(2023年6月9日21:11 産経新聞デジタル掲載=万城目正雄事務局長インタビュー)
https://www.sankei.com/article/20230609-XDPHXDTTAJNVJIJKDEHLURK2LM/
熟練外国人労働者として永住が可能な在留資格「特定技能2号」の受け入れ対象分野が、これまでの2分野から11分野に拡大されることが9日、閣議決定された。慢性的な人手不足に悩む経済界からの要請に応じた形だが、受け入れるのは単なる「労働力」ではなく、血の通った「人間」。専門家は「帯同家族へのサポートも含め、さまざまな対策の整備が急務だ」と指摘する。
特定技能には、在留期間が5年に限定されている「1号」と、熟練労働者として家族の帯同や永住が認められる「2号」がある。
1号から2号に移行するには、一定の試験に合格し、実務経験があることが条件。今回の拡大により、1号の資格で来日している外国人約15万人の相当数が今後、2号に移行していくとみられる。
1号の在留資格を持つ外国人の7割程度は、日本で働きながら技術を学ぶ「技能実習」の在留資格からの移行組が占めている。今後は、技能実習→特定技能1号→同2号の順で在留資格を変更するとともに、在留期間や認められる活動範囲が広がっていくルートが整備される見通しだ。
2号の最大の特徴は、在留期間に上限がない上、母国にいる配偶者や子供を日本に呼び寄せることができることだ。
外国人の受け入れに詳しい東海大の万城目(まんじょうめ)正雄教授は「特定技能2号で就労して得られる所得は高いとは限らず、母国からやってくる配偶者らの日本語能力も低いと見込まれる」と指摘。「2号の資格の外国人が急増した場合、地域からの孤立や格差などの社会問題が生じる可能性がある」と分析する。
その上で、こうした問題を防ぐためには、来日した家族と地元との関係づくり▽子供の学校教育▽配偶者の日本語教育-などを自治体が支援する体制の整備が重要だと提言する。
政府は9日、技能実習制度を発展的に解消して新制度を創設し、特定技能制度も見直すとした外国人受け入れに関する計画を策定。政府の有識者会議は秋にも両制度の見直しについて最終報告を出すとしている。
万城目教授は「現行の特定技能制度は、認定の前提となる技能を評価する仕組みが不十分。2号の外国人が本当に熟練した技能を持っていると保証できる評価・認定方法にすることが重要だ」としている。(荒船清太)