外国人介護士との協働の道のり

(第11回) 介護人材

外国人介護士との協働の道のり

<『都政新報』2020年8月18日006面より・都政新報社>
https://www.toseishimpo.co.jp/denshiban

(NPO法人AHPネットワークス執行理事 二文字屋修)

5年後には国民の4人に1人が75歳以上という超高齢社会になり、介護の担い手不足がますます逼迫している。その解決策の一助として外国から介護人材を受け入れようと、最近は受け入れオプションが整ってきた。2008年から始まった経済連携協定(EPA)は昨年度までに5千人が来日し、800カ所近くの施設で雇用され、現在も3千人以上が活躍している。他に定住者、日本人の配偶者等、留学生のアルバイト、介護技能実習生や新たな在留資格の「介護」などを合わせると3万4千人余りが医療・福祉の分野で働いているが(厚生労働省19年10月末)、外国人労働者総数166万人からみれば少数派である。その数を一気に押し上げるため昨年4月からスタートした特定技能の介護職は5年間で最大6万人を見込んでいる。

介護というと高齢者施設を思い浮かべるが、実は医療機関でも看護補助者不足が深刻になっており、医療界からの声も反映された数字なのだろうと思う。しかしケアワーカー不足は日本に限らず先進諸国共通の課題である。そのため東南アジアの高齢化社会到来にはまだ余裕のある国々での人材争奪戦が繰り広げられている。では、人材獲得のポイントは何だろう。ベトナムで尋ねてみると、給与、やりがい、そして暮らしやすさ等という答えが返ってくるのだが、そこには日本人の職業選択の観点と変わらないことがわかる。

厚生労働省社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会は、「2025年に向けた介護人材の確保〜量と質の好循環の確立に向けて〜」を発表した(15年2月25日)。介護人材の在り方を「現行の『まんじゅう型』から『富士山型』への構造転換を図る」とし、新たな人材配置を示したものである。国家資格の介護福祉士を専門集団として地位を確保し、高齢者介護の裾野を広く支える層を配置する。いわく「女性や中高年齢者層(中略)若者、障害者等、さらには他業界からの参入を進めていくことが重要である」と焦点を定め、地域包括ケアシステム構築を図ろうというもの。

ところが、ここに外国人介護士の存在は描かれていない。この委員会報告が出される前年6月24日には、入管法を改正して外国人介護士の新設や技能実習に介護を加えるなど「日本再興戦略」が閣議決定されていたのだが。しかし驚くにはあたらない。従来から医療や福祉は日本人が担うべきという考えと、外国人材導入を促進しようという二つの線が交わることなく進んできた分野なのである。

89年の入管法改正に深く関わった坂中英徳氏から、「法案策定時に『医療・社会福祉』としたかったのだが『福祉』は削除された」と聞いたことがある。この時の改正で新設された在留資格「医療」でさえ医師が6年、看護師が4年という在留期限付きだったことからすれば、いわんや福祉においてをや。国家資格の介護福祉士は87年に認定されたところであった。

その後、97年2月に入国管理局内の研究会が「老人介護に従事する外国人の受入れについて」をまとめた。そこには総合的受け入れ機関の設置、介護従事者の質・量の確保、処遇の在り方、受け入れの公共性確保、出入国管理法制の見直し、更には国内外に1年課程外国人介護士養成施設の設置等、最近の政策に通じる予見的提案が描かれていた。

新型コロナウイルスの終息が予測できない今、経済は下降線をたどっている。今後の外国人人材受け入れもその影響は免れないが、介護は増加していくと思われる。それは08年のリーマンショックで多くの失業者が出たが、介護職にふさわしい人材流入は少なかった。人手不足を国内で補うことはとても難しい。しかし期待されている「特定技能」は「技能実習」や「技術・人文知識・国際業務」との違いが分かりづらく、送り出し国の関係機関を消極的にしている。特定技能には学歴条件がなく技能実習に近いのだが、就労の在留資格として実務経験は問わず「技人国」と同列にある。特定技能の英語名「Specified Skilled Worker」に適した介護人材の育成と受け入れの流れを創る民間活動が重要になってくる。

(NPO法人AHPネットワークス執行理事 二文字屋修)