第178回多文化共創フォーラム「海外からの外国人労働者の受入れと多文化共創社会」ニューズレター

多文化社会研究会の皆様

来る2023年5月13日(土)14:00~16:30に「海外からの外国人労働者の受入れと多文化共創社会」(於:学習院大学・南2号館)と題した研究会を開催いたします。
詳しくは下記もしくは添付のファイルをご覧ください。
ぜひ皆様お誘いあわせの上ご参加ください。

渡辺幸倫

多文化共創フォーラムのご案内

<海外からの外国人労働者の受入れと
          多文化共創社会>

未だに終わりの見えない侵攻が続くウクライナ情勢、そして欧州をめざす移民や難民が増加しています。支援に関しても異論・反論が飛び交う中でいかにして人権を守るのかが論議されています。G7広島サミットを直前に控え、日本における海外からの外国人の受け入れ政策と多文化共創社会の構築を話合いましょう。

日時:2023年5月13日(土)14:00~16:30
会場:学習院大学・南2号館 200教室

https://www.univ.gakushuin.ac.jp/campusmap.html

(東京都豊島区目白1丁目5−1(JR目白駅から30秒)

参加人数:会場200名、オンライン同時開催

■参加のお申込み(会場、ZOOMともに)https://forms.gle/tKmfQbhQdVEDoHkX6 

◆フォーラムの趣旨:広島で開催されるG7サミットを目前に控え、日本の多文化共創社会の流れと社会統合政策に関するビジョンを語り合います。

【プログラム】(※敬称略)

司会:藤巻秀樹(元北海道教育大学教授。元日本経済新聞社編集委員。多文化社会研究会理事)

14:00~14:15 開会の挨拶:増田隆一(元朝日放送メディア戦略部長、
多文化社会研究会副理事長)

14:15~14:20 講師紹介:野崎与志子(学習院大学教授、多文化社会研究会会員)

14:20~15:10 講演1

演題:「日本における外国人労働者の地位を考える」

講師:永吉希久子(東京大学社会科学研究所准教授)

外国人労働者は少子高齢化を迎えた日本社会にとって、欠かせない存在となっています。日本の外国人労働者の労働市場における地位には、どのような特徴があり、それは日本社会の諸制度とどのようにかかわっているのか。本フォーラムでは、様々な統計データから得られた知見を示しつつ、参加者の皆様と考えたいと思います。

<講師紹介>

東京大学社会科学研究所准教授。2010年大阪大学人間科学研究科博士後期課程 修了(博士:人間科学)。東北大学文学研究科准教授などを経て現職。移民に対する態度や移民の社会統合の状況についての計量的な研究を専門としている。著書・編著書に『移民と日本社会』(中公新書)、『日本の移民統合』(明石書店)など。

15:10~15:15 <<<休憩>>>

15:15~16:05 講演2

演題:「外国人の受入れ・共生社会づくりのこれから~民意と政策決定の観点から~」

講師:佐々木聖子(アジア福祉教育財団理事。出入国在留管理庁初代長官。難民事業本部RHQ支援センター理事。多文化社会研究会)

日本社会における外国人のプレゼンスが増大している今日、外国人が日本人と対等な社会の構成員として活動・生活する社会のあり方が、今なお模索され続けています。これまでの受入れ政策と共生政策の変遷を振り返るとともに、今後の日本社会における外国人との共生・共創のあり方を描くために、民意の成熟とその政策への反映はどのようにあるべきかについて、多文化研ご参加の皆様と一緒に考えたいと思います。

<講師紹介>
東京大学文学部美術史学専攻卒業。1985年法務省入省。1988〜90年外国人労働者問題をテーマにアジア各国でフィールドワーク。その報告として『アジアから吹く風-外国人労働者のふるさとは』(朝日新聞社)。2019年4月出入国在留管理庁創設、初代長官就任。2022年8月退任。

16:05~16:25 質疑応答&ディスカッション

モデレーター:藤巻秀樹(元北海道教育大学教授。元日本経済新聞社編集委員。多文化社会研究会理事)

●指定質問者: 染谷伊蓉子 (学習院大学国際社会科学部4年)

16:25~16:30 閉会挨拶 川村千鶴子(多文化社会研究会理事長)

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共催:多文化社会研究会 https://tabunkaken.com/
学習院大学国際社会科学学会 https://www.univ.gakushuin.ac.jp/iss/about/society.html
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第177回多文化共創フォーラム<日本における難民政策の変遷と今後の展開>ご報告

第177回多文化共創フォーラム開催のご報告
〈日本における難民政策の変遷と今後の展開〉

2023年3月11日、浅春の陽光に活気溢れる東京のエスニックタウン新大久保のカイ日本語スクールにて、第177回多文化共創フォーラムを開催しました。久々の対面開催で、満員御礼の中、オンラインも交えたハイブリッド形式により、難民政策を軸に、多文化共創社会を見据えた活発な議論が交わされましたのでご報告します。会員の皆様の日頃の活動のご参考として頂ければ幸いです。

●はじめに
はじめに川村理事長から、地域に暮らす難民の方々との長期の交流体験を語る挨拶がありました。地域の客体ではなく、責任ある実質的市民であり「共生」から「共創」社会を実現している事を話されました。引き続いて、東京大学・土田助教から、我が国の難民政策の戦中戦後からの変遷からみる政策形成過程について、新たな見解も含めた意欲的な御講演をいただきました。

