多読味読<40>:明石純一「2018年入管法改正ーその政策的含意についてー」特集「移民社会」をどう捉えるか 『三田評論』

【多読味読<40>:明石純一「2018年入管法改正ーその政策的含意についてー」
特集●「移民社会」をどう捉えるか 『三田評論』2019年7月号 慶應義塾大学出版会443円】

明石純一さま 多文化研のみなさま
CC:木内鉄也様(慶應義塾大学出版会)

特集「移民社会をどうとらえるか」、これまでの30年を振り返りながら、玉稿、興味深く拝読いたしました。
明石さんの論考は以下の3つから分析しておられます。
・歴史的転換なのかー否定的見解
・歴史的転換なのかー肯定的見解
・政治的含意―入管法改正の「副産物」?

改正入管法の目玉である「特定技能」の1号の導入は、付随する制度的な副産物を生み出したのではないか、とする明石さんのご意見に同感です。就労が続く限り在留期間に限りがなく、家族の呼び寄せや定住が認められる「特定技能」の二号の併設、そしてまずは211億円の予算が計上されて、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が取りまとめられました。
実は、先週、浜松市国際課、大泉町、太田市、静岡県の職員研修会でテーマ「外国人の高齢化」の講演の最後に逆に私の方から、自治体職員の方々に今回の改正をどのように感じられているかを質問しました。
外国人集住都市会議への意欲がある一方、戸惑いがあることも話してくださいました。
「特定技能」一号に対する「支援」の義務付けに関して企業経営者の戸惑いがあると思いますが、「雇用とはともに働くこと=自己実現への道」という原点にたち、雇用・就労・キャリアそして、生きる喜び=幸福を再確認できる機会でもありますね。
私は、ライフサイクル論の中で「ともに働く」ことが人間発達の源であり、自立→自己実現への道が開かれるように、職場における「安心の居場所」の“共創”こそが今度の鍵を握ると考えております。

日本には270万人をこえる在留外国人が生活しているという現実だけでなく、3世、4世、5世の時代を迎え、“外国にルーツをもつ高齢者”の実態を長期的に調査してきました。
90年代からの在留日系人の人口ピラミッドを万城目正雄さんが作成してくださったのですが、10年後の
高齢化は明らかで、「移民社会化」の焦点が見えてきますね。国際結婚、帰化者の増加、外国育ちの日本人などの日本人の多様化をもっともっと明晰化する必要があると考えています。

多様化する日本の現実に向き合う特集号として本書の座談会も面白かったです。座談会「移民社会化から
考えるこれからの日本」では塩原良和さんの司会も素晴らしいと思いました。
以下は、目次からご紹介します。
・毛受敏浩:公益財団法人日本国際交流センター執行理事・塾員
・施 光恒:九州大学大学院比較社会文化研究院准教授・塾員
・松元雅和:日本大学法学部准教授・塾員
・望月優大:ライター、「ニッポン複雑紀行」編集長・塾員
・塩原良和 慶應義塾大学法学部教授(司会)
■二〇一八年入管法改正──その政策的含意について
明石純一 筑波大学人文社会系准教授
■新元号の年を移民社会で迎えよう
坂中英徳 一般社団法人移民政策研究所所長・塾員
■移民社会フランスの新たな挑戦
森 千香子 一橋大学大学院社会学研究科准教授
■「川崎」にある、多文化共生の姿──若者たちは何を夢見るのか   磯部 涼 ライター
▽KEIO Reportなどでした。
図書館旧館改修工事の終了 渡辺浩史
留学生向け就職支援の試み 小尾晋之介/森澤珠里
も興味深く拝読いたしました。

御礼まで

川村千鶴子