多文化研=【多読味読】

============

【多読味読<83>『変わる福祉社会の論点』第3版信山社2021年9月20日285ページ】

『変わる福祉社会の論点』

多文化研のみなさま いかがお過ごしでしょうか?
益々ご清祥のことと思います。私は白い胡蝶蘭と生花の香りの中で生活しています。
明後日は、一人で金婚式を迎えます。
生花だけでなく、毎日、素晴らしい本が届きます。

付 月 (ふう ゆえ)先生! 
『変る福祉社会の論点 第3版』をご恵贈くださり、ありがとうございました。平成30年に第1版が発行されてから激動の3年間が経過し、第2版でも改訂し、今回の第3版は、深く深く掘り下げて、本の構成も変えられたのですね。
凄いです。大変だったと想像します。新型コロナウイルス感染症で世界がどう変ったのでしょうか?
COVID-19の流行によって、図らずも日本の社会システムに内在するさまざまな問題が表面化したことが分かります。今まさに日常生活の中で取り組んでいる地域・子ども・高齢者・医療・労働・雇用・年金・生活保護などについて取り上げ、問題の現状と背景や、その根幹に潜む原因と解決策の手がかりを提示されています。
私は、いま、初版も読みたくなってきました。

執筆者が丁寧に紹介されていますね。
*三輪まどか(みわ・まどか):南山大学教授
 I[総論],III[総論・1],IV[総論・3],V[3],VI[2]
原田啓一郎(はらだ・けいいちろう):駒澤大学教授
 I[1],III[6],IV[6],V[4]
橋爪幸代(はしづめ・さちよ):日本大学教授
 I[2],II[5],IV[1]
小西啓文(こにし・ひろふみ):明治大学教授
 I[3],III[3・5]
脇野幸太郎(わきの・こうたろう):長崎国際大学教授
 I[4],IV[5],V[6]
新田秀樹(にった・ひでき):中央大学教授
 I[5],V[2],VI[4]
*増田幸弘(ますだ・ゆきひろ):日本女子大学教授
 II[総論・1],V[総論・1],VI[総論・1]
髙橋大輔(たかはし・だいすけ):茨城大学准教授
 II[2・3]
付 月(ふう・ゆえ):茨城大学准教授
 II[4]
*根岸 忠(ねぎし・ただし):高知県立大学准教授
 III[2・4],VI[5]
†田中秀一郎(たなか・しゅういちろう):元岩手県立大学准教授
 IV[2]
本澤巳代子(もとざわ・みよこ):筑波大学名誉教授・筑波大学客員教授
 IV[4],V[5],VI[3]

まず、付月先生の「日本生まれの無国籍児―国籍法の欠缺の落とし子」を拝読しました。無国籍を防止し、すべての子どもの国籍取得権の保障を実現するのに、どうしてこんなに時間がかかるのだろうと思います。
毎日、楽しみに拝読いたします。ぜひ多文化研の皆様もご高覧いただきたいと思います。目次だけでもご紹介しますね。
第3版 はしがき/はしがき(初版)ORIENTATION 拝読しました。Ⅲの「働き方」に注目しました。

Ⅰ 感染症で世界が変わる
感染症で世界がどう変わったのか,変わるのか
*感染症拡大の現状
*自由の制限と人権保障
*日常の“強制的な”変化とその影響
*生活を支える人たちとコロナ禍
*変化は,恒久的か/一時的か

1 公衆衛生と法からみえる新型コロナウイルス感染症対策
 パンデミックと公衆衛生
 公衆衛生と個人
 外出自粛要請と営業自粛要請
 営業自粛要請とその補償
 新型コロナ対策とワクチン接種
 個人と社会を行き来する

2 働く人の働き続けるための変化―テレワークの拡大と働き方・生活の変化
 テレワークの推進に向けたこれまでの取組み
 新型コロナウイルス感染症拡大防止策としてのテレワークの拡大
 緊急事態宣言下における生活の変化

3 「労働者」だけが働いているわけじゃない―でも働けなくなって保障されるのは「労働者」?
 コロナ禍があぶりだした「働く世界」における格差問題
 自営業者への従来的な保護
 「新しい自営業」としてのクラウドワーク・フリーランス
 それでは,われわれはどうするべきか?

4 コロナ渦中の大学生活・大学教育―学びの保障と大学の意義
 コロナ渦と教育の間で
 コロナ渦が大学生活にもたらした影響
 「コロナ後」を見据えて

5 入院先が見つからない!―新型コロナによる医療崩壊の危機
 医療崩壊の危機とは
 危機の原因
 医療崩壊を防ぐための対応
 次のパンデミックに備えて

Ⅱ 家族が変わる
家族がどう変わったのか,変わるのか
*家族が変わる
*結婚する―婚姻の成立
*内縁(事実婚)の関係
*離婚する―婚姻の解消
*親子関係の成立と届出
*親による子への体罰

1 配偶者って何だろう―同性カップルと社会保障
 オスカー・ワイルドの投獄
 自由権規約委員会の懸念
 “To define is to limit.”
 これからの課題