●基調講演
講演では、これまでの難民研究が法学的立場に偏り、難民として分類された人々の処遇に重きを置いていることから、政治的な意思決定過程や庇護希望者の分析、長期的な視点が必要であることが指摘され、戦後の米国政府の占領政策、朝鮮戦争、韓国軍事クーデター、ボートピープル受入れ、難民条約加入、瀋陽総領事館事件といった歴史的契機において、日本政府がどのように意思決定してきたのか、法務省、外務省、警察庁、日本社会党、日弁連、国際機関、NGO・NPO等のアクターの動静を国会答弁資料や報道等から丁寧に分析を重ねた過程が説明されました。

そして、結果的に、日本の政治的姿勢でよく問われる政府への諸外国の「外圧」の影響について、実は、外交問題や難民の人権保護を求めるアクターの影響は受けつつも、出入国管理における主権を保ち、国益を損なわないよう、事前に政策を再検討し、小出しにすることで、急激な方針転換によって日本社会に影響が及ばないよう、戦略的かつ能動的に意思決定してきたこと明らかにしました。とはいいつつ、庇護忌避者や難民申請の濫用・誤用問題、入管施設での処遇など、人権的な取組みも含めた適切な対応が喫緊の課題となるなか、日本の難民保護の政策形成過程の問題点は何で、今後どうあるべきか、共に考えて行くべきことが提起されました。

●コメント・討論
フォーラムでは、この問題提起を受け、コメンテーターによるコメントが続き、佐々木元入管庁長官が、まずは、外国人も含めて、国民がこの問題をどう考えているのか知ることが重要だと率直に述べられました。政策とは政治化した問題について、その土台に国民の意識があるものであり、国家の安全保障、人間の安全保障、社会秩序がバッティングする場合、その総意をまとめること、そして政策的に社会全体の気運、うねりとしていくことは常に課題であるとし、難民、共生、共創を含め、日本社会のあり方について、さらに議論されていくことに期待を寄せられました。そのためにも、国民の政治化した意思、その向こうにある国民の意識の変化をどう捉えていくのか問題認識を示されました。

難民政策に1990年代半ばから関わる児玉弁護士からは、実践的に難民問題、法改正に関わってきた経緯を振り返り、メディアを賑わした判決により、入管の対応の変化が見られ、法改正に反映されたこともあったが、2019年の特定技能の法改正については、本来は日本を二分する法案であったはずなのに、国会においても審議なく社会においても議論にならず通った印象であり、どのような形で進めていくのがよいのかとの課題が投げかけられました。

ミャンマーから来日し30年、日本語及びミャンマー語教育等、多岐に活躍されるマリップ・セン・ブ氏からは、まず、日本国民自身が自分の国のこととして自分で考えていかなければ、他国と比べ大変なことになる、と、これまで日本国民とどう幸せに暮らしていけるのかを真摯に考え抜いて来られたからこその思いをご発言頂きました。高齢化対応や企業活動が外国人なしでは成り行かない事実に、日本国民、政治家、社会がいまだ準備できていないこと、若い人の意識が低いことにも懸念を示され、日本人は外国人のことをもっと学ぶべきであり、互いに理解を深めて生きていくことの大切さについて、共有されました。

討論では、参加者からのコメント、質疑応答も交えて、国民の意識の汲み取りに関して、移民・難民問題が選挙の争点になりにくく政治化されにくい課題、そもそも興味のない人にどう関心をもってもらうか、それらに影響を及ぼすメディアへの期待などについて熱心に議論されました。

最後に、佐々木氏から、本来、国民が期待するところと、役所が譲らないところは、そんなにかけ離れていないものであり、だからこそ、皆さんが本当にどう思っているのかを浮かび上がらせるのが大事であり、メディアには、そこを期待したいこと、ただし、ここで肝要なのは、ファクトと問題点、問いの立て方を正確にすることであるとのコメントを頂きました。例えば、「移民の受入れが必要であるか」の「移民」「受入れ」の定義を明確にすることで、全く関心の無い方々にも、外国人の役割がどういうところにあるのか議論しやすくなる、ということです。正解が分からないからこそ議論は蓄積されていくべき、といった佐々木氏の総括的・発展的なコメントで討論がまとめられました。

●おわりに
東日本大震災から12年目となるこの日、フォーラムでは、黙祷を捧げるひとときを持ち、思いを繋ぐとともに、年月の経過とともに、教訓をどう語り継ぐか、我々自身が考え行動していくことに改めて身が引き締まる思いでした。
筑波大学・明石教授による、論点を的確に踏まえた御配慮溢れる進行のもと、東海大学・万城目教授による盛会を感謝する閉会挨拶をもって、フォーラムを終了いたしました。

多文化共生・共創に自治体職員として関わってきた自身の立場からも、地域社会や民間団体・企業といった担い手の裾野の広がりには、常に課題を感じてきただけに、民意を政策・施策に反映していくヒントをいただき、気持ちを新たにいたしました。
研究者、実践者の双方に示唆にとむ議論であり、長文となり大変失礼いたしました。
最後に、当日、お忙しい中、ご協力・ご参加いただきました皆様、感想をいただいた皆様に感謝申し上げます。多文化社会研究会では、今後も、多文化「共創」に向けて議論を深めて参ります。

またのフォーラムでお会いしましょう。

多文化社会研究会
企画担当理事 藤波香織(埼玉県庁)

■フォーラム概要■
日時:2023年3月11日(土)13:15~16:30
会場提供協力:カイ日本語スクール(代表:山本弘子理事)
当日参加者:対面28名 Zoom24名(計52名)

司会・モデレーター:明石純一(筑波大学大学院教授、多文化社会研究会副理事長)

開会の挨拶:川村千鶴子(大東文化大学名誉教授、多文化社会研究会理事長)

