多読味読<62>: Mai Kaneko ” NATIONALITY OF ‘FOUNDLINGS’ “ 金児真依著『「父母がともに知れない」子の国籍』

【多読味読<62>: Mai Kaneko ” NATIONALITY OF ‘FOUNDLINGS’ “ 金児真依著『「父母がともに知れない」子の国籍』490頁英文】

多文化研、無国籍ネット、JARのみなさま

国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所で、首席法務アソシエイトとして活躍されている金児真依さんから製本された貴重な限定本のご著書をご恵与いただきました。
金児さんは、難民認定や難民の定住、無国籍の予防や無国籍者の保護等のため、日本政府をはじめ様々なアクターをサポートする業務に従事され、多文化研共創フォーラムにも参加されています。

オランダのマーストリヒト大学にてジェラール・ルネ・デフロート名誉教授(国際私法・国籍法)の指導のもとに、無国籍の防止について比較法・国際人権法の視点から博士論文を完成され、2020年1月の口頭試験の結果、博士号(法学)の学位を取得されました。

” NATIONALITY OF ‘FOUNDLINGS’”
Are your parents really ‘unknown’?Assessment of ‘foundlinghood’ under international law to avoid statelessness

6歳のお子様を育てながらどんなにか大変なことだったと思いますが、無国籍に関する科学的分析に尽力され、さらに実践に活かしておられることに心から敬意を表します。

共著に墓田桂・杉木明子編『難民・強制移動研究のフロンティア』(2014年、現代人文社)等があり、みなさまにはご存知の方が多いと思います。事実上あるいは法律上の無国籍の当事者や論者が多いので、いつか金児さんご自身が多文化フォーラムにご登壇いただけると伺っております。

◆金児さんは、学生時代、カルフォルニア大学デイビス校に交換留学され、「移民学」を学び、インド系移民2世のジェンダーやアイデンティティについてリサーチされました。2004年米国コロンビア大学にて修士号取得。レバノン(准第三国定住官)、パキスタン(法務官)等でも難民の第三国定住や国籍法のリサーチ等に従事されました。原語から翻訳を重ねてなんと193か国の国籍法におけるFoundling provision等の比較表(2019年1月時点)を掲載されています。EXECUTIVE SUMMARYにも書かれていますが、「FOUNDLING」という語は、条約の文言にも、領域内で発見された時について年齢制限が設けてあるわけではないことや、各国の法を比較しても、すべての未成年を含んでいる国が11か国はあったこと、必ずしも年齢を限定しない文言の国も多かったこと、子どもの権利条約7条など総合的に考え、一般的な「新生児・乳幼児」という解釈ではなく、18歳未満等の未成年の子どもで領域内で発見された父母が知れない子どもについてFOUNDLINGとするべきという結論を導きだされたようです。

課題の多い難民認定や難民の定住、無国籍の予防や無国籍者の保護等を考える上に重要な視点を指摘されており、ゆっくりとご講演される機会を楽しみにしております。

川村千鶴子(9月26日、今日は母の命日)