多読味読<11>:南誠著『中国帰国者をめぐる包摂と排除の歴史社会学 -境界文化の生成とそのポリティクス』

【多読味読<11>:南誠著『中国帰国者をめぐる包摂と排除の歴史社会学 -境界文化の生成とそのポリティクス』明石書店2016年2月25日278頁】

南誠様(中国名:梁雪江 LIANG XueJiang)様

長崎滞在中は、大変お世話になりました。
私の心は、いまもなお長崎を旅しております。昨日9日11時2分は新宿区役所全館、平和への祈りを込めて黙祷を捧げました。
午後と夜は中国帰国者の方がたに日本語を教えておられる方との会合がありました。
中国残留婦人のお孫さんにあたる当事者としての南さんが京都大学で博士の学位を取得し、長崎大学多文化社会学部の准教授としてご活躍のこと。
みんぱくでの共同研究員としての出会いが本当に嬉しく、ご高著をいままた有難く拝読しております。

多文化研の皆様には、梁雪江博士のご著書の目次を以下にご紹介いたします。
歴史社会学を学ぶ指標となり、戦後73年、いまだに戦後が終わっていないことを感じております。巻末「中国帰国者に関する年表」をもとにいつか梁雪江さんにご講演を賜る機会があったらと願っております。

川村千鶴子
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序章 「中国帰国者」の境界文化 一 「中国帰国者」の問い
二 「中国帰国者」の先行研究
三 本研究の分析視角と枠組み

第一部 歴史編
第一章 国民の包摂と引揚 一 国民の送出と包摂
二 引揚と「再祖国化」
三 包摂の余剰
四 国民の包摂と外交

第二章 不完全な国民統合 一 法的処理と国籍問題
二 「残余カテゴリー」の排除
三 法的主体の抹消
四 忘却と記憶のあいだ
五 法の例外状態

第三章 もう一つの包摂物語 一 実態の把握
二 日本人政策の模索
三 国籍と社会統合
四 剝き出しの生

第二部 表象/実践編
第四章 忘却と想起の痕跡 一 「日中友好手をつなぐ会」の活動
二 肉親捜し・帰国促進運動と日本社会
三 民間団体の主張
四 残留と棄民の系譜
五 親密圏から公共圏へ

第五章 支配的物語の生成 一 記憶・表象するメディア
二 錯綜する記憶・表象
三 記憶・表象の政治学
四 「中国残留日本人」は語られたか

第六章 境界の集合的構築 一 「中国帰国者」の「再」包摂
二 国家賠償訴訟運動と社会的構築
三 集合的表象
四 沈黙の語り

第七章 境界文化の政治学 一 命名のポリティクス
二 呼びかけられる行為体
三 境界文化の政治
四 境界文化の諸相

終章 生成的な境界文化 一 「中国帰国者」の歴史/社会的構築
二 「よき国民」と社会的排除
三 今後の課題
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