基調講演:土田千愛(東京大学特任助教、多文化社会研究会理事)
「日本における難民政策の変遷と今後の展開」

コメンテーター:
佐々木聖子(出入国在留管理庁初代長官、多文化社会研究会会員)
児玉晃一(弁護士、マイルストーン総合法律事務所)
マリップ・セン・プ(NPO法人PEACE理事長、多文化社会研究会会員)
閉会挨拶:万城目正雄(東海大学教授、多文化社会研究会専務理事兼事務局長)
写真撮影:増田隆一(多文化社会研究会副理事長)、ダニエーレ・レスタ(多文化社会研究会理事)

『多文化社会研究会ニューズレター177号』

多文化社会研究会の皆様

 大寒の候、いよいよ寒さも本番となり、春の訪れが待ち遠しい日々が続きますが、皆さまにおかれましては、お健やかにお過ごしのことと存じます。

 多文化社会研究会では、春寒ゆるむ来る3月11日(土)に第177回多文化共創フォーラムを開催いたしますので、ご案内申し上げます。

 人道的かつ秩序ある国際的な人の移動は、緊迫する世界情勢にあって喫緊の課題であり、ここ日本においても共生社会への歩みのなかで、外国人住民、避難民、難民の人権問題にこれまで以上に関心が集まっております。今国会では、収監、送還ルールの見直しを含めた入管法改正案が審議されるというタイミングにあって、この度の研究会は、難民政策、入管制度に最新先鋭の知見をお持ちの先生方による講義、ディスカッションの機会となりますので、会員の皆様におかれましては、ぜひご参加頂きますようよろしくお願いいたします。

 〈研究会概要〉

●日時:2023年3月11日(土) 14:15~16:30

*冒頭、14:00から、正会員による総会を開催いたします。10分から15分を予定しております。

●会場:カイ日本語スクール2F(JR新大久保駅徒歩5分)

学校所在地 – カイ日本語スクール (kaij.jp)

住所: 〒169-0072 東京都新宿区大久保1-15-18 みゆきビル2F

(その他の最寄駅JR総武線 大久保北口より徒歩8−9分、都営大江戸線 東新宿駅B1出口より徒歩8分)

●参加人数:会場23名(先着順)*Zoom配信もいたします。

※会場(対面)での参加は、定員が限られていることから、応募多数の場合は、正会員を優先させていただきます。

●お申込み

①会場での参加をご希望の場合は以下のURLからお申し込みください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScPqJSO8H3v8jtFnU4WQr8_he0rPF2aQhae8gXfqpdaJjUkbw/viewform?usp=sf_link

 ※お申込みは、ご本人様1回限りでお願いいたします。また、会場の都合上、23名に達した時点でお申込みを締め切らせていただきますので、あらかじめご了承願います。

②Zoom参加をご希望の場合は以下のURLからお申し込みください。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfJlh0IrZ-ihhTehrAOhq_ZCu9KYpQkKXyfFMBsql835vL4zg/viewform?usp=sf_link

 ●プログラム(※敬称略)

司会:明石純一(筑波大学大学院教授、多文化社会研究会副理事長)

14:15~14:25 開会の挨拶:川村千鶴子(大東文化大学名誉教授、多文化社会研究会理事長)

14:25~15:05 基調講演「日本における難民政策の変遷と今後の展開」

ウクライナ避難民の受け入れ、アフガニスタンからの退避者の難民認定、トルコ国籍クルド人の初の難民認定など、昨今、日本の難民政策は大きな転換期にあります。日本は、これまでどのように庇護希望者の出入国管理を検討し、政策を形成してきたのでしょうか。本フォーラムでは、庇護希望者に対する出入国管理政策を中心に、これまでの難民政策の形成過程を振り返り、今後の難民保護の在り方を検討します。

 講演者:土田千愛(東京大学特任助教、多文化社会研究会理事)

<プロフィール>
現在、東京大学大学院総合文化研究科(地域未来社会連携研究機構 三重サテライト)特任助教。2022年7月、東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻「人間の安全保障」プログラム博士課程修了。博士号(「国際貢献」)取得。2020年4月~2022年7月まで日本学術振興会特別研究員(DC2)。主に、日本の難民政策、多文化共生に関する研究に従事。

15:05~16:05 討論

モデレーター:明石純一(筑波大学大学院教授、多文化社会研究会副理事長)

コメンテーター:

佐々木聖子(出入国在留管理庁初代長官、多文化社会研究会会員)

児玉晃一(弁護士、マイルストーン総合法律事務所)

マリップ・セン・ブ(NPO法人PEACE理事長、多文化社会研究会会員)


16:05~16:25 質疑応答とディスカッション

16:25~16:30 閉会挨拶:万城目正雄(東海大学教授、多文化社会研究会専務理事)

●当日の連絡先

企画担当理事 藤波

カイ日本語スクール代表 山本先生

開催までまだお日にちもございますので、入管法改正について、ご意見などありましたら、ぜひML上で活発に意見交換いただいてもと存じます。

以上、どうぞよろしくお願い申し上げます。 

多文化社会研究会
理事 藤波香織

『多文化研23年1月の研究会のお知らせ』

多文化社会研究会
2023年1月の研究会のお知らせ

多文化社会研究会の皆さま

新年1月8日には対面による研究会を行います。お正月シーズンでもありますので、当日は、藤田ラウンドさんの『んきゃーんじゅくカルタ』宮古語・日本語・英語の三言語での宮古島の48の諺をカルタにしたものも紹介いたします。「消滅危機言語」の宮古語を授業で紹介したり、宮古島の先人の知恵もなかなかユニークなものです。学校で紹介するなど、学習素材にしていただけましたら、幸いです。
これは、現在、ひつじ書房やアマゾンでも販売しています。

https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1182-3.htm

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<映像で残す日本国内の消滅危機言語:宮古島の映像から「未来」を考える>

