【多読味読<39>:山上博信「一隅を照らす教育制度に思いをはせて」『多文化社会の教育課題―学びの多様性と学習権の保障 Educational Challenges in a Multicultural Society: Diversity and the Right to Learn 』明石書店2014年3月312頁】
多文化研のみなさま
ハンセン病患者と家族への“隔離の壁”“偏見や差別の壁”をどう取り払えばいいのでしょう?ご意見をお寄せくださいませ。
山上博信さんは、六甲山に囲まれた神戸に生まれ育ちました。
関西学院大学大学院法学研究科博士課程、大学講師(刑事法)、行政書士でもあり、国境地域研究センター、名古屋こども専門学校専任講師です。山上さんとは、日本島嶼学会理事会でも国立民族学博物館共同研究でもいつもご一緒で、数年前ご一緒に沖縄を旅することができました。奄美、小笠原、沖縄など国境線が動いて日本社会になった地域とパラオや樺太、台湾、韓国など国境線が去って外国となった地域のくらし、生存権保障と法整備のあり方を研究されてきました。
「一隅を照らす教育制度に思いをはせて」というタイトルで本書『多文化社会の教育課題』で、ハンセン病患者、神戸水上生活者、被差別部落の学習権について鋭い貴重な論考を寄稿してくださったのは2013年秋でした。
「日本政府の誤った政策により、療養所にいた子どもたちの心身に取り返しのつかない影響を与えてきた」歴史を詳述し、差別と偏見に耐えながら生きる子どもたちと家族についてです。
山上さんが撮影掲載した5枚の写真と論考の迫力をご高覧くださいませ。
沖縄本島の国立療養所内の学校の写真(109頁)、沖縄愛楽園に1951年設立された琉球政府立澄井初等中等学校の記念碑の写真(110頁)を見るとジーンときます。(遅くとも1960年には、医学的見地からハンセン病が隔離政策を必要とする疾患ではなくっていた。)
4.ハンセン病と教育
・ハンセン病患者たちと教育の機会の著しい制限
・療養所内の学校
・地域住民の差別
再読してみました。

■基礎教育機会確保法が成立したのは、本書が刊行されて2年後の2016年でした。ぜひ、再読してみてください。
共著者の先生方は、郭潔蓉、金朋央、長邊成章、原友章、長谷部美佳、小林普子、ガルディ(内モンゴル出身)、渡辺幸倫、角谷敦史、三浦純子先生の多文化研の皆様です。
■次回多文化研は、7月27日聖心女子大学です。
会場案内は、以下のURLをクリックしてください。
■【多読味読】はみなさまから直接MLにご寄稿いただけます。
ぜひ良書をご紹介くださいませ。
川村千鶴子