2 生まれ方の多様化―生殖補助医療と親子法
 不妊治療への保険適用
 民法特例法
 生殖補助医療の抱える問題
 人工授精
 代理出産

3 もめるのは,別れるときだけじゃない―離婚後の面会交流と民間支援
 面会交流とは
 面会交流に対する支援
 新型コロナ禍の中での面会交流

4 日本生まれの無国籍児―国籍法の欠缺の落とし子
 国籍はあって当たり前?―国籍のない子どもたちがいる
 無国籍児とは―日本では「外国人」の一部
 日本の国籍法―国籍の取得要件,無国籍の発生防止(限定的ではあるが)
 日本生まれの無国籍児―法の狭間に陥ったAさん
 無国籍児/者の直面する問題①―日本国籍を有しないことの意味
 無国籍児/者の直面する問題②―どこの国の国籍も有しないことの意味
 無国籍児/者の直面する問題③―自分でも気づかない・見えにくい無国籍問題
 考えてみよう―無国籍を防止し,すべての子どもの国籍取得権の保障のために

5 しつけか,体罰か?―親による子の体罰禁止,虐待防止
 2019年児童福祉法等改正の経緯
 体罰等が子どもの心身に与える影響
 日本における体罰に関する意識と国際的な動き
 体罰の考え方・範囲
 体罰禁止を実現するための支援体制

Ⅲ 働き方が変わる
働き方がどう変わったのか,変わるのか
*人が減っていく社会
*新たな「働き手」の参入
*さらなる新たな「働き手」の参入
*さらなる新たな「働き手」(?)の登場

1 スーパーウーマンになりなさいと言われても―一億総活躍社会とワーキングマザー
 11月は入所申込みの勝負月
 保育ニーズの高まり
 待機児童問題
 働く母親の1日と育児の担い手
 多岐にわたる施策と実効性
 一億総活躍するために―働く環境の整備と女性の意識変革

2 みんな働くことが好き?―現在の労働環境をめぐる状況
 働き方改革って何?
 非正規労働者の増加と保護
 労働時間をめぐる状況
 ワーク・ライフ・バランスの現況

3 労災補償も社会保障?―過労死・過労自殺と「働き方改革」
 電通における2件の過労自殺
 労働基準法と労災保険法の関係
 労災保険法と業務上外認定
 いわゆる過労自殺と電通事件
 「働き方改革」と過労死・過労自殺

4 外国人労働者にはどのような保護がなされているの?―外国人労働者受入れ施策とその概要
 増加している外国人労働者
 外国人労働者の現況
 これまでの外国人労働者政策
 近年の外国人労働者政策
 外国人労働者保護政策の現状及びそのあり方
 外国人労働者受入れ政策の今後

5 障害のある人の働きやすい環境とは?―「合理的配慮」からみた「社会的包摂」のあり方
 国連障害者権利条約のインパクト
 障害者雇用における議論
 従来の障害者雇用施策
 あるべき「合理的配慮」とは?
 障害者の「統合」か,「包摂」か

6 AI×ロボット時代と社会保障―AI×ロボットとともに創る未来
 AI×ロボットが雇用を揺るがす?
 AI×ロボットの展開により働き方が大きく変わる
 AI×ロボット時代に直面する社会保障制度
 AI×ロボット時代の社会保障制度への議論に向けて
 社会保障・福祉領域におけるAI×ロボットの可能性

Ⅳ 「中流」が変わる
「中流」がどう変わったのか,変わるのか
*みんなが「中流」だった日本
*一億総中流の社会から格差社会へ
*格差社会からの二極化
*失われた20年の遺産
*ポスト「中流」社会の条件

1 子どもの貧困―ひとり親家庭への支援
 日本の子どもが貧困!?
 母子家庭の貧困
 ひとり親家庭に対する経済的支援
 ひとり親に対する就労支援
 子どもの養育費の確保
 ひとり親家庭の子どもの学習支援
 子どもの貧困と大学進学支援

2 若者と年金―年金加入のメリットと学生納付特例制度
 少子高齢化と年金
 年金加入のメリット
 厚生年金および国民年金の被保険者資格
 年金保険への加入手続き
 保険料納付
 学生納付特例と個人単位・世帯単位

3 日常の/非日常の“Stay (at) home”―8050中高年のひきこもり問題
 コロナ禍での“Stay (at) home”
 ひきこもりの現状
 ひきこもりの分類と派生する問題
 解決のための試みと限界
 当事者目線の社会福祉制度構築のために

4 国民皆年金ではないの?―単身高齢者の増加と貧困リスク
 高齢者の増加と高齢者世帯の所得
 単身高齢者世帯の貧困リスク
 公的年金制度と貧困リスク
 単身高齢者の貧困と公的年金制度の改革

5 生活保護≒年金?―生活保護受給者の高齢化と受給期間の長期化
 生活保護制度の役割・機能
 生活保護の動向
 現在の生活困窮者支援
 高齢者における保護受給期間の長期化と第2のセーフティネット

6 住宅政策と福祉政策―マイホーム神話のいま
 住宅すごろく
 持家社会とマイホーム神話
 マイホーム神話のいま
 住宅政策と福祉政策の接近
 住宅セーフティネット
 地域包括ケアシステムと住宅

Ⅴ 医療・福祉が変わる
医療・福祉がどう変わったのか,変わるのか
*この章がどう変わったのか―初版,第2版との違い
*医療提供体制
*医療保険制度
*2020(令和2)年度の診療報酬の改定
*高齢化の進展と疾病構造の変化
*福祉サービスの提供方式

1 白衣を着たうさぎ―治療と仕事の両立支援
 チョッキを着た白うさぎ
 白衣を着た白うさぎ
 トライアングル型支援―主治医・産業医(企業)・患者(家族)をつなぐ
 産業医の職務―労働の現場で活動する白衣を着たちりょうささん
 勧告・助言・意見の尊重―労働の現場で活動する白衣を着たちりょうささんの権限等
 情報の共有と個人情報の保護
 治療と仕事の両立支援から産業ソーシャルワークへ