藤田ラウンドさん(横浜市立大学客員研究員)が10年にわたるフィールドワークの成果として制作をしたドキュメンタリー映画(2019年完成、48分)と地域映像アルバム三つ(2022年完成、合計39分)をみながら、宮古島の消滅危機言語、ひいては日本の近代化の今後について、宮古島の地域の人たちの声を聞きながら、考えてみませんか。

ドキュメンタリー映画『みゃーくふつの未来:消えゆく声、生まれる声』

地域映像アルバム『久松アルバム』、『池間島アルバム』、『佐良浜アルバム』
制作:藤田ラウンド幸世
監督:服部かつゆき(映像アーティスト)
謝辞:JSPS科研費15K2659/18K00695

日時:2023年1月8日(日) 3時から5時
場所:相模女子大学(小田急線相模大野駅から徒歩15分)
喫茶棟1階English Room https://www.sagami-wu.ac.jp/campuslife/institution/ (14の建物)
会場の関係で入場制限がございますので、以下のフォームから登録をお願いします。

15:00  挨拶
15:10  『みゃーくふつの未来:消えゆく声、生まれる声』上映
15:50  休憩(10分)
16:00  『久松アルバム』、『池間島アルバム』、『佐良浜アルバム』上映
16:40  制作者と会場とのディスカッション・対話
17:00  終了

<<参加申し込みフォーム>>

https://forms.gle/JKKddxSLsTxPDtNu8?

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映像制作者・研究者プロフィール:
藤田ラウンド幸世(教育学博士)

現在、横浜市立大学、客員研究員
2012年から沖縄県宮古島市でまだ話されている消滅危機言語の宮古語と日本語のバイリンガリズムをフィールドワークの研究手法で研究している。科学研究費3期分の研究成果として、沖縄県宮古島市のことば、宮古語(みゃーくふつ)の話者について、宮古島市の100人の方々に出演いただき、映像エスノグラフィーとして記録した。この映画は、藤田ラウンドの参加が条件で無料で上映している。映像は全て、映像アーティストの服部かつゆきさんとの協働で制作を行なっている。

また、映像のアーカイブとしてYoutubeページ(https://www.youtube.com/@livemultilinguallyproject1057/videos)上で地域映像アルバムから短いクリップまでを公開している。映像で現在の宮古島の現状を伝え、次世代に手渡す作業を志している。

詳しくは「多言語で生きよう:コミュニティ、学校、家庭でのバイリンガル教育」

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第175回多文化共創フォーラム開催のご報告

第175回多文化共創フォーラム開催のご報告:

<ソーシャルワークのフロントラインから外国につながる人々への支援を考える>

 

 2022年12月18日に、第175回多文化共創フォーラムを開催いたしました。本フォーラムでは、「日本で生活する外国人・外国にルーツをもつ人々へのソーシャルワーク」をテーマに、多文化社会研究会理事 明石留美子が「社会福祉・ソーシャルワークによる支援」について概説し、社会福祉法人日本国際社会事業団の常務理事である石川美絵子氏が貴重報告「難民移民支援とソーシャルワーク」を行いました。

 

 社会福祉という枠組みにおいて、社会福祉の課題と社会資源を結びつけることがソーシャルワークです。社会福祉、ソーシャルワークは社会科学であり、エビデンスや理論に基づいて人々の強みを発掘しエンパワーしていくことで彼らのウェルビーイングを高めていきます。

 

 社会福祉士である石川氏は、外国につながる人々への支援では特有の視点が必要であることを強調されました。日本の社会福祉制度は日本国民を対象としているため、外国人が受けられる支援は在留資格によって異なること、外国人との間には想定を超えた違いがあることなど、支援のフロントラインにいらっしゃる石川氏だからこその知見を共有くださいました。最後にウクライナ避難民について、日本では自治体や企業などの申し出により受け入れが進んだ一方で、社会福祉の関わりはなかったと言及されています。移住すると多くの場合は地位が下がる、最も大きな皺寄せを受けるのは子どもたちという言葉は胸に突き刺さります。

 

 質疑応答では、ソーシャルワーカーはどこに居て何をする人なのかとのご質問がありました。社会福祉、ソーシャルワークではあらゆる人々の生活課題やウェルビーイングに取り組みますが、「社会福祉=介護、障害者支援」というのが一般のイメージだと思います。社会福祉のリアルを発信していくことも、ソーシャルワーカーのミッションだとを認識するたいへん有意義なフォーラムでした。

 

 ご参加いただきました皆さま、ご発言いただきました皆さま、そして運営にご協力いただきました皆さまに心から感謝申し上げます。

 

文責:明石留美子

 

第175回多文化共創フォーラムのお知らせ

 

第175回<多文化共創フォーラム>
「日本で生活する外国人・外国にルーツをもつ人々へのソーシャルワーク」 のご案内

2022年12月18日(日) 午前10:30 – 12:00 オンライン(Zoom)開催

 社会福祉と言うと、障がい、高齢者、児童虐待などの問題、そしてソーシャルワーカーはそうした問題に取り組む人とイメージされるのではないでしょうか。確かにこうした課題は社会福祉の重要な領域としてソーシャルワーカー達が取り組んでいますが、社会福祉、ソーシャルワークの対象領域はより幅広く、人々の生活課題全般に関わり、人々のエンパワメント、自己実現、ウェルビーイングの向上を目指します。
 本フォーラムでは、日本国際社会事業団から石川美絵子氏をお招きし、難民や移民に対するソーシャルワークについての実践を伺い、彼らが抱える課題にどうアプローチすべきかを皆さまと考える研究会となれば幸いです。
 師走となりご多忙のことと思いますが、ぜひご参会いただきますようお願い申し上げます。参加をご希望の方は、以下のIDのミーティングルームにご登録ください。

