【多読味読<36>:申明直(シン・ミョンジク:신명직)編著『東アジア市民社会を志向する韓国』風響社 2019年3月20日302頁】
「他人事」ではない、これは日本の「現在」「明日」でもある。
急激に民主化と高度成長を成し遂げた韓国は、同時に200万を超える移民の住む多文化社会にも急変した。
本書の著者たちは、競争と格差、非正規就労や高齢化の波に直面する庶民の問題を移民たちの問題と同根とみなし、さまざまな活動を行ってきた。貴重な実践レポートの先に見えるものは・・・・

申明直(シン・ミョンジク:신명직)先生
ご高著、感謝申し上げます。先生方ならではの表題とブックカバーの斬新な写真と帯に込められた主体性ある気迫に勇気づけられました。
鶴首してお待ちしたご高書をぱっと初めて扉を開いた頁がたまたま20頁でした。
なんと小見出しが「多文化を生きるー新大久保からの挑戦」
李承珉(スンミン)先生の2015年慶應義塾大学での講演内容が掲載されていました。
『2050年、日本は全体が「今の新大久保のように」なっていくだろう。』が飛び込んできました(笑)。かつて私はスンミン先生の写真をいっぱい撮りました。
以下の写真が一番好きです。風邪をひいておられるのではなく、毎月、火曜日の早朝にホウキとゴミ袋をもって新大久保周辺をニコニコと掃除しておられるお姿です。ヘイトスピーチが激しかったころも掃除を欠かさず。
新大久保映画祭のシンポジウムに、登壇させていただき韓国との連携と地域の歴史を語らせていただきました。
その節はありがとうございました。申先生のように、単に学者として座学に生きるのではなく、NPO法人東アジア共生文化センター代表であり、映画祭やフェアトレード活動などを主催し、幅広い実践活動を主体的に継続されて次世代を勇気づけている生き方を尊敬しています。それが本当の学問だと思います。
「東アジア市民社会」という言葉は、申先生と本書の著者が発したとき、説得力がありますね。お嬢さまの申恵媛(シン・ヒェウォン)さんが翻訳者として参加していることも信頼性が高まります。
よろしくお伝えくださいませ。明日、30周年記念誌と拙書をお送りいたします。
多文化研のみなさま、どうぞ読んでみてください!!
『東アジア市民社会を志向する韓国』(風響社、2019.3.20)を拝読して、申先生に感想をお送りくださいませ。
前回3月の「多文化共創フォーラム」には熊本からご光来賜り、ご意見を拝聴させていただきました。
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序論 東アジア市民社会への道
――「東洋平和論」の実践として
第1章 安山テッコル村と高麗人移住労働
第2章 華僑華人の変貌と「東アジア市民」の形成
第3章 韓国の移住労働者政策とシティズンシップの変容
第4章 韓国のネパールコミュニティと帰還後の活動
第5章 ベトナム人母娘3代の結婚と韓国
第6章 「地球人の停留場」と農業移住労働者
――農業、とくに女性労働者を中心に
第7章 公正貿易(フェアトレード)と公正貿易タウン(Fairtrade Town)運動
――なぜアジアでなぜネットワークなのか?
第8章 ロシア沿海州の高麗人と社会的企業 バリの夢
――東北アジアコリアンとともに東アジア協同経済ネットワークを構築する社会的企業バリの夢
第9章 韓国の社会的経済運動とアジア市民社会
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[序論]野村伸一(のむら しんいち)慶應義塾大学名誉教授。
[第1章]金勝力(キム・スンニョク:김승력)㈳高麗人支援センター「ノモ(超えて)」の代表
[第2章]申明直(シン・ミョンジク:신명직)熊本学園大学教授、
NPO法人東アジア共生文化センター代表
[第3章]盧恩明(ノ・ウンミョン:노은명)熊本学園大学非常勤講師、
NPO法人東アジア共生文化センター理事
[第4章]李蘭珠(イ・ランジュ:이란주)「アジア人権文化連帯」代表
[第5章]許吳英淑(ホオ・ヨンスク:허오영숙)「韓国移住女性人権センター」の代表、
江陵原州大学多文化学科兼任教授
[第6章]金二瓚(キムイチャン:김이찬)安山の移住労働者シェルター「地球人の停留場」代表
[第7章]李康伯(イ・ガンベク:이강백)「韓国公正貿易団体協議会」常務理事、
「アジア公正貿易ネットワーク」代表
[第8章]金鉉東(キム・ヒョンドン:김현동)社会的企業㈱バリの夢(바리의꿈)代表、
東海協同社会経済ネットワーク代表
[第9章]李栄煥(イ・ヨンファン:이영환)聖公会大学の教授、
聖公会大学社会的企業研究センター所長
あとがき(申明直)
索引