2 地域のお年寄りを支えるのは誰?―地域包括ケアシステムの構築
 地域包括ケアシステムとは
 地域包括ケアシステムの仕組み
 地域包括ケアを支える個々のサービスの提供者
 地域包括ケアシステム構築にあたっての課題
 地域包括ケアシステムの展望

3 自分らしい最期の迎え方―終末期医療における高齢者と家族
 「終活」ブームと医療
 意に沿う最期―尊厳死と平穏死
 死ぬに死ねない事情
 人生の最期を決めるのは自分

4 健康づくり・介護予防と社会保障―予防重視型システムのあり方を考える
 予防への関心の高まり
 医療保険制度における予防・健康づくりの推進
 介護保険制度における介護予防の推進
 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施
 健康・医療・介護情報の利活用
 予防重視型システムの特徴
 健康の自己責任論と予防重視型システム
 予防重視型システムの行き着く先?―社会保障財源としての悪行税(Sin tax)

5 施設は安全・安心な住まいか?―福祉施設の役割変化と利用者支援
 障害者施設で起こった悲劇
 福祉施設における当事者の法律関係
 障害者虐待防止法による障害者虐待の調査結果
 高齢者虐待防止法による施設内虐待の調査結果
 入所施設は「住まい」ではないのか?
 住宅確保要配慮者の「住まい」

6 「介護はきつい」は本当?―介護の担い手の多様化
 福祉・介護人材をめぐる状況
 介護職員の処遇改善とキャリアアップ
 外国人介護人材の導入―EPA・技能実習生・「特定技能」
 今後に向けて

Ⅵ 地域が変わる
地域がどう変わったのか,変わるのか
*5つの論稿が取り上げる問題
*地域コミュニティの定義・分類・機能
*地域コミュニティの担い手の変化
*地域コミュニティにかかわる組織や人の活動―自然災害への対応
*社会的孤立から生じる問題―ゴミ屋敷問題への対応,元受刑者の社会的支援
*地域コミュニティと社会的包摂―多様な「居場所」の創出
*エイジフレンドリーシティの構想

1 国境をこえた学び合い―WHOのエイジフレンドリーシティ・グローバルネットワーク
 ある日の新聞から
 エイジフレンドリーシティズ・アンド・コミュニティズ
 建造物や交通の問題だけではない―AFCCの8つの主題領域
 エイジフレンドリーシティ・グローバルネットワーク
 GNAFCCのメンバー
 国境をこえた学び合いのネットワーク
 GNAFCCのアフィリエイト
 独自のネットワークを形成するアフィリエイト―フランスのRFVAAを例に
 新聞の記事からの連想

2 国としてのもしものときの備え―災害に関わる制度と社会保障制度
 平成の災害
 日本の災害をめぐる法制度
 災害発生から復旧・復興過程における問題とニーズ
 災害の多い国における「支え」としての社会保障制度の在り方

3 ゴミ屋敷問題―高齢者と家族の孤独・孤立
 ゴミ屋敷の態様と発生原因
 空き家所有者実態調査と空き家対策
 土地・建物の所有者本人によるゴミ屋敷と自治体の対応
 マンションにおけるゴミ屋敷問題と管理組合の対応
 高齢者ごみ出し支援制度の導入
 地域共生社会の実現とゴミ屋敷問題

4 私の居場所はどこに?―居場所づくり施策の現状
 「居場所」という言葉の由来
 居場所づくり事業の例
 居場所の特徴と居場所づくり事業の意義
 居場所づくり事業の課題

5 出所したらどう暮らすの?―元受刑者と社会的支援
 高齢者・障害者と犯罪
 出所後の社会的支援
 社会的支援のあり方

改訂していく執筆者のみなさまの迫力が伝わってきます。

丁寧に改訂編集を重ねた信山社のご努力も素晴らしいです。ありがとうございました。

川村千鶴子

============

【多読味読<82>新垣修著『時を漂う感染症 ―国際法とグローバル・イシューの系譜』慶應義塾大学出版会 2021年8月20日刊行 353ページ】

多文化研のみなさま
新垣修先生
慶應義塾大学出版会のみなさま

新型コロナの感染者数は2億720万人を超えており、世界的規模での終息の兆しはまだ見えません。
グローバル社会において、感染症の歴史と国際法とはどのような関係性にあったのでしょうか。
170年にわたる疫病と世界の変容を、国際基督教大学教授の新垣修先生がおまとめになり、この度、慶應義塾大学出版会から刊行されました。

新垣先生、ご恵与賜りありがとうございました。国際法の軌跡を学ばせていただきます。
みなさま、このインパクトのある表紙と実に説得力ある目次のページはぜひここをご高覧くださいませ。↓

https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766427622/

<多読味読>では、大学院時代に新垣先生のご指導を受けられ、現在憲法学と法学を専門にご研究されている、筑波大学の秋山肇先(多文化研理事)との対談を通じて本書をご紹介いただきます。

川村千鶴子

(新垣修国際基督教大学教養学部教授)

(秋山)『時を漂う感染症−国際法とグローバル・イシューの系譜』のご出版、おめでとうございます。

(新垣)ありがとうございます。

(秋山)まず、本書全体の目的について教えてください。

(新垣)第1回国際衛生会議がパリで開催されてから、今年はちょうど170年目の年にあたります。この歴史の節目に、感染症と国際法の関係の系譜を辿ることにより、その変化の様子を可視化することが目的でした。

