【多読味読<45>:万城目正雄「特集:現場の新たな戦力へ!外国人材活用成功マニュアル」『工場管理』Factory Management 2019年11月号。日刊工業新聞社】

みなさんは『工場管理』という月刊誌を読まれたことがありますか?
日本を支える製造業の現場のリアリティを知る優れた雑誌です。
外国人材をどのように育て、職場の仲間として受け入れていくべきか。
その難問をいかに具体的に分かりやすく解説するか、教務委員長でいつもご多忙の万城目先生が長時間かけて取り組んでこられました。
『工場管理11月号』拝読いたしました。ありがとうございます。
外国人材を初めて受け入れるケースを想定し、法令上のルールの理解から、受入れ準備、現場での育成、生活支援に至るまでの留意点を詳述されました。万城目先生の分析と解説が、25頁に亘って掲載されています。出入国管理とは何か。29項目の在留資格制度を理解し、国籍別、産業別・事業所規模別の統計資料を読み解きました。技能実習制度と特定技能制度を理解し、経営面での受入れ体制を現実に整えていく道程には、おそらく想定外のご苦労も多々あろうかと思います。
特に適正な労働条件の確保と送り出し機関の役割や、とも働くための現場マニュアルの作成や安全教育やコミュニケーション教育と交流イベントの開催、住宅・医療・行政手続きの一連の支援を読んでいると、フー!「ダイバーシティ・マネジメント」と気安く気楽には言えなくなります。
多大なエネルギーと共創コストを未来への投資と肯定的に捉え、零細中小企業の経営者のみなさまが
「よし、うちもやってみようじゃないか」という意欲的な希望を持つためには、どうしたらいいでしょうか。
本書にあったそれぞれの国の理解とどん底から這い上がったグッドプラクティスのライフストーリーが勇気づけになっています。いやいや家業を継いだ社長さんが、NPO法人難民支援協会との連携でミャンマー難民、シリアなど中東諸国をはじめとして
さまざまな国の人を採用していった実話も満載されています。
多文化研の事務局長として、いろいろなプロジェクトに取り組んでおられる万城目先生は、現在、東海大学教養学部人間環境学科の准教授ですが、国際研修協力機構(JITCO)に約20年も勤務されました。その間、技能実習生を受け入れた全国の中小企業を一万社以上も訪問されてこられました。
きっとトラブルも成功例あったと思います。
外国人材を雇用する中小企業の現場や農家の実態を目の当たりにし、多文化社会研究とは、「日本社会を映し出す鏡!!」という共感も湧きました。
インドネシア、フィリピン、ベトナムなどアセアン諸国との送出国政府との実務者協議にも多数参加され、技能実習機構・産業人材育成機構の検討委員会委員をなさっています。
外国人材との共創協働、中小企業の海外展開など国際機関や経済団体企業からの講演依頼でお忙しい中、外国人集住都市会議の基礎となるアンケート調査の分析作業など地味な仕事も大好きな感じです。
職人気質というのかしら。
さて、↓ここを開けると表紙と触りの文章を読むことができます。
http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000904
東海大学 万城目正雄
東海大学 万城目正雄
【事例編1】イノベーションにつなげるため戦略的に外国人を雇用
栄鋳造所
【事例編2】社員の7割が外国人!8カ国42人の多国籍企業の現場マネジメント
赤原製作所
【事例編3】ベトナム人材採用・活用ノウハウを外国人材紹介ビジネスへ発展
柴田合成
【事例編4】ミャンマー人を正社員として採用 国籍問わず平等にチャンスを与える
大阪銘板
【事例編5】女性外国人労働者が多数活躍する開発型自動車部品メーカー
備前発条
「国際貢献」などという気負った言葉は使わず、辛い製造業、さんちゃん農業、ビルクリーニング、建設業、介護などの仕事を通して、技能実習・特定技能に活躍する方々とホントの信頼関係が築けたら、若者たちは「かけはし」となり、幸福の連鎖が夢ではなくなります。中小企業の弛まぬ努力に光をあててみると技能実習制度は、廃止すべきではなく、改善に改善を重ねて、協力の輪を広げ、日本の産業と持続可能な社会を構築する基礎となっていくと私は感じております。
『工場管理11月号』は、人を雇用することの責任の重さと次世代の工場構築への道を拓く知恵を、「現場の実践」から伝える新しいアクティブ・ラーニングと言えるのではないでしょうか。
川村千鶴子