外国人住民の役割を見つける

(第18回) まちづくり②

外国人住民の役割を見つける

<『都政新報』2020年9月15日006面より・都政新報社>
https://www.toseishimpo.co.jp/denshiban

(日本外国人ネットワーク代表 崔英善)

「私は日本に住ませてもらっている感じがぬぐえないの。日本側に私たちを守ってもらうように強く要求することにためらいがあるの」と言う私の発言に、ある外国人の集まりに参加していた数人の外国人が反発した。「住むところがないからここにいるわけではない。税金を払っているし」。

その時の私は来日して2〜3年を迎えていた。国際交流協会でのスタッフの傍ら外国人につながる子どもの支援など様々な活動を精力的に行っていたが、何を根拠として日本側に権利を主張できるかということに悩んでいたのだ。「国」は自国民を守るというものであれば、日本国籍ではない外国人を守る義務はない。よく耳にするこの考えに反論ができなかったのだ。

多文化共生をテーマとした寸劇を地域の子どもに披露

その後、2011年に新宿区新宿自治創造研究所で研究員として、新宿区内の外国人実態調査を行うために様々な外国人にヒアリングを行った。その時に出会った日本人の配偶者を持つ多くのアジアの女性は、年の離れた依存症・無職等の配偶者の面倒をみていたのだ。ある見方をすれば、普通の日本人の女性なら選択しないと思われる人々だった。その時、私の脳裏には外国人は「日本に住まわせてもらう」のではなく、むしろ「貢献」しているのでは?という思いがあった。

一方、コリアンタウンへの観光客増加による騒音、ゴミなどを巡る問題で、行政と日本人住民の立場はもちろん、韓国人である私は韓国人住民の気持ちも手にとるようにわかった。そのため、多文化のまちづくりが一筋縄ではいかないことを実感できたし、その課題解決のカギは何かを常に考えるようになった。

新宿での経験はその後、首都圏にある某自治体の職員として、「外国人市民会議」のコーディネーターを引き受けた際、活動の仕組みづくりに生かされる。

今では多くの自治体に設置されている「外国人市民会議」の最も重要な役割は、 外国人住民に必要な社会システムを外国人代表に選ばれた委員が審議後、首長に提言することと言える。

しかし、このやり方に疑問を抱いていたのだ。実際にこの提言が施策として実現されることは数少ないためだ。その根本にある原因をこう考えた。元来の設置背景はどうであっても、提言とはつまり要求することで、片方の一方的な行為は、その向こうにある日本人住民の理解を得にくいし、予算も付きにくいのではないか? そうであれば、インタラクティブな、つまり日本人住民も外国人住民も力を合わせ、素敵なまちづくりに参加できる仕組みづくりが必要不可欠だと。

私はまず、外国人市民会議の活動内容を二つに定めた。一つ目は今までの「提言」活動だ。新しく付け加えた二つ目は、まちづくりの中に外国人の役割を見つけ、行動することを目的とする「アクション」活動だ。それを役所と外国人市民会議の委員の承認を得て、本格的に2014年から始動した。このアクション活動は毎年1〜2回、外国人市民会議単独で、あるいは日本人住民と一緒に行う。

19年度は東京2020大会を見据え、外国人市民会議の委員による「世界のあいさつやマナー、予想されるソリューションの解決へのヒント」などを内容とし、「都市ボランティア」を対象に行った。ロシア語、スペイン語など8言語の文化を紹介し、100人を超える人が参加し、好評を得た。また、地域の農家を訪れ、観光資源としての外国人目線でのアドバイスをまとめた年も、多文化共生をテーマとした寸劇を地域の子どもに披露した年もある。

今の私は、一般にいう「外国人」を「国籍」ではなく、「住民」という概念として捉えていて、それこそが多文化のまちづくりのキーワードだと思っている。

(日本外国人ネットワーク代表 崔英善)

ちぇ・よんそん=韓国にて記者、TVディレクターを経て2000年に来日。慶応大院修士課程修了。新宿自治創造研究所研究員を経て現在、首都圏某市の非常勤職員(多文化共生推進専門職)を務める。