(秋山)つまり、感染症と国際法がどのように交わり、変化し、次の世代にどう継承されていったのかを明らかにすることが主旨なのですね。

(新垣)そうです。どのアクターが、いつ、どのように、なぜ、感染症をめぐる国際法に変化をもたらしたのかという点の探究に重点を置きました。そのためには、戦間期や戦時期、冷戦期などにおける国際体制の変容や、国益・脅威に関する認識の(再)構成、科学・医学の発展といった、国際法の変化の背後にある要因にも意識を向ける必要がありました。

(秋山)なるほど。では、本書の射程について教えてください。

(新垣)国際法全般の系譜をカバーしているわけではありません。ですが、国際衛生条約とそれを基礎に成立した国際衛生規則、さらにそこから展開した国際保健規則を軸に据えています。
また、国際人権法や安全保障といった領域も含んでいるので、感染症をめぐる国際法の系譜を辿る上で必要な範囲をおおよそおさえているかと思います。
また、いくつかのグローバル・イシューに関する国際法の系譜も取り上げています。
まず、感染症医薬品、つまり、エイズの治療・延命に必要な医薬品です。
第2にワクチンへのアクセスとその世界的分配、第3に「感染症の武力化」とも言える生物兵器とバイオテロへの取り組みです。さらに最終章では、レジーム論の観点から、感染症をめぐる国際法の軌跡を鳥瞰しています。

(秋山)新型コロナウイルス感染症パンデミックの最中に本書を書かれたそうですね?その時期に執筆された動機は何なのでしょうか?また、どのようなことに注意して書かれたのですか?

(新垣)国際法が感染症にどう関わってきたのかという歴史を、新型コロナの猛威をまさに体感しているその瞬間に書き残しておきたい、というのが動機でした。
新型コロナは、世界においても、私個人においても、計り知れないほどの激震をもたらしました。ですが、日常の風景をすっかり変えてしまったこの感染症も、将来はその姿を変えているはずです。そして、時を漂う中で、それもやがて歴史の中の一頁となることでしょう。このような認識から、本書執筆中には、世界や私個人が置かれた事態を、歴史の一コマとして相対化する意識を保つよう努めました。
また、感染症をめぐる国際法の史的変遷を知るためには、国際政治の動きはもちろん、感染症そのものや実際の政策・対策といった様々な課題まで踏み込まなければなりませんでした。私は自分の浅学を自覚しており、このような多角的アプローチをとることには大変躊躇していました。ですが、勤務先であるICUのキャンパスに静かに吹く、リベラル・アーツの風が私の背中を押してくれたように思います。

(秋山)学問が細分化する中、勇気を持って広い視野で研究することの大切さを感じさせてくれる、私の背中を押してくれる1冊でもあります。
では最後に、出版後の今のお気持ちと多文化研へのメッセージをお聞かせください。

(新垣)感染症は、人類にとって切り離せない事象かと思います。それは、感染症が、納得できる理由もなく唐突に訪れる死の不条理を人類に伝えてきたから、というだけではありません。死と不可分の不条理を教えることで、何気ない日常を慈しみ、他者を愛し、命を賛美する価値を人類に悟らせてくれているからでもあります。
また、この不条理を知り、それを乗り越えようとするからこそ、人類は医学や科学技術を発展させ、新しい社会を構築してきたとも言えます。私個人にとって、感染症と国際法の関係史を知ることは、国際社会が何を捨て、何を残し、何を足し、何を忘れ、なぜそうなったのかを学ぶプロセスでした。同時にそれは、私自身のこれまでの生き方を問う、第一歩なのかもしれません。

(川村)対談形式にするとお二人の視座が鮮明に伝わってきました。ありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

✤国際法と感染症の関係について興味のある方はぜひご連絡ください。

〒181-8585 東京都三鷹市大沢3−10−2

国際基督教大学(ICU)教養学部教授 新垣修 (ARAKAKI, OSAMU)
Tel: 0422-33-3163
E-mail: aosamu@icu.ac.jp

川村千鶴子 

多文化社会研究会 ↓ここの<多読味読>欄をご高覧くださいませ。
https://tabunkaken.com/

Emeritas Prof. Dr. Chizuko Kawamura

============

【多読味読<81>大橋知穂著『未来を拓く学び「いつでもどこでも 誰でも」パキスタン・ノンフォーマル教育、0からの出発』佐伯印刷出版2021】

『未来を拓く学び「いつでもどこでも 誰でも」パキスタン・ノンフォーマル教育、0からの出発』佐伯印刷出版2021

多文化研のみなさま

多文化研(Global Awareness)が始まった80年代、私たちは、トンガ王国に本を送りました。
そして会員だった一財日本出版クラブ専務理事の大橋祥宏さんの「読書のめぐみ運動」にかかわっていました。全国の矯正施設など本にめぐまれない方々にずっと日本出版クラブを通して本を送りました。いまでもやっている方々がいます。
今年までに173万冊になります。

ベトナム人の受刑者の女性から母国語の本がどんなに励みになったか丁寧なお礼状をいただいたことがあります。
学習権は生存権だと思いました。入管施設にも母国語の本を並べて図書室をつくっていただきたいと何度もお願いしたことがありますね。
でも、まだ実現していません。

今日は、JICA緒方貞子平和開発研究所から書籍をご恵与いただきました。レターパックを開けてびっくり。
大橋さんのお嬢さんの大橋知穂さんの本です。いまカラチにいます。

