海外便り〜住宅街の看板が伝えるイギリスの選挙

大山彩子理事(イギリス・ケンブリッジシャー/イーリー在住)

会員のみなさま、こんにちは。
イギリスに約20年住んでいる大山彩子と申します。
川村先生からのお声がけを受け、イギリスから「海外便り」をお届けいたします。

「住宅街の看板が伝えるイギリスの選挙」

イギリスでは選挙前になると、住宅街を歩いていて政党の看板を見かけることがあります。写真のように 「保守党(Conservatives)」 や「自由民主党(Liberal Democrats)」など、住民が自宅の前に掲げて「この政党を応援しています」と示すのです。実際に掲げている人はそれほど多くはありませんが、ふと目に入ると「もうすぐ選挙なんだな」と実感します。

(保守党支持を訴える看板)

私がElyに住み始めた7年前は、住宅街で見かける看板のすべてが保守党(Conservatives)を支持していました。しかし前回の総選挙前に、自由民主党(Liberal Democrats)の看板が急に増えました。そして実際に、長年この地域を代表し文化担当大臣も務めた保守党のルーシー・フレーザー(Lucy Frazer)氏が議席を失い、自由民主党のシャーロット・ケイン(Charlotte Cane)氏が当選しました。選挙区は2023年に新設された Ely and East Cambridgeshire で、2024年7月4日の総選挙が初めての戦い。結果はケイン氏が17,127票、フレーザー氏が16,632票と、わずか495票差での逆転劇でした。

イギリスの選挙活動は日本とはスタイルが大きく異なります。日本では候補者が選挙カーで名前をアピールしたり、町の掲示板にポスターが並ぶ光景がよく見られる一方、イギリスでは、戸別訪問や郵送チラシ、インターネット広告などが中心です。そのため選挙シーズンでも街全体が大きく賑わうことは少なく、比較的静かな雰囲気のなかで、個人宅の前に掲げられた看板が「ここにはこの政党を応援する住民がいる」というメッセージとなり、選挙の季節を感じさせる象徴的な存在になっています。

(自由民主党への投票を呼びかける看板)

写真:2024年6月24日、イギリスElyにて撮影(大山彩子)

大山彩子
お茶の水女子大学大学院修士(社会科学)。学術博士=Ph.D(英国アングリアラスキン大学)