多文化共創フォーラム「多文化共創とメディアの役割」が2月23日、東京・新大久保のカイ日本語スクールで開催されましたので、その概要を報告します。

フォーラムは2部構成で、第1部は埼玉大の大茂矢由佳講師の基調講演「難民とメディア」、第2部は大茂矢講師に、多文化研副理事長の増田隆一・元朝日放送インターネット事業局長、同理事の藤巻秀樹・元日本経済新聞編集委員の2人を加えた「SNSの功罪とマスメディアの役割」をテーマにしたパネルディスカッションです。ドイツで同日行われた総選挙では、巧みなSNS戦略により反移民・難民を訴える極右政党が第2党に躍進、国際社会に霧が立ち込める中で、非常にタイムリーな企画となりました。
第1部の講演では世論調査に見る日本の難民受入意識の変遷、新聞の難民報道、SNSの難民ツィートのデータ分析の調査結果が次々に報告されました。最後に難民に関する新聞記事などメディアに接触したことが日本人の難民受入意識にどのように影響を与えたかの分析結果も明らかにされました。それによると、「メディアにおける難民の報道のされ方が難民に関するネガティブな世論を引き出した」という通説は必ずしも正しくないとの結果が得られたのことです。その理由として「難民とテロを結びつけるような報道が日本では少なかった」ことが挙げられるそうです。①日本に逃れた難民や日本の難民認定制度の報道は限定的②難民が国を離れた理由に対する関心が乏しい③本来の難民が置かれている状況の深刻さが分からない――などの点から、人々が難民問題に対し「冷めた目」を向けているのではないかとの分析が示されました。講演の後の質疑応答ではフロアから次々に手が上がり、活発な意見交換が行われました。





この後、休憩を挟み、パネルディスカッションが行われ、まず藤巻理事が昨年7月、英国で反移民感情をあおる誤情報がネットに流れたのをきっかけに大規模な暴動が発生したことや、埼玉県川口市でも偽情報によりクルド人を非難する投稿がSNSで拡散されたことなどを例に、SNSの危うさを問題提起。続いて増田副理事長が朝日放送で記者やインターネット事業に関わった経験を踏まえ、SNSの問題点やジャーナリズムの重要性を訴えました。





この日の会場は難民政策に長年携わった君塚宏・法務省出入国在留管理庁審議官、難民支援活動を展開するパスウェイズ・ジャパンの石井宏明理事(難民支援協会理事)のほか、朝日新聞など大手メディアの記者も参加し、満席状態。難民やメディアの問題に深い関心を持つ専門家から鋭い質問が飛び出し、活発な討議が続く中、あっという間に予定の3時間が過ぎました。
藤巻秀樹(多文化研理事)