『未来を拓く学び「いつでも どこでも 誰でも」-パキスタン・ノンフォーマル教育、0(ゼロ)からの出発』
ロンドン大学東洋アフリカ学院修士課程を終えて、ずっとパキスタン住んでおられたことを知りました。貧困や社会環境、災害、パンデミックなどのさまざまな理由から、義務教育の対象年齢(5~16歳)の子どもや若者のうち、44%にあたる2,280万人もが学校に行っていないパキスタン。
知穂さんが2008年にJICAのノンフォーマル教育プロジェクトの専門家としてパンジャブ州に着任した当時、周囲の協力を得るのが難しく、資金も人材も経験も信頼もない中からのスタートが書かれています。

カラチにおられて成功することは凄いことです。
「コロナ禍のいま思うことという」<終章>を読んで感動しました。
ぜひみなさまにも読んでいただきたくご紹介させていただきます。

https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/publication/projecthistory/post_27.html

川村千鶴子

============

【多読味読<80>:代表編集・川村千鶴子『多文化共創社会への33の提言:気づき愛Global Awareness』都政新報社

日本社会の多様化と寛容性
(書評:多文化共創社会への33の提言:気づき愛 Global Awareness 編集代表:川村千鶴子 都政新報社、2021年)

青森公立大学 経営経済学部
地域みらい学科 教授 佐々木てる

2021年7月、新型コロナウィルスの蔓延に歯止めがかからないまま、東京オリンピックがスタートした。日々の選手の活躍に注目が集まり、称賛と応援が送られる裏で、一日あたり過去最大の新型コロナ感染者数が出ている。この状況は今の日本社会の状況を映す鏡となっている。すなわち一方においては、グローバル化を進め多様性を承認したいという想いと、他方においてはそのための国内的な整備や準備ができていないという現状である。

本書は上記のような日本社会の現状に対し、一歩進んだ観点、すなわち「多文化共創社会」という点からつくられた書物である。そして、その内容は日本社会が様々な場面で考えなくてはならない、多文化への対応が網羅されている。

本書の構成を確認しておこう。
本書は第Ⅰ部、第Ⅱ部にわかれており、第Ⅰ部が総論、第Ⅱ部が各論となっている。本書で特徴的なのは第Ⅱ部の各論であろう。第Ⅱ部は「第1章 外国人受け入れ政策」「第2章 地域コミュニティ」「第3章 保健・医療・介護」「第4章 外国人雇用」「第5章 住民サービス」「第6章 教育政策・言語教育」「第7章 日本語教育」「第8章 人権と権利とは」「第9章 諸外国の取り組み」となっている。一世代前の外国籍者を巡る議論は善くも、悪くも「受け入れるか否か」という視点が中心であった。しかし、マルチ・エスニック化が進み、二世代、三世代化が進んでいる現在、こうした実生活で直面する場面、場面に応じた課題や政策提言が必要になってくる。それぞれの章で、3~4人の執筆者が専門の分野に即して、まさしく「提言」を行っている。例えば在留特別許可に対する「ポイント制の導入」(42頁)、大学・専門学校の留学生への卒業後の対策(98頁)、住民サービスとしての優しい日本語やイラストの活用(70、110頁)など、様々なアイデアがちりばめられている。なにより重要なのは、本書が基本的に現在ある人々といかに共生しいくかという視点にたった提言を行っていることである。

本書の根本理念を確認しておこう。
編集代表である川村は「多文化」とは、様々な「差異の承認」だと指摘する。そして「多文化共創社会とは、単に文化的多様性を尊重するだけではない。日本人の多様性にも照射し、人間の安全保障を基礎として、身体的条件、社会階級、ジェンダー、LGBTQ、高齢者、留学生、技能実習生、特定技能外国人、移民家族、難民、無国籍者など多様な人々との「気づき愛」(Global Awareness)の社会を示している」と述べる。そして皆が、自らが責任のある「実質的市民」として、主体的に社会に参画することこそが、多文化共創を社会の実現になると主張する(4頁)。これまでの議論はともすると、マジョリティ-マイノリティ図式を前提として、マイノリティはあくまで支援すべき対象としてあつかわれていた。それに対し、本書では明確に「実質的市民」として行動も求めている。そして本書の提言は、マジョリティ側の一方的な提供ではなく、あくまで「共創」を基本として提言になっているのが特徴的である。冒頭で多様性を承認するための国内的な整備や準備ができていないことを指摘したが、それは全て当該社会に所属する人々の課題であり、政治のみに任せる問題ではない。共に社会を創るという当事者意識、主体的な姿勢がなければ進まないものだといえる。

さて、本書における「共創」の理念を支える、もう一つ重要な視点はGlobal Awarenessである。本書はこれを「気づき愛」という言葉で表現している。やや理想的すぎる、少し恥ずかしくなるような言葉であるものの、本質的な問題を捉えているといえるだろう。互いを尊重し、気づきあうためには、他者を想う「愛」が必須になってくる。さらにこの概念は、世界的な飢餓や持続可能な社会の実現、近年のSDGsの理念も視野に入れている(22頁)。そういった広い意味での人類愛の観点こそ、実はこのパンデミックの広がる現状においては考え直す必要があるのといえる。昨今の新型コロナに関する報道をみると、病気にかかった人を排除、非難したり、海外から来た人、地域外から来た人をバッシングしたりするような事例が数多く報告されている。またSNSをみると、心ない書き込みはいまだ無くなっていない。そこには根本的な人への信頼や愛情が欠如し、どのような社会を創っていきたいのかという理念が欠如している。日常の身の回りのこと、目の前の出来事を処理することで精いっぱいで、社会の進むべき方向性が見失われていると感じられる。そういった意味で、Global Awarenessというものは、社会的な想像力を取り戻し、人類社会の共通の目標となりえるような理念といえる。

