多読味読<37>:移住連(特定非営利活動法人・移住者と連帯する全国ネットワーク)『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』

【多読味読<37>:移住連(特定非営利活動法人・移住者と連帯する全国ネットワーク)『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』明石書店2019年6月1日発行 347頁 2500円】

多文化研のみなさま
金朋央(特定非営利活動法人コリアNGOセンター)さま
ほか、移住連の関係者のみなさま

注文してすぐに届いたこの相談ハンドブックは、ずっしり重たいですね。ロビーでぱっと開いた真ん中から読み始めました。

 事例9:収容中に体調を壊した被仮放免者の医療
 事例⒑:生活保護世帯の大学・専門学校への進学
 事例⒒:在留資格のない児童の児童手当

本書は、347頁ありますが、たったこの10頁だけでも、ウ―ン、深く考えさせられました。かつて牛久の収容所で、彼らの生の声を綴った日々を思い出しました。

■権利侵害に直面し、問題解決に取り組んでこられた移住連のみなさまの現場から生まれた叡智が、本書にはびっしりと詰まっています。長年の活動の成果だけでなく、関係法令や資料が、掲載されていて親切です。

■善意の医療クリニックは、医療通訳を自ら養成し雇用し、頑張れば頑張るほどに問題を抱え込んでしまう実態もあります。それは拙編著『いのちには国境がない。-多文化共創の実践者たち』にも紹介しました。

■『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』の目次等の基本情報は以下のURLに表記してあります。
https://www.akashi.co.jp/book/b456766.html
出版社から目次・内容紹介・特徴などをまとめたワードデータをいただいたので、添付しておきます。

●前回の多文化研で配布した「多文化研30周年記念誌」の54頁、阿部治子さんの「外国人の社会保障と身元保証」も併せてご高覧いただけると幸いです。次回の7月27日にも受付で、30周年記念誌を配布いたします。

■移住連の素晴らしい本書を拝読し、学びながら、「共創の知恵」が湧いてきます。新しい改正入管法は、国が内発的ビジョンを
もってはじめて生かされるのではないでしょうか。

拙いご紹介で、失礼いたします。
川村千鶴子

http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/general/life_cycle.html
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766423938/
https://tabunkaken.com/

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川村先生 多文化研の皆様

藤原書店から別冊環の移民問題特集号が出版されました。移民や移民2世などの生の声が伝わってきます。多文化研ゆかりの方も数多く執筆しています。書店で手にとっていただければ幸いです。

別冊『環』24「開かれた移民社会へ」
定価=本体2800円+税 菊大判並製 312頁
ISBN 978-4-86578-221-9
2019年4月25日配本
http://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865782219.html(←藤原書店サイト)

「開かれた移民社会へ」表紙

■2019年4月、入管法改定。今ここにある「移民社会」に日本が正面から向き合うために。

外国人「労働者」の受け入れに大きく舵を切ったとして注目を集める、今次の入管法改定。しかし日本社会はすでに、多様なルーツをもつ「人」が共に暮らす「移民社会」でもある。労働、国籍、市民権、社会保障、教育、言語など、単なる「労働力」「人材」ではなく、「人」として生きるなかで不可避の論点について、制度と現場に関わる論考を揃え、さらに、大きく立ち遅れる「難民」受け入れの展望も論じた、真の「多文化共生」への必携の論集!
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編=宮島喬・藤巻秀樹・石原進・鈴木江理子

■目次■

序 (編者)

●座談会 開かれた移民社会へ
石原進+鈴木江理子+棚原恵子+藤巻秀樹+宮島喬(コーディネーター)

Ⅰ 外国人労働者受け入れ
宮島喬 「外国人労働者のフロントドアからの受入れを」
鈴木江理子 「移民/外国人受入れをめぐる自治体のジレンマ【移民/外国人は人口危機の救世主となりうるか?】」
旗手明 「技能実習制度からみた改定入管法【ローテーション政策の行方】」
定松文 「家事労働者の受入れの問題点【国際的な比較の視点から】」
安里和晃 「特定技能制度を見据えた送り出し国の動き」
藤本伸樹 「介護労働者の受け入れの課題」
山口智之 「移住労働者の定住化にともなう外国人労働組合活動の変化」

Ⅱ 周回遅れの「移民国」
藤巻秀樹 「第三の開国を問う【選ばれる「移民国家」への道】」
近藤敦 「外国人にシティズンシップを開く【参政権・公務就任権・複数国籍を中心とした諸外国との比較】」
高谷 幸 「日本に暮らす移民の社会保障とセーフティネット」
佐々木てる 「日本人にはなれない、日本人であり続けることができない【重国籍を認めない日本】」
小ヶ谷千穂 「呼び寄せられる子どもたち【「外国につながる子ども」をめぐる課題から、「家族再統合」を考える】」
宮島喬 「移民と家族呼び寄せ」

Ⅲ 「移民」たちの現在
●座談会 日本につながった私たちの今――十代、二十代を駆け抜けて
温又柔+高部心成+谷川ハウ+宮ヶ迫ナンシー理沙  司会=矢崎理恵

リリアン テルミ ハタノ 「ブラジル【在日ブラジル人コミュニティの三〇周年を迎えて】」
田中雅子 「ネパール【定住化を支える在日ネパール人組織】」
斉藤善久 「ベトナム【外国人技能実習生の保護の充実を求める】」
原めぐみ 「フィリピン【「生活者」としての問題にどう取り組むか】」
人見泰弘 「ビルマ(ミャンマー)【民政移管と変容するコミュニティ】」
石川朝子 「中国・台湾【在日外国人で最大のグループの現在】」
山本かほり 「在日朝鮮人【朝鮮学校をめぐる「闘争の歴史」から】」

Ⅳ 日本語教育と母語継承
石原進 「「共生」のカギ握る日本語教育【言葉がつなぐ人と社会】」
川上郁雄 「移民の子どもへの言語教育とは【日本語教育のあり方を問う】」
宮島喬 「移民への言語教育を重視するヨーロッパ」
カルダー淑子 「新時代海外移住者の日本語継承【日本語教育推進法案に対する署名運動から】」

Ⅴ 教育
竹ノ下弘久 「移民第二世代をめぐる教育機会の不平等【下降移動や貧困リスクとその可能性】」
小島祥美 「「不就学」をいかに解消するか【外国人の子どもと学校教育】」
稲葉奈々子・樋口直人 「移民第二世代の大学進学」
山野上麻衣 「ブラジル人の子どもの学習支援を通してみえてきたこと」
丸山由紀 「外国人の子どもと在留資格」

Ⅵ 難民にどう向き合うか
関聡介 「日本の難民認定制度をめぐる近時の動向と課題」
石川美絵子 「庇護を求めて、今、日本に生きる人々」
滝澤三郎 「転機を迎えた難民第三国定住事業」

Ⅶ 「多文化共生」への課題
土井佳彦 「多文化共生マネージャーが果たす役割」
山田貴夫 「地方自治体の外国人施策の現在【改正入管法の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を手がかりに】」
坂本久海子 「これからの多文化共生【雇用する企業の責任とは】
北海道教育大学 藤巻秀樹