多読味読<92>:関口明子監修『ウクライナ語で日本と出会う あおぞら はじめて学ぶ日本語』

【多読味読<92>:関口明子監修『ウクライナ語で日本と出会う あおぞら はじめて学ぶ日本語』執筆:三田美佐子 武田由美 ユリア・ナウモア(キーウ国立言語大学准教授)公益社団法人 国際日本語普及協会 AJALT発行。2022年10月264ページ】

川村 千鶴子

多文化研のみなさま

今年のGWをいかがお過ごしになりましたか?

多文化研理事で、AJALT理事長の関口明子先生から「あおぞら」をご恵与いただいたときの感動は、一生忘れられないと思います。
ロシアとウクライナの戦争の激化に心を痛めていました。
ウクライナからの避難民をいかに受け入れていくかも大きな課題ですが、支援はこのように始まるというあたたかい真心がこもった一冊です。
本書は、単なるウクライナ語と日本語の会話集ではないことが伝わってきます。

川村千鶴子(多文化研理事長):ウクライナ語で日本語と日本の文化や習慣を学べるように編集されている点が素晴らしいです。ページをめくると各課の本文にキリル文字での発音表記とウクライナ語訳が掲載してあり感動しました。

関口明子理事:「丁寧なことば」と「友達ことば」の両方の話し方を早い段階から学べるように編集してあります。日本語入門のテキストなんですが、日本語を学ぶ前に日本について沢山の情報を伝えて、まずは日本を大好きになってもらいたいという気持ちがありました。

川村:具体的にはどんなことに配慮して、どのように工夫されましたか?

 関口:日本の文化、習慣、地理、歴史、食べ物、日本語の構造などがウクライナ語で紹介されています。 日本語を勉強するというより自室で寝ながらウクライナ語で読んでいただくところから始まります。

川村:ウクライナから避難された人びとが、日本に一歩足を踏み入れた時「日本ってどんなところ? どんな国なの?」という不安と疑問に応えようという気持ちですね。

 関口:その通りです。安心感、安堵感が伝わるように工夫しました。

 川村:私も大昔ですが、トンガからの留学生たちと一緒に「トンガ語と日本語の会話集」の編集をしたことがあります。編集は大変でしたが、幸せな雰囲気での会話集でした。
しかし、今回は、ロシアとウクライナの暗いニュースを連日連夜聞きながらですから緊張や危険を感じることもあったのではないでしょうか。

 関口:キーウ国立大学准教授のネイティヴチェックが実に大変でした。時々、ポーランドに避難しなければならなかったのです。

 川村:ロシアがウクライナを軍事侵攻したのが、2022年2月24日ですから夏には仕上げて、10月1日発行というのは、凄い早さです。
平和への強い祈りが、集中力を加速させたのですね。ありがとうございました。
いかに、平和への祈りを込めた「あおぞら」をご紹介いたします。

川村千鶴子 Chizuko Kawamura (PhD.)

Emeritas Prof. of Daito Bunka University