多読味読<96>【杉田昌平監修『高度外国人材 採用から活躍までの「定石」』ぎょうせい 2024年1月】

多読味読<96>【杉田昌平監修『高度外国人材 採用から活躍までの「定石」』ぎょうせい 2024年1月】

目次
第1章 高度外国人採用を取り巻く環境
第1 日本の人的資源が置かれている環境
第2 ダイバーシティ推進としての女性活躍と外国人材採用
第3 2040年の人材市場
第4 留学生を取り巻く状況

第2章 ビジネス環境と雇用システムの変化
第1 国際労働市場とは ―国境を越えて働くことの当たり前さ
第2 外国人の本音 ―実は日本で働くのもわりとあり
第3 日本型組織とは ―メンバーシップ型雇用の本質
第4 世界から見たメンバーシップ型雇用 ―メリット・デメリット

第3章 高度外国人採用で企業組織は何を得るのか?
第1 人手不足の解消は目的ではない
第2 異なる視点や創造性の具体例
第3 組織や社員の国際性とチャレンジ精神の醸成
第4 外国人に良い組織は日本人にも良い組織
第5 ネットワークの広がり(IIT卒業生はなぜ求められるのか?)
第6 採用が容易になる

第4章 外国人採用の始め方
第1 外国人の採用、日本人の採用
第2 在留資格制度
第3 在留資格に関する3つの手続
第4 外国人雇用における中核的リスク―不法就労
第5 外国人雇用における労働法のポイント
第6 外国人雇用の展望

第5章 再現性ある採用モデルに向けて
第1 ASIA to JAPANが進める高度外国人雇用の方法論
第2 ダイバーシティ組織サーベイと現在地の認識
第3 採用PDCAとチーム体制
第4 オンボーディング対策
第5 受け入れ研修(新人向け、部署向け)
第6 お試しとしてのインターンシップ

第6章 日本で働く外国人材へのアンケート調査結果
第1 外国人材の日本語力について
第2 日本企業へ就職前に外国人材が感じていること
第3 日本で働く外国人材が抱く不満・ストレス
第4 外国人材が日本企業に求める支援制度

第7章 高度外国人材採用のケーススタディ・三菱マヒンドラ農機株式会社・半田重工業株式会社・株式会社アイキューブドシステムズ・株式会社タチエス・株式会社ギブリー・日本特殊陶業株式会社・株式会社マネーフォワード

第8章 2040年に向けて

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多文化研メディア班 増田隆一

日本で働く外国人(帰化者を除く)は、この20年で指数関数的に増えている。
それはオイルショックに付随(国同士でビザが不要になった)して爆発的に増えたイラン人や、渡航制限の緩和で急に目立ち出した中国人観光客とは、まったく意味・意義が異なる様相といえる。
その中で、純粋に労働力としての外国籍保有者が、どのようなステータスと環境で滞在できているのか、さらには企業が彼らをどのような枠組みで雇用しているのか、研究し続けてきたのが、杉田昌平弁護士である。

杉田氏は、外国人雇用を検討している国内企業の法務アドバイザリーとして活動しているだけでなく、自ら東南アジア各国で送り出し側に法務を教授する立場も経験していて、いわば「国際労働移動におけるI/Oの両面を知り尽くしている」といっていい。
そのような知見の基盤があるからこそ、現行制度の要諦や注意点、受け入れ企業側の対応スタンスと業務手順などについて、肯綮に当たる解説が可能となっている。

一般的に、何かのシステムを機能させようとする場合、「作業」と「効果」が再現性をもって一対一対応することが確実な部分については、手順化が可能となる。つまり「マニュアル」さえあれば、誰でも同じ結果を得ることができる。この総称が「技術」といえる。誰がボタンを押しても、部屋の空気が冷えるのが「エアコン」であり、誰が動かしても、きれいに材料が混ざるのが「ミキサー」だ。これらは”技術の賜物”である。

これに対して、マニュアル化できない要素も、システムの中には存在する。行為者の「感覚」が涵養されていなければ、その都度の結果が異なってしまうものがある。柔道の技は、どの解説書にも、動作を分解したマニュアルが書いてあるが、誰もが乱取りでの「背負い投げ」を繰り出せるわけではない。組み手の一瞬で<身体がそれを感じ>て、<対応した動きが出て>こないと、崩しと捌きはシンクロしない。これは「センス=感覚」と呼ばれる。
身体運動での「センス」は、練習を繰り返して体得するものだが、事象対応での「感覚」は、事例分類と結果解析を多量に蓄積して、”大局観”を会得するほかない。

杉田氏の監修による本書は、実は「日本で働く外国人を雇用するための技術」と「円滑に運営するセンス」を、同時に獲得することが可能な、類まれな佳書といえる。
実務として<外国人を受け入れようとしている企業>も、<どのように日本に労働者を送ればよいか考えあぐねている国>も、<制度上の問題点をどう解決するか思案中の官僚>も、絶対に目を通しておくべき書物だろう。

著書歴を見ればわかるように、杉田氏は当該分野での政策方針や関係法令が改正または発布される都度、電光石火の早業で「対応する解説書」を著している。
折しも、2024年6月に「技能実習制度」が「育成就労法」の成立により、大きく様変わりした。
間違いない。
杉田昌平弁護士は、まなじりを決して「新・育成就労法の要点と対応」ガイドブックを執筆中に違いない。

新著が楽しみだ。

著者:杉田昌平
弁護士法人Global HR Strategy代表社員弁護士
多文化社会研究会理事