ID: 821 6284 3215

<プログラム> 12月18日(土)午前10:30 – 12:00 オンライン
10:30 開会の辞
10:40 「社会福祉・ソーシャルワークによる支援とは」
    明治学院大学 教授 Ph.D. 明石留美子
10:55 講演 「難民移民支援とソーシャルワーク」
社会福祉法人 日本国際社会事業団 常務理事 石川美絵子
11:40  Q&A
11:55 閉会の辞

<プレゼンター>
明石留美子

Ph.D. (社会福祉学) ニューヨーク州修士号レベル・ソーシャルワーカー免許(MLSW)取得
上智大学外国語学部比較文化学科卒業。早稲田大学政治学研究科博士課程前期修了(政治学修士号)。コロンビア大学大学院スクール・オブ・ソーシャルワーク(Master of Science, Master of Philosophy, Ph.D.)
UNICEF モンロビア(リベリア)、UNICEF 西・中央アフリカ地域事務所(コートジボワール)、国際協力機構(フィリピン・日本)、世界銀行東京事務所に勤務。
関連分野の主な研究:「アウトバウンドとインバウンドの国際社会福祉を考える」『新 世界の社会福祉12:国際社会福祉』、旬報社、2020年等。

石川美絵子

社会福祉士
社会福祉法人 日本国際社会事業団(International Social Service Japan-ISSJ)常務理事
津田塾大学 国際関係学科卒業。日本社会事業大学 社会福祉士養成課程、慶應義塾大学 システムデザインマネジメント研究科修了。
民間企業に勤務する傍らアムネスティ・インターナショナル日本で難民支援ボランティアを始める。2010年よりISSJ勤務。2015年に社会福祉士の資格を取得。法務省「第6次出入国管理政策懇談会 難民認定制度に関する専門部会」(2013−2014)の委員、内閣官房「第三国定住による難民の受入れ事業の対象拡大に係る検討会」(2018−2019)の委員を務めた。

<お申し込み>

参加をご希望の方は、以下のIDのミーティングルームにご登録ください。

ID: 821 6284 3215

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事前登録リンク

https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZYsceugqjgoG9GttpDgUGp3cPH98jzTSq7H

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よろしくお願いいたします。
多文化社会研究会 理事
明石留美子

第174回<多文化共創フォーラム>を開催いたしました!

多文化研の皆様

第174回多文化共創フォーラム「国際労働力移動を多元的視座から探究する ― 協働・共創の未来」を多文化社会研究会と学習院大学国際社会科学学会との共催で行いました。

冒頭、原田壽子立正大学名誉教授(多文化研名誉顧問)の開会挨拶で、女性の社会的地位、社会参加の変遷、課題などについてお話しをいただいたのち、多文化研理事長の川村千鶴子大東文化大学名誉教授の本フォーラムの趣旨説明がありました。

3部構成の開催の概要は以下の通りです。

第一部(問題提起)

その1「国際労働力移動の歴史的変遷から」
万城目正雄氏(東海大学教養学部人間環境学科教授、多文化研理事)

その2「移住労働者における数のアプローチと権利のアプローチから考える」
杉田昌平氏(弁護士、JICA国際協力専門員。多文化研会員)

第二部(基調講演)
「国際労働移動ネットワークの中の日本」

是川夕氏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長)

第三部(パネルディスカッション)

モデレーター:野崎与志子氏(学習院大学国際社会科学部教授)

1.「日本の中小企業を可視化できる」      万城目 正雄氏
2.「数のアプローチから未来を拓く」      杉田 昌平氏
3.「国際移動におけるモードの差異とそこにおける課題」  是川 夕氏
4.日本を目指す留学生、労働者、家族滞在。多様化する「日本移住」への流れ   
織田 一氏(朝日新聞社)

5. トルコの移民政策、現状等    伊藤 寛了氏(帝京大学)
6. 「ライフサイクルの視座と世代間サイクル」   川村 千鶴子

第一部から第二部では、さまざまな調査データをもとに、マスコミ報道の影響を色濃く受けた外国人労働者に対する日本社会の認識を翻すデータ分析や知見に、会場は静かな驚きに包まれました。また、是川氏は、OECD SOPEMIという加盟国の移民政策の専門家会議からフォーラム前日に帰国されたばかりで、ウクライナ問題も含んだホットな情報も伺うことができたのも幸運なタイミングでした。

最後のパネルでは、朝日新聞の織田一氏のネパール取材を通した日本留学熱再燃の状況に関するご報告と、トルコから帰国した帝京大学の伊藤寛了氏によるトルコの移民政策についての話の後、それを受けて、パネリストが感想や意見を述べ合いました。

最後に、川村多文化研理事長より、国際労働力移動の分析には外国人の世代間サイクルが進んでおり、さらに「生と死」を包括するライフサイクルの視座を念頭に置いた共創社会の重要性が指摘されました。多文化研の存在意義を再確認して、パネルを閉じました。

パネル後、多文化研ユースの立ち上げと運営に尽力されている東京大学の土田千愛博士・多文化研理事の挨拶で閉会となりました。

帰り支度をしながら「出席して本当によかった!」とおっしゃっていた方々の笑顔が印象に残っています。多くの視座を与えて下さったご登壇の皆様、本当にありがとうございました。

当日の写真も添付いたしますので、ご覧ください。

多文化社会研究会理事
山本弘子

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フォーラムに参加した学習院大学の学生のみなさんから、感想が寄せられています。
野崎与志子教授がまとめて下さいました。
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学習院大学国際社会科学部学生の感想

