムラ10階)が、急遽の変更などありながらも無事行われました。
今回はフォーラム形式ではなく、参加する方々が自由にテーマに関して話し合うという形での会となりました。
なお、今回は、参加者の一人荒井が感想を述べております。自分の関心は、モンゴルを中心としたユーラシア世界の社会史で、言語を切り口にいろいろなことを調べております。
川村千鶴子先生を皮切りに、サイトを見て初めて参加して下さった方、長谷川礼先生、そして、何より多文化研メディア班増田隆一さんが海外にいるお友達から集めた貴重な中東・ウクライナ危機に関する情報をお聞きすることができました。
川村千鶴子先生が実際その目で見て体験されたソ連時代のお話しは貴重なものでした。また、現在、日本各地にはロシア人やウクライナ人、そしてその周りにその関係者がおり、それが共存している状態です。これらの方々が口々にするのは、ロシア・ウクライナの両方にアイデンティティを感じるという人が多くいることだったという情報も川村先生が提供してくださいました。
今回初めて参加された方は、ロシア・西シベリアの主要な都市で長く働いていた経験からのロシアに対する視点を提供くださりました。
かくいう私は、モンゴル系のブリヤート人やカルムイク人といった少数民族が、場合によってはモスクワ、サンクトペテルブルグの60倍(トークの方ではこの数字は出しませんでした)もの死者を出していて、プーチンになってからひどい少数民族いじめというか差別が存在する現状などが提供できたかと思います。
とまれ、印象に残ったのは増田さんの各地に散らばるメディアに携わるお友達からの情報です。
アメリカ軍のイランに対する攻撃の成果と評価は非常に興味深く。今回、「爆縮」という核爆弾を最大の効果で爆発させる仕組みの増田さんの解説とともに、その実験が北朝鮮などでは3回成功し、その場所が特定されているのに、イランでは実験が行われたのだろうけど場所が特定できていない事実は、なんとなく知ったかぶりして僕がこういうことかと語ってみたところ、見事に外れた恥ずかしさとともに非常に勉強になりました。
あとは、本国とヨーロッパのNATOに対する見解の間に立つEUにいるアメリカの武官の悩ましい板挟み状態とかの情報も非常に貴重でした。そのほか、トランプやアメリカ政府に関する認識を様々な方から様々な角度で提供された情報は、それぞれを組み合わせると立体的に見えるものになりました。まさに、実際に携わっている人に食らいついて聞いてくださったらこうみえるんだなというものでした。
なお、感想としていうならば、ロシア・ウクライナ間にはソ連時代にあったような融和的な関係はもうないのだろうなと思っています。ウクライナのウクインフォルムなる通信社で働く平野高志氏のtwitter(当時)でも戦争が始まろうとしている時、そして始まった後、多くの人が自分が得意なはずのロシア語でつぶやくのをやめ、下手でもウクライナ語でつぶやくということを宣言したりします。また、NHKでディレクターを務めるノヴゥツカ・カテリーナさんのセルフ・ドキュメンタリー『ウクライナ語で叫びたい』(https://www.nhk.jp/p/ts/YN5YRJ9KP6/episode/te/J72L9WPRMJ/)でも、「ロシア語話者をウクライナのナチ」から守るといいながら、ロシア語話者自身を次々と殺している現状から、同様の決断に至る人々が多くいることからも見えるからです。映像も強烈ですが、ネットで拾える感想からも大体のことが分かると思います。
ユーゴ内戦といわれた状態から多くの民族がそれぞれ独立し、「敵同士」なので、別の言語という認識を強く持っていましたが、終結後20年ほどの時間がたつと、同じ言語という認識に戻りたいと主張する人がちらほら表れています。今後どういう方向に向かうかわかりませんが、ウクライナとロシアの言語における先鋭化を見るその先例としても注目していこうかと思っています。
荒井幸康・多文化研理事・「多読味読」担当