(第6回) 日本留学生の就職②
正しい情報でサポートを
<『都政新報』2020年7月28日006面より・都政新報社>
https://www.toseishimpo.co.jp/denshiban
(大東文化大学スポーツ・健康科学部スポーツ科学科非常勤講師
マハルザン・ラビ)
ここ数年、来日するネパール人が急増している。法務省(2019年12月)の統計によると、19年6月末に日本に住んでいるネパール人は9万5050人。そのうち約30%(2万8268人)が留学生で、「技術・人文知識・国際業務」のステータスで日本の企業などで働いているのは12%(1万1148人)、家族滞在のステータスで住んでいるのは約29%(2万7792人)、そして技能のステータスで約13%(1万2639人)、残りの16%(1万5203人)が永住などのステータスで在住している。

一方、ネパール人が来日する理由は様々だが、主に▽自国で雇用機会が少なく生活が安定しない▽日本へ行ったら働ける▽将来が明るいという人が多い。特に留学生たちは大きい夢や希望を持って来日する。
留学生らのイメージでは、日本はアルバイト・仕事などが簡単にできる、お金が稼げる、就職ができる、豊かな国。しかし、日本に来たばかりの頃は言葉や文化の壁にぶつかって大変な思いをする人々が大勢いる。留学生の悩みはそれだけに限らない。彼らにとって卒業後の就職の問題はもっと大きい。「3月に卒業したが、就職が決まらず不安だ」。都内の専門学校を卒業後、就職が見つからず、不安な日々で悩むネパール人留学生マハルジャン・アニールさん(31)、来日から3年9カ月。地元の友人2人と6畳の部屋を共有し、就職先を一生懸命探しているが、実はネパールの大学を卒業している。「ネパールで大学を卒業しても仕事がないので、銀行から100万円借りて日本に留学することを決断しました」という彼。日本で働いて安定した生活を望んでいる。だが、まだ先は見えない状態だ。「卒業前に就職活動をしたかったが、成績が低く、日本語能力も足りなかったので自信がなかった」と語る。このままだと帰国する道しかないと思い、仲介や求人企業を使って一生懸命に就職先を探している。しかし、いつ就職の道にたどりつけるのか明らかになっていない。
ネパールの留学生たちは日本語学校を修了後、大学よりも専門学校に入学する傾向が多い。それは専門学校の学費が安い、卒業しやすいといううわさが広がっているからと考えられる。自分の判断よりも友人やネパール人コミュニティーの傾向に従って動く人が多い。「日本語学校を卒業後、大学に入学したかったが、大学の情報が得られなかったので専門学校に入学した」。現在、大阪在住のラビン・カルキさん(28)が語る。2011年に来日した彼は日本語学校を修了後、専門学校、そのあと大学に編入、またそのあと1年、日本の企業で働き、最後は大学院に入学した。去年、大学院を卒業し、大阪にある協同組合に所属し、ネパール人技能実習生の受け入れ作業を担当している。「就職をするかどうか悩んでいたところ、日本語学校に通っていた時のベトナム人の友人から声をかけられ、現在の仕事をしている」と言う。一方、通常通り就職活動をして就職する留学生もいるが、彼のように友人や知り合いから紹介があって就職するケースや、仲介を使って料金を払い就職するケースがたくさんある。
このように見るとネパール人留学生の就職までの道のりにはいくつかのパターンがあることが明らかになる。一部の学生を除いて具体的に見ると、①日本にいる多くのネパール人留学生は卒業後の計画がない②雇われる企業の水準に達する日本語能力が足りない③就職活動における基本的な知識が少ないなどだ。さらに、就職のため友人の紹介や仲介・求人企業を使用する人が多く見られる。そのため、コンビニエンスストアや飲食店、ホテル、不動産、派遣会社などに働くネパール人が増えている。
この問題に対し、▽就職に必要なスキルアップするプログラム▽相談センター▽日本語を学べるモチベーションと環境を作る必要がある。
特に今回、新型コロナの感染拡大の影響で就職が決まらない、内定があっても取り消されるケースが多く、先の道が見えないという留学生に正しい情報を与えてサポートする必要がある。
(大東文化大学スポーツ・健康科学部スポーツ科学科非常勤講師
マハルザン・ラビ)