さて本書を通底するこれらの理念は、現実的にどの程度有効性を持つのであろうか。現在の日本の状況を鑑みるに、多様性の承認や「気づき愛」といったものの実現はまだまだ困難な道だと思える。特に昨今の日本、および世界的な状況はグローバルな相互共存より、自国中心主義、閉鎖的なナショナリズムの傾向が強い。私自身は重国籍問題に取り組んでいるが、日本におけるここ数年の複数国籍を巡る裁判では残念な結果が続いている。近年では複数の国籍の保持を認める国は増えており、実質的には自国以外の国籍の放棄は強要できないのが現状にも関わらず、時代にあった法律にはなかなか改善していかない日本の状況は歯がゆいものがある。また地方の現状を見ると、富裕層と貧困層の経済格差がますます広がっている気がする。身近な話題でいえば、コロナ禍における大学中退や進学をあきらめる現状がそこにはある。こういった状況下において、どのように多文化共創社会を実現していくのか。そしてGlobal Awarenessを確立していくのか。他者以前に自分自身の生活に向き合わなければならない状況が増している中、「気づき愛」は可能なのだろうか。また、本書ではいわば「現場」での経験と、そこからの立場での提言が中心であった。しかし同時に大きな理念を成し遂げるためには、やはり国、そして世界全体の進方向性が重要になってくる。その意味では今後すすむべき、より精緻な社会の全体像をもっと提示していく必要もあるだろう。その全体像の輪郭が見えてこそ、本書のそれぞれの提言、そして取り組みが生きてくるのではないだろうか。多文化共創社会、「気づき愛」は理念としては正しい。そして今後のあるべき社会像として魅力的なものである。しかしそこへの道のりはまだはじまったばかりだといえる。執筆者のそれぞれが、現場で取り組んでいるように、多くの人が関心を持ち、同様の理念に向かう姿勢がでてこなければ単なる理想に終わってしまうだろう。

上記の視点を含め本書のどのように活用していくかを述べておこう。本書は手に取ればわかるように、決して分厚い本ではない。にもかかわらず、33の提言がある。その意味で各執筆陣はもっと伝えたいことがあったと考えられる。そのため、あくまでそれぞれのテーマの導入として本書を利用するのがよいと思う。それぞれのテーマは非常に重要で、難しい課題が多い。そのため本書を読んだだけで、全てを理解することは不可能である。この問題にはじめて取り組む方々や初学者、学生に是非読んでいただきたい。また行政など現場で働いている人々は、それぞれの提言を確認しておくこともよいだろう。あくまで一つの手がかりとして手に取ってほしいと思う。本書を手に取り、多文化共創社会に興味を持つことで、一つのAwareness(気づき)が生まれ、そこから「気づき愛」に進むことを切に願う。

最後にこれらの多くのテーマを一冊の本にまとめ、そして社会理念を問う本書を提出した編集代表者に敬意を表したい。

青森公立大学 経営経済学部
地域みらい学科 教授 佐々木てる

佐々木てるプロフィール:青森公立大学 経営経済学部 地域みらい学科教授。博士(社会学)。略歴:東洋大学社会学部卒業。筑波大学社会科学研究科社 会学専攻修了。筑波大学助手、青森大学社会学部教授を経て現在に至る。
所属学会:日本社会学会、移民政策学会、オーラルヒストリー学会。
専門:国際社会学、地域社会論。博士論文では在日コリアンの帰化をテーマに執筆。現在は重国籍(複数国籍)に関する研究をすすめている。また青森では、地域社会を研究対象とし、地元の祭(ねぶた祭)を通じた地域住民のネットワークについて分析。また青森県の人口減少対策としての外国人住民の移住・労働に関しする研究を行っている。
主な業績:『日本の国籍制度とコリア系日本人』(単著、明石書店2006)、『マルチ・エスニック・ジャパニーズ:〇〇系日本人の変革力』(編著、明石書店2016)。『パスポート学』(編著、2016北海道大学出版会)、「日本人にはなれない、日本人であり続けることができない」『別冊環 24』(藤原書店2019)、「複数国籍容認にむけて―現代日本における重国籍者へのバッシングの社会的背景」『移民政策研究11』(移民政策学会2019)、「保守化する時代と重国籍制度 ~ナショナル・アイデンティティから視る現代日本社会の国籍観~」『エトランデュエ』(在日本法律家協会2018)など多数。
(詳細:https://researchmap.jp/terurio/


============

【多読味読<79>:猿橋順子著『国フェスの社会言語学:多言語公共空間の談話と相互作用』三元社 2021年7月20日 】

多文化研のみなさま

コロナ禍にあっていよいよオリンピック・パラリンピックの開幕ですね。
多文化研は、「協働・共創」「生老病死」「冠婚葬祭」「遊びの共創」「ウェルビーイング」などと、フェスティバルやお祭りや遊びからの多面的アプローチが得意で筆力があります。
先週、多文化研会員の猿橋順子さん(青山学院大学教授)からホットな学術書をご恵贈いただきました。