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Hana Hosokawa(学習院大学国際社会科学部3 年)

異なる人種や文化を持った人たちが共生する「多文化社会」について、理解を深めることができた。「多文化社会」については、ぼんやりとしたイメージを持っていたが、今回のセミナーを通して、『“皆”が生きやすい世界の創造』であるなと感じ、とても興味深く充実した時間であった。日本の少子高齢化・人口減少が進むと同時に世界的に経済のグローバル化が進み、人の国際移動が活発化している。日本は既に多文化社会の中にいることを自覚し、外国人が持つ社会問題に1人1人が目を向けなくてはならない。
多文化社会の理解を深めるためには、意識だけでなく、交流の機会の提供、地域行事、人材育成など、今回のような多文化研究会のアクションや各々の啓発が大切であり、今後さらに求められていくと感じた。

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Mayu Kohama (学習院大学国際社会科学部4年)

Thank you for today’s 多文化共生フォーラム!! Today, I learned the importance of Co-working and Co-creation with foreigners including international immigrants. I found that the lectures at today’s forum are linked with what I learned in the UK during my study abroad and what I’m studying now in Gakushuin University about migration and those challenges and problems. Honestly, I hadn’t known the history of migration (especially in Japan) until I took a class about human rights and economic development. I guess many Japanese people don’t know about the issues because these are unfamiliar issues for them. With the spread of threat of Russia-Ukraine war, I reckon it’s time to think international migration challenges and problems to co-work with asylum seekers and migrants during the time of war. I want to know more about how we can help migrants.

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Iyoko Someya(学習院大学国際社会科学部3 年)

日本は戦後の時点では外国人を受け入れない方針であったものの、人口構造の変化により今後は外国人労働者の受け入れを更に拡大する必要があるようになると思います。それにあたり、どのような受入れルートを選ぶか、また現行の在留資格制度による審査を続けるべきか、様々な課題があることが分かりました。制度上の課題のみならず、実際には杉田先生の仰っているように国家以外の主体を外国人の方の人権を尊重する必要があると思いますし、個人レベルでも労働者の方を単に「労働力として必要」ではなく、共に社会をつくっていく大切な構成員であり仲間であると考えなくてはならないでしょう。また、常に知識のアップデートを行い、在留外国人の現状や課題を把握することも欠かせないと考えています。今回のフォーラムで、私は「日本の高度人材受け入れのハードルが低い」という点について質問しました。講師の先生に詳しくご説明頂きました。ありがとうございます。

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Haruo Sekiguchi (学習院大学国際社会科学部4年)

東南アジアにおける日本への留学は、日本人で例えると大学進学のようなもので、一種のステータスなんだろうと思っていたが、内陸などでASEAN のように大企業を呼び寄せて、加工貿易のような貿易拠点になる事が出来ないから、外国に出ないと職や金がないという明確な理由がある事を学ぶ事が出来た。講義の中であったさびれてお客が入っていないインド料理屋がなぜ成り立っているのかという話は、低賃金で働かされている外国人労働者問題の根本的な原因な気がして、負の連鎖のようなものを感じた。また、日本への留学がヨーロッパの各国より人気な原因が、日本のみstudy and work であるということを知り、日本への労働移民の多さを再確認し、このまま労働移民が増えると日本も多民族国家の仲間入りをする事があるのかもしれないと思った。

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Ayli Fatheghavi(学習院大学国際社会科学部2年)

現代の若者のライフスタイルが変化しているということを最初に学びました。移民の受け入れはコロナ禍であっても増え、30 年で在留外国人は30 倍になり内なるグローバル化が進んだことがわかりました。そんな中で国と役所がどのような関係を作るかが課題となってきました。日本には政策目標がないにもかかわらず技能実習生の数をコントロールできているのは、日本に技能実習生としてくるには入国前借金が高いからであると考えられます。今回の講演で取り上げられていた分野はどれも私が興味のある分野で、わかりやすく教えてくださったのでとても楽しかったです。

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Momona Niwa (学習院大学国際社会科学部2 年)

To begin with, I was surprised to find out that Japan was one of the countries that accepted many foreign people because now Japan seems to be very negative about it. However, I also learned that it was because there has been less migration flow due to the pandemic and this problem of less international flow of people has become a problem not only for Japan, but also many other countries that need human resources from outside of their countries. Moreover, especially in Japan, this problem has been making the worker shortage more serious since foreign workforce is no longer helping to cover the shortage. I only made it to Part II unfortunately, but it was a really interesting forum so I wish I could attend all the parts. I made a comment: The differences between the phenomena that Asia has and that Europe and/or the United States has about migration are interesting.

第174回<多文化共創フォーラム>を開催します!

「国際労働力移動を多元的視座から探究する ―協働・共創の未来」
Multicultural Synergetic Society
Analyzing the migration of international workers from various multi-functional viewpoints = Values of co-operation and synergetic society with Human Rights and Business

共催:多文化社会研究会&学習院大学国際社会科学学会
日時:2022年10月15日(土)13:30~17:50
場所:学習院大学南館2号館200教室(豊島区目白1丁目5-1)
教室(定員100名)とオンラインとのハイブリッドで開催します。Zoomでも配信予定

参加費:無料

司会:山本弘子(カイ日本語スクール代表。多文化研顧問)

☆開会挨拶:Opening Comment

多文化研創立から34年。多元価値社会の地道な研究を持続可能にした安心の居場所です。
原田壽子 (立正大学名誉教授。多文化研初代副会長。多文化研名誉顧問。男女共同参画功労者内閣総理大臣賞表彰)

