【多味多読<69><69>マハルザン・ラビ「在住ネパール人のコロナ禍の影響による新たな課題と取り組み」『国際人流』2021年1月号】
万城目正雄
(東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程准教授・多文化研事務局長)
多文化社会研究会が2020年4月から12回シリーズで担当している公益財団法人入管協会『国際人流』の連載企画「人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」」の第10回目の論考を紹介します。

今回は、マハルザン・ラビ先生が担当された「在住ネパール人のコロナ禍の影響による新たな課題と取り組み」です。在住ネパール人の視点からコロナ禍の影響・課題が論じられています。
ラビ先生の論考は、「在住ネパール人の現状」、「コロナ禍でのネパール人コミュニティの取り組みと日本の政府・自治体・地方団体の対応」、「コロナ禍で出てきた新たな課題」の3つの項目から構成されています。
「在住ネパール人の現状」では、急増した日本在住ネパール人の背景と現状が説明されています。2019年末の在住ネパール人は96,824人。国別でみると中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルに続いて第6位。家族滞在、留学生の在留資格を有する方の占める割合が高いことなど、急増する在住ネパール人について、データに基づき解説されています。興味深い点は、ネパール人急増の背景が「日本は他の欧米先進国よりもビザが取りやすい、と捉えられているうえ、アルバイトや就職が可能という意見が多い」と説明されていることです。そして、実際に来日された方々の現状についての説明が続いています。多額の借金を支払って来日する留学生の現状、調理師として、「技能」の在留資格を得て就労するネパール人の厳しい就労環境、週28時間までに限定されている留学生や家族滞在で滞在する方々の現状など、日本に在住するネパール人が抱える現状と課題が説明されています。こうした状況を踏まえ、ラビ先生は、日本語が話せない在住ネパール人の方々への支援の必要性を指摘しています。
次に、「コロナ禍でのネパール人コミュニティの取り組みと日本の政府・自治体・地方団体の対応」が解説されています。多民族国家であるネパールの方々のコミュニティを通じた支援、日本政府、自治体などが発信したネパール語で情報について、具体例をあげて説明されています。その上で、ラビ先生は、「現在の自治体や政府が外国人コミュニティの存在と彼らの活動に関心を持ち、多言語での情報提供に力を入れていることといえるだろう」とその取り組みを評価しています。同時に、「情報発信だけでは在住外国人の悩みやニーズに対応できるかを深く考える必要がある」という問題も提起されています。
そして、最後に「コロナ禍で出てきた新たな課題」の中で、①法的な悩みについて相談できる窓口、②多言語での情報提供、③医療機関での通訳の3点の課題を指摘し、必要な支援とは何かについて、とりまとめています。
急増するネパール人がコロナ禍で抱える問題や支援を検討する際に参考となる貴重な論考です。是非、ご一読いただきたいと思います。
万城目正雄
(東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程准教授・多文化研事務局長)