猿橋順子著『国フェスの社会言語学:多言語公共空間の談話と相互作用』三元社2021年7月20日
タイトルからアカデミックで、横書き230ページの単著で、新たな博士論文のような力作です。
まずは、その着眼点の拡がりに惹き付けられます。
このように<多読味読>は、読書の味わいを複眼的に深めるために4年前から多文化研の会員が上梓された書籍や論文・記事などをご紹介しております。

今回は、少しリラックスしてインタビュー形式で・・・

<川村千鶴子> 猿橋順子先生、素晴らしい着眼点ですね。
ぜひ、問題の所在から貴書の流れと結論をご教示くださいませ。

<猿橋順子>

多文化研の皆さま。

東京は4度目の緊急事態宣言の中、オリンピック・パラリンピックの開催となり、おひとりおひとり、置かれた状況や環境によって心の持ちようもだいぶ違う、隣の人がどう思っているかを確認することもままならない、そういう本当に不思議な社会になっていると感じます。このような時期に本を出すということは、不安に思うこともあったのですが、縁あって三元社さまが出版を引き受けてくださいまして、この時期を狙ったということではまったくなく、出来上がったタイミングが今だった、ということでございます。
多文化研で紹介させていただく機会を頂戴し、たいへんありがたく思っています。

<川村> タイトルがユニークですね

<猿橋> タイトルに付けました「国フェス」も「多言語公共空間」も「談話」も、あるいは耳慣れないという方もいらっしゃることでしょう。「国フェス」は私が作ってしまった言葉で、一般的ではないと思います。
ナマステ・インディアやブラジルフェスティバルなど、国名を掲げるフェスティバル、お祭りということです。
通常、お祭りの研究というのは、ひとつの催事に注目して、その発端から成長の過程、現状、将来展望など、いわば通時的に見ていくことが多いと思うのですが、今回、私は「代々木公園」という場所に注目してみました。重要なのは公共の場所、ということですが、そこに、入れ替わり立ち替わり、持ち込まれては撤去される、モノ、コト、ヒト、コトバ、ウゴキに注目したということです。

<川村> 特にご研究の独創性はどこにありますか?

<猿橋> 「談話」は、それぞれの場や状況に応じて使われがちな表現のセットと言ってもいいかもしれません。教室には教室特有の話し方が、お寺にはお寺の言葉の使われ方があります。国フェスにも国フェスという場に循環しがちな言葉遣いがあって、これを紐解いていくと人々が共有している価値や意味が見えてきます。たとえば「発見する」とか「~好き」とか。
レパートリーがたくさんあること、多様性が価値付けられていることは当然確認されます。ここで「使われがち」と言いましたが、談話は固定されたものではなくて、新たに紡ぎ出されていきます。そういう動的な面を捉えようとする姿勢が、談話研究が言語研究とはひと味違う、特徴のひとつと言えると思います。

<川村> 論点の展開と本書の流れをご紹介くださいませ。

<猿橋> ごく簡単にですが各章の流れを紹介したいと思います。
まず第1章で、ここで言う国フェスとは何か、国フェスを研究する意義について確認した上で、第2章では私が実際に実地調査を行った15の国フェスについて、その発端、今に至る経緯を簡単に紹介しました。

(ラオフェス=ラオスフェスティバル(2017年)撮影:猿橋順子)

第3章は、8つの国フェスのチラシの分析をしました。
第4章以降が実際の国フェスの会場で見られるモノ・コト・やりとりの事例研究になっています。
第4章では飲食・物販エリアで国名や都市名など、地名がどう用いられているか掲示物から抽出して分析しました。
第5章はステージで行われるトークショー。ここではアイ・ラブ・アイルランド・フェスティバルからの事例なのですが、通訳が介在して行われる複雑なやりとりを丁寧に見ていくということをしています。
第6章では、会場のあちこちで展開されているカンボジアフェスティバルならクメール語講座のような、即興的な教室空間みたいなものがフェスティバル会場に見られます。ここでは、タイプの異なる、でも参加型という意味で共通している事例を紹介して、その特徴と意義を論じました。

(カンボジアフェスティバル(2017年)提供:カンボジアフェスティバル実行委員会)

第7章は、ふたたびステージに注目して、これは台湾フェスタからの事例なのですが、タイヤル族のルーツをもつEri Liaoさんというとても素敵な多言語シンガーがいらっしゃいます。
彼女の実際の楽曲紹介の言葉を談話分析で見ていきました。Eriさんは、東京の台湾フェスタに集まる人に馴染みのある曲からはじまって、最後は台湾原住民の歌を、会場全体で歌うという風にいざなっていっていて、それがとても素晴らしかった。実際に私も会場で観客のひとりだったわけですけれども。それを学術的に分析してみた、ということです。
第8章では、昨年の11月に、感染症対策を講じて開催されたベトナムフェスティバルからの調査報告です。
「新しい日常」の催事を考える上で、参考にして欲しいことを、時期尚早かもしれませんが、今言えることとしてまとめました。

このように、国フェスという場の複雑系を、さまざまな観点を盛り込んで、違う観点から斬り込んで、編成してみた、というのが本書です。
また、本書はコラムに力を入れました。見開き2頁の短い記事風にしたのですが、国フェスを支える人たちの素顔とか、国フェス研究の面白さとかを感じていただけると思います。
お手に取っていただいて、ご感想もご批判も、忌憚なくお寄せいただけたら嬉しく思います。ありがとうございました。

