多味多読<61>:万城目正雄「民間活力による アジア諸国の産業人材の育成に向けた取組」『国際人流』

【多味多読<61>:万城目正雄「民間活力による アジア諸国の産業人材の育成に向けた取組」『国際人流』2020年9月号】

多文化研の皆様

晩夏を思わせる日々の中、いかがお過ごしでしょうか。会員の伊藤です。

 さて本日は、公益財団法人入管協会が出版している『国際人流』誌上で、当会メンバーが担当している連載「人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」」の中から、事務局長の万城目正雄先生(東海大学)が執筆された最新号の記事についてご紹介いたします。

「国際人流」2020年9月号

———–以下、紹介————-

 連載第6回の本記事では、60年以上にわたり経済発展を担う産業人材の育成を実践してきたAOTS(一 般財団法人海外産業人材育成協会)の取組が検討されている。具体的には、国と企業を繋ぐという意味において「中間組織(団体)」ないしは「橋渡し機関」といい得るであろうAOTSが実施する、①「技術研修」・「管理研修」と②「専門家派遣」を取り上げ、それがどのように「共創社会」に貢献しているかが考察されている。

 ①「技術研修」・「管理研修」は、海外人材が日本に来て受講する形式の研修で、前者が海外の日系企業等で働く技術者、後者が海外の現地経営者や管理職を対象としている。研修はAOTS研修センターで行われる日本語・日本文化等の一般研修、企業や生産現場で行われる実務研修から構成されている。この研修の特徴は、生産・品質管理を体系的に学べることや企業の先進・優良事例を実地で学べることにあることが記事から分かる。一方の②「専門家派遣」は、日本企業の技術者等の専門家をAOTSの専門家として現地に派遣し指導を行うものである。②に特徴的なのは「多くの従業員を対象とすることができ、現地で直接技術指導」できることであるという。そして①、②のいずれもが「国庫補助事業」として行われており、AOTS事業を活用することは経費の面からも企業にメリットがある。

 そして共創・協働の観点から、過去60年にわたり40万人に上る元研修生による「同窓会」組織の重要性が取り上げられており、44の国と地域において73カ所に「同窓会」が組織されているという。しかしこれら同窓会は単に旧交を温めるというものではない。同窓会組織は、日本と当国の友好・親善に寄与するものであることに加え、「パートナーシップ」に基づく協働によって、例えば「人材確保」といった面でwin-winの関係を生み出すものであることが記事を読むと分かる。具体的な活動内容は記事に譲ることとするが、日本企業の進出があまり進んでいないアフリカ地域にも同窓会があることが指摘されている(紹介者としてはトルコにも同窓会があることが気になった)。

 本記事は、ある種の「中間組織(団体)」を介した国際的な人材育成やパートナーシップの構築に関心がある向きにはうってつけであろう。是非、一読願いたい。

—————-終わり—————-

伊藤 寛了