【多読味読<53>:明石純一著『人の国際移動は管理されうるのか ―移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築―』ミネルヴァ書房2020年3月】
明石純一さんの集大成です。ご出版、おめでとうございます!!!
明石純一著『人の国際移動は管理されうるのか―移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築―』ミネルヴァ書房

国家は越境を試みる人々をどう制御するのか――人の越境に関与する国々が置かれている立場や状況の多様性と、当事国間の流動的な関係性を捉えるための視点を提示する。
今日、世界における移民、および国内避難民を含む難民の数は歴史上最多に達している。これに伴い、人身取引、密入国、不法就労、移住労働者の搾取や人権侵害といった諸問題が深刻化している。
これらの解決には、多国間かつマルチステークホルダーの連携に基づくガバナンス構築が求められるが、国境管理や入国審査を専権事項としてきた国家はそれに抗っている。
本書は、人の国際移動をめぐる緊張関係を概念と事例の双方から論じる。
目次
はしがき
図表一覧
序 章 移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築
1 人の国際移動をめぐる国家と秩序
2 移民ガバナンスの追及
3 移民ガバナンスの解釈
4 アジアへの視点
5 人の国際移動は管理されうるのか
第Ⅰ部 秩序形成をめぐる国際的動向
第1章 移民政策の再編――国家・市場・市民社会
1 人の国際移動をめぐるトリレンマ
2 国家の「復員」と人の国際移動をめぐる秩序
3 移民政策の再編にみる規制強化の動向
4 国際労働移動を律する国際ルールの不在
5 模索されるグローバルガバナンス
6 国境を越える人の移動と非国家アクター
7 活性化する人の国際移動と顕在化する国境
第2章 人の国際移動に対する政策的管理――実効性と限界
1 人の国際移動に対する政策的管理への関心
2 管理が及ぶ範囲と対象
3 政策の実効性とその諸条件
4 日本の事例の考察
5 政策の効果とその評価の困難
第3章 高度人材の国際的誘致――制度と環境
1 人材獲得への関心の高まりとその背景
2 「人材」の定義と属性についての難題
3 人材誘致のアプローチ
4 多国間の取組みと国内的制約
5 人材誘致をめぐる葛藤
第Ⅱ部 アジア諸国・地域の情勢分析
第4章 アジアの「先進」事例――シンガポール
1 外国人労働者受入れの歴史と概況
2 外国人労働者受入れの制度と環境
3 市民社会の働きかけ
4 シンガポールの固有性と普遍性
第5章 人材誘致政策とそのジレンマ――シンガポール
1 シンガポールの人材誘致政策
2 人材誘致政策の背景と効果
3 人材誘致に課される制約
4 シンガポールの先駆的経験――模倣できるロールモデルか?
第6章 外交資源としての外国人労働者――台湾
1 外国人労働者をめぐる外交
2 国際労働力移動に関する分析視角
3 導入・拡大期――1980年代後半から1990年代前半まで
4 抑制・調整期――1990年代後半以降
5 外交資源としての外国人労働者
6 台湾の事例の特殊性と一般的含意
第7章 東アジア後発事例――台湾・韓国・日本
1 活発化する越境労働と政策の異同
2 外国人労働者受入れの背景と政策の規定要因
3 国際環境上の制約と外交戦略への転用――台湾
4 政策転換の唯一例――韓国
5 「気乗りしないホスト」――日本
6 なにが政策に多様性をもたらすのか
第8章 国際労働力移動における送出国――インド
1 国際労働力移動をめぐるガバナンス
2 インドからの移住労働とその制度的枠組み
3 ケララ州の事例が示すもの
4 ガバナンスの条件の再検討
第9章 ITワーカーの越境――インド・アメリカ・日本
1 インド人ITワーカーの越境とその背景
2 ヒーローとクーリー
3 「頭脳流出」から「頭脳還流」へ
4 インド人ITワーカーの選好と選択肢
5 インド人のビジネスネットワーク
6 アメリカを中心とする先進国の受入れスタンス
7 外国人高度人材に目を向け始めた日本
8 インド人ITワーカーの歴史的位置づけ
参考文献
初出一覧
あとがき
索引
著者略歴 :明石 純一(akashi junichi)2020年3月現在 筑波大学人文社会系准教授