目次
第1章 国フェスの社会言語学的研究――意義と方法
第2章 調査の手順と国フェス事例の概要――開催の趣旨と経緯
第3章 国フェスのチラシのマルチモーダル談話分析――A4紙一枚に凝集される国フェス
第4章 国フェス会場に展開される国名・地名――想像の国家空間
第5章 トークショーでの二言語使用――通訳が介在する相互作用
第6章 参加型の言語関連活動――文化資本としての当該国言語
第7章 音楽ライブでの多言語使用――多言語シンガーと観客の相互作用
第8章 感染症対策を講じた国フェスから見えること――「新しい日常」における国際交流イベントの課題と展望
第9章 結論――多様性が価値づけられる多言語公共空間形成過程への示唆

コラム
「私が国フェスに惹きつけられる瞬間:インド人フォークアーティストの所作」
「公式ホームページの多言語設定:複数言語による情報伝達と各言語の存在感」
「少数民族語の存在:ミャンマー祭りに見るシャン語・シャン民族の顕在性」
「総合司会者の役割:演目紹介、時間調整、会場案内、通訳、そして危機管理」
「実行委員会における当該国出身者の活躍:異文化間コミュニケーターの視点」
「ボランティアに期待される言語能力:当該国言語の使用域を広げる可能性」
「ある老舗エスニックレストラン店主にとっての国フェス:距離感と解放感」
「コロナ禍に思う、越境する音楽の力:韓国打楽器奏者、李昌燮さんの祈り」
「コロナ禍のベトナムフェスティバル:つながりを絶やさない留学生達の輪」

<川村> 実証的な社会言語学のアプローチ、ありがとうございました。ぜひ多文化研の皆様も読んでいただき、感想と意見交換をいたしましょう!!!

以下は猿橋順子さんのプロフィールです。

猿橋順子教授

猿橋順子(さるはし じゅんこ)
青山学院大学国際政治経済学部国際コミュニケーション学科教授。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科国際コミュニケーション専攻博士後期課程修了。博士(国際コミュニケーション)。専門は社会言語学、言語政策研究。特に移民にとっての言語問題の克服、エンパワメントとアイデンティティ、受入れ社会の言語対応に焦点をあてて研究を行っている。近著に『二世に聴く在日コリアンの生活文化――「継承」の語り』(橋本みゆき編, 髙正子、柳蓮淑との共著, 社会評論社, 2021年)がある。

============

【多読味読 <78> 公益社団法人 国際日本語普及協会発行 機関誌『AJALT』44号定価880円】

『AJALT44号』(公益財団法人国際日本語普及協会)

◆(川村):充実した貴協会機関誌『AJALT44号』楽しく拝読いたしました。特集「文語の力再発見―表現のスパイス」(俳人)黛まどかほか、毎回読み応えのあるインタビュー記事が満載ですね。コロナ禍で、編集作業も大変だったと思います。完成おめでとうございます。

✤(関口):ありがとうございます。
公益社団法人国際日本語普及協会の関口明子でございます。
機関誌AJALTは今号で44号です。1977年に社団法人として設立し、丁度今年度で44年です。初年度から年に1回発刊のペースで一度も抜けたことがありません。

関口明子AJALT理事長

◆(川村)オンラインの活用によって多文化研もロンドンやニューヨーク、ジュネーブ、モスクワ、アムステルダムとも気楽に交流できるようになりました。オンラインは日本語教育の世界にもどんな変化をもたらしましたか?

✤(関口)AJALTも大きく変わりました。生涯研修として月に2回会員研修を実施しておりますが、その研修のオンライン化によって、ベルギーやハワイ滞在の会員がそこから参加できました。また、教材開発の委員が途中ご主人の仕事の関係で南米に行ったのですが、今まででしたら帰国するまで数年間休会ということになります
が、 今回は教材開発会議に定期的に出席して、仕事を継続しています。また、学習者はアフリカやオーストラリアから来日できず本国で日本語レッスンを開始し、その後来日できたら日本で学習を継続するというケースが増えています。

◆(川村)AJALTの理事長として、今後の抱負を語っていただけると幸いです。

✤(関口)AJALT自身は外国の方々を対象としている組織ですから、今回のコロナ禍は真正面からの大きな痛手を受けております。入国がストップの状態ですから年間を通しての大きな事業が軒並み中止になっております。しかし、上述しましたように、オンラインになったからこそ広がった多くのグローバル化現象を活用し。努力していこうと思っています。
また、40年継続して携わっている難民を含む外国人定住者の人々が日本の人々以上にコロナ禍で大変な思いをしています。また、ミャンマー出身の難民や定住者の現状も見過ごせません。課題は多くあります。
まず、そのようは定住者の状況を知ること、そしてそれをできるだけ多くの人々に知ってもらうことだと考え、その普及活動を進めています。
コロナ禍で世界中が同じ苦しみの中にいます。今こそ実は世界が一緒に平和のために一つになって協力する方向を創るチャンスなのではないでしょうか。

◆(川村)政府は7月12日から東京都に4度目の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を適用するそうですね。感染対策と日本語教育を両立さえる協働・共創の力を感じました。

ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。

川村千鶴子

============

【多読味読<77>:川村千鶴子・宣元錫 共編著『異文化間介護と多文化共生』明石書店】

皆様

7月7日、七夕飾りには、どんな願い事をなさいますか?
無理のない介護ケアと痛みのない安らかな日々を祈りました。
パンデミック激動の世界で “介護崩壊”の危機が報道されています。
異文化間介護にも気づき愛が必要です。

✤『多文化共創社会への33の提言―気づき愛Global Awareness』都政新報社