多様性を競争優位の源泉に

(第27回) ダイバーシティ・マネジメント

多様性を競争優位の源泉に

<『都政新報』2020年10月20日008面より・都政新報社>
https://www.toseishimpo.co.jp/denshiban

(東京未来大学モチベーション行動科学部教授 郭潔蓉)

2019年は日本社会にとって新たな外国人人材に門戸を開いた「ダイバーシティー元年」と言える。14業種における「特定技能」という新たな枠組みを作り、単純労働者層でも高度人材でもないセグメントの外国人労働者を受け入れるのは、日本の労働市場において初めてのことである。

その背景には、日本社会が抱える深刻な少子高齢化問題と18年ごろから顕在化しはじめた人手不足倒産がある。特に建設業、道路貨物運送業、外食産業や小売業では、人手不足が年々深刻化しており、従業員の離職や採用難から事業遂行不能となり、倒産に追い込まれるケースが散見されている。つまり、日本社会における労働市場は徐々に縮小しており、慢性的な人材不足に陥っているのである。

こうした事態を打開するため、特定技能の枠組みによる外国人労働者の受け入れに関する法案が19年4月より施行されたが、初年において同資格で雇用された外国人は全国で520人、最も多い割合を占めたのは飲食料品製造業の24%である。次いで、農業の23%、産業機械製造業の19%が上位を占めている。地域別分布をみると、愛知の8・7%を筆頭に北海道と岐阜の同率6・7%が続き、群馬6・3%と沖縄6・0%がベスト5となる(外国人雇用状況、厚生労働省、19年10月末現在)。初年の統計は7カ月間の数字となるが、まずまずの出足と言えるのではないだろうか。

外国人雇用の実態
(「外国人雇用状況」2008~2019年〈毎年10月末現在〉厚生労働省)を参照して筆者作成

特定技能の枠組みができたことも後押しとなってはいるが、それにも増して日本における外国人の雇用は近年増加の一途をたどっている。19年10月末現在の外国人労働者数は165万8804人で、前年同期比で13・6%増加している。一方、雇用する事業所数は24万2608カ所と前年同期比12・1%の増加となっている。いずれも07年に「外国人雇用状況」の届け出が義務化されて以降、過去最高の数字を更新している。また、08年時点では派遣や請負による雇用が33・6%もあったのに対し、19年では21・0%にまで減少し、直接雇用を行う企業が増えてきていることが分かる。08年と19年の数字を比較してみると、日本の労働現場における多文化化は、わずか10年に3倍の勢いで進んでいることが分かる。しかし、企業の現場は果たしてこの多文化化の速度に追いついているのだろうか。

「ダイバーシティ・マネジメント」という言葉から連想されるキーワードを様々な人に問いかけてみると、多くはジェンダーフリーや女性の活躍の推進という答えが返ってくる。もちろん、この二つの要素とも大事ではあるが、残念なことに「多様性」に関する回答を聞く機会はあまりない。

ダイバーシティーという言葉の本来の意味は「多様性」を意味し、「ダイバーシティ・マネジメント」とは「多様性」を競争優位の源泉にしようというマネジメントのアプローチである。今日のように多文化化が深化している労働現場では、多文化経営を意識した「多様性」の活用が非常に大切になってくる。しかし、多くは「多様性」をどのようにすれば競争優位の源泉となるか、十分な受け入れ態勢を構築する前に雇用してしまうケースが多い。それゆえ、外国人人材をうまく活用できないというジレンマに陥りやすい。

では、どうすれば良いのか。そんな時、利他主義的なエッセンスを少し取り入れて物事を捉えることを意識してはどうだろうか。一見、博愛主義的に感じられるが、多文化社会においては相手を思いやることは最終的に自己を思いやることにつながるからである。今回のコロナ禍において、私たちはいかに利己主義的な考え方が他人を害し、ひいては自分自身をも危険にさらしてしまうことを学んだのではないだろうか。つまり、他人にウイルスをうつさないようにする努力は、最終的には自分にもウイルスを近づけないことにつながるということである。

「ダイバーシティ・マネジメント」においては、少し利他主義的に外国人人材をどうすれば生かせるかといった視点で、企業文化や制度、組織の改革を行えば、それがやがて企業の競争優位の源泉となるということである。せっかく新たな外国人人材に門戸を開いたのであれば、ぜひ彼らを日本社会の戦力として育てることを願ってやまない。

(東京未来大学モチベーション行動科学部教授 郭潔蓉)