☆趣旨説明:グローバル化は地域の独自性や多様性の主張をも随伴し、情報は瞬時に脈動します。複眼をもって国際労働力移動の多元性を理解しましょう。     川村千鶴子 (多文化研理事長。大東文化大学名誉教授)

第一部 
☆問題提起 その1:「国際労働力移動の歴史的変遷から」(13:40~14:20)
International Labor Migration in Historical Perspective

今、注目を集めている日本の外国人労働者問題を、まずは、その歴史的変遷を踏まえて解説します。初学者、大歓迎です。
万城目正雄 (東海大学教養学部人間環境学科教授、多文化研専務理事。主な著書に、『岐路に立つアジア経済-米中  対立とコロナ禍への対応(シリーズ:検証・アジア経済)』(共著、文眞堂、2021年)、『インタラクティブゼミナール新しい多文化社会論』(共編著、東海大学出版部、2020年)、『移民・外国人と日本社会』(共著、原書房、2016年)などがある

☆問題提起その2:(14:30~15:10)
「移住労働者における数のアプローチと権利のアプローチから考える」
The numbers approach and the rights approach in International Labor Migration.

国際労働移動は、ホスト国からは、開放的な国境と市民権の平等という2つの観点から検討されてきました。そこで、日本においてどの程度国境の開放性を持たせるか、また、平等な市民権をいかに達成するかについて、数のアプローチ・権利のアプローチと題して問題提起を行います。
杉田昌平 (弁護士法人Global HR Strategy、弁護士。JICA国際協力専門員。多文化研会員。慶應義塾大学法科大学院KEIGLAD研究員。主な著書として『改正入管法関連完全対応 法務・労務のプロのための外国人雇用実務ポイント』、『外国人材受入れサポートブック』、『改正入管法対応 外国人材受入れガイドブック』、『グローバルスタンダードと送出国法令の解説』等)

第二部
☆基調講演:「国際労働移動ネットワークの中の日本」(15:20~16:10)
Japan amid the International Labor Migration Network

外国人労働者の受入れに関するこれまでの日本における議論はもっぱら日本国内の状況にのみ注目し、国際的な環境変化を十分に視野に入れてこなかったと言えます。本講演ではアジアで現在、勃興しつつある国際労働市場の実態を明らかにし、そこにおける日本の位置づけを明らかにします。このことは国際移動を考えるにあたって、日本社会が主体的に決定できる/できないことを峻別することを可能にするものであり、今後、急速に移民社会化する日本において、「道徳的に正しくあることが、選ばれることにつながる」という、いわば自己完結的なロジックを越えて、真の課題を明らかにする視点といえます。
是川 夕(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。
OECD移民政策会合ビューローメンバーなどを歴任。
OECD移民政策専門家会合(SOPEMI)政府代表も務める。
主な著書に、『移民受け入れと社会的統合のリアリティ:現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題』勁草書房2019、「国際労働移動ネットワークの中の日本:誰が日本を目指すのか」日本評論社2022等。

休憩<多文化研ユースの紹介とチラシ配布>

第三部
☆パネルデスカッション (フロアから学生も参加できる)(16:20~17:20)
Panel Discussion – Welcoming the speech from the floor
モデレーター:野崎与志子(学習院大学国際社会科学部教授)

1.「日本の中小企業を可視化できる」            万城目 正雄
2.「数のアプローチから未来を拓く」            杉田 昌平
3.「国際移動におけるモードの差異とそこにおける課題」  是川 夕
4.日本を目指す留学生、労働者、家族滞在。
            多様化する「日本移住」への流れ   織田 一(朝日新聞社)
5. 「ライフサイクルの視座と世代間サイクル」        川村 千鶴子

☆集合写真撮影
☆閉会挨拶:Closing comment

多文化研創立35周年を控えて新しい時代を切り拓く。
Coming 35th Anniversary of Society for Multicultural Community Studies, creating the new era of multicultural synergetic community.
 土田 千愛 東京大学地域未来社会連携研究機構特任助教。博士(国際貢献)。

第173回多文化共創フォーラム「多文化社会と日本語教育」を開催いたしました

2022年9月18日、第173回多文化共創フォーラム「多文化社会と日本語教育」を、22名の参加を得てオンライン開催することができました。

増田麻美子様(文化庁国語課日本語教育調査官、多文化研会員)からは、「日本語教育をめぐる政策・施策の概要とその背景」と題し、

1.日本語教育に関する国の方針等

2.日本語学習者数、日本語教師数、日本語教育機関の状況

3.日本語教育機関の認定制度及び日本語教師の資格制度と日本語教育人材の整理と養成・研修の状況

4.文化庁の日本語教育施策・事業

5.これからの日本語教育機関に求められる活動の事例

について、政策文書や統計を用い、また、日本語学校における取り組み事例を紹介しながら、詳細かつ行き届いたご報告をいただきました。

山本弘子様(カイ日本語スクール代表、多文化研理事)からは、「日本語学校の現状と展望」と題し、

・日本語学校の現状(コロナ禍の影響、在籍者・学校数の変化、チェーン化)

・日本語教育の質向上の方向性

・アベプラ「ひろゆき」氏に見られるネガティブな世論の分析

・良質な学生の誘致を含む展望と課題

について、30年間、日本語教育の第一線で活躍されてきた方ならではの具体的かつ貴重な分析をお話しいただき、事前に寄せられた質問にも丁寧に回答していただきました。

質疑応答ディスカッションでは、NPO法人無国籍ネットワークで活動される方や、札幌で日本語学校の校長を務める方から、現場で感じておられる課題を共有していただき、増田様から関連施策についてもご紹介いただきました。

川村様は開会の挨拶で、多文化共創における日本語教育の重要性と、日本語学校の活動のプラスの側面を正しく伝えていく重要性を指摘され、

関口様は、会の結びに、コロナ禍という21世紀最大の試練を乗り越え、日本語教育を進化・発展させていく必要性を述べられました。

本日のフォーラムを通じ、多文化共創の様々な場面における日本語教育施策が拡充されつつあること、日本語学校が、コロナ禍を始めとする様々な試練に直面しながら、教育の質向上に努力されていること、また、関係の皆様が、熱い情熱をもって日本語教育の改善・拡充に取り組んでおられることを知ることができました。

多文化研企画担当理事 佐藤由利子

第174回多文化共創フォーラムのお知らせ

「国際労働力移動を多元的視座から探究する ―協働・共創の未来」
Multicultural Synergetic Society
Analyzing the migration of international workers from various multi-functional viewpoints = Values of co-operation and synergetic society with Human Rights and Business

共催:多文化社会研究会&学習院大学国際社会科学学会
日時:2022年10月15日(土)13:30~17:50
場所:学習院大学南館2号館200教室(豊島区目白1丁目5-1)
教室(定員100名)とオンラインとのハイブリッドで開催します。Zoomでも配信予定

参加費:無料

司会:山本弘子(カイ日本語スクール代表。多文化研顧問)

☆開会挨拶:Opening Comment

多文化研創立から34年。多元価値社会の地道な研究を持続可能にした安心の居場所です。
原田壽子 (立正大学名誉教授。多文化研初代副会長。多文化研名誉顧問。男女共同参画功労者内閣総理大臣賞表彰)

☆趣旨説明:グローバル化は地域の独自性や多様性の主張をも随伴し、情報は瞬時に脈動します。複眼をもって国際労働力移動の多元性を理解しましょう。     川村千鶴子 (多文化研理事長。大東文化大学名誉教授)

第一部 
☆問題提起 その1:「国際労働力移動の歴史的変遷から」(13:40~14:20)
International Labor Migration in Historical Perspective

今、注目を集めている日本の外国人労働者問題を、まずは、その歴史的変遷を踏まえて解説します。初学者、大歓迎です。
万城目正雄 (東海大学教養学部人間環境学科教授、多文化研専務理事。主な著書に、『岐路に立つアジア経済-米中  対立とコロナ禍への対応(シリーズ:検証・アジア経済)』(共著、文眞堂、2021年)、『インタラクティブゼミナール新しい多文化社会論』(共編著、東海大学出版部、2020年)、『移民・外国人と日本社会』(共著、原書房、2016年)などがある

☆問題提起その2:(14:30~15:10)
「移住労働者における数のアプローチと権利のアプローチから考える」
The numbers approach and the rights approach in International Labor Migration.

国際労働移動は、ホスト国からは、開放的な国境と市民権の平等という2つの観点から検討されてきました。そこで、日本においてどの程度国境の開放性を持たせるか、また、平等な市民権をいかに達成するかについて、数のアプローチ・権利のアプローチと題して問題提起を行います。
杉田昌平 (弁護士法人Global HR Strategy、弁護士。JICA国際協力専門員。多文化研会員。慶應義塾大学法科大学院KEIGLAD研究員。主な著書として『改正入管法関連完全対応 法務・労務のプロのための外国人雇用実務ポイント』、『外国人材受入れサポートブック』、『改正入管法対応 外国人材受入れガイドブック』、『グローバルスタンダードと送出国法令の解説』等)

第二部
☆基調講演:「国際労働移動ネットワークの中の日本」(15:20~16:10)
Japan amid the International Labor Migration Network

外国人労働者の受入れに関するこれまでの日本における議論はもっぱら日本国内の状況にのみ注目し、国際的な環境変化を十分に視野に入れてこなかったと言えます。本講演ではアジアで現在、勃興しつつある国際労働市場の実態を明らかにし、そこにおける日本の位置づけを明らかにします。このことは国際移動を考えるにあたって、日本社会が主体的に決定できる/できないことを峻別することを可能にするものであり、今後、急速に移民社会化する日本において、「道徳的に正しくあることが、選ばれることにつながる」という、いわば自己完結的なロジックを越えて、真の課題を明らかにする視点といえます。
是川 夕(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。
OECD移民政策会合ビューローメンバーなどを歴任。
OECD移民政策専門家会合(SOPEMI)政府代表も務める。
主な著書に、『移民受け入れと社会的統合のリアリティ:現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題』勁草書房2019、「国際労働移動ネットワークの中の日本:誰が日本を目指すのか」日本評論社2022等。

休憩<多文化研ユースの紹介とチラシ配布>

第三部
☆パネルデスカッション (フロアから学生も参加できる)(16:20~17:20)
Panel Discussion – Welcoming the speech from the floor
モデレーター:野崎与志子(学習院大学国際社会科学部教授)

1.「日本の中小企業を可視化できる」            万城目 正雄
2.「数のアプローチから未来を拓く」            杉田 昌平
3.「国際移動におけるモードの差異とそこにおける課題」  是川 夕
4.日本を目指す留学生、労働者、家族滞在。
            多様化する「日本移住」への流れ   織田 一(朝日新聞社)
5. 「ライフサイクルの視座と世代間サイクル」        川村 千鶴子

☆集合写真撮影
☆閉会挨拶:Closing comment

多文化研創立35周年を控えて新しい時代を切り拓く。
Coming 35th Anniversary of Society for Multicultural Community Studies, creating the new era of multicultural synergetic community.
 土田 千愛 東京大学地域未来社会連携研究機構特任助教。博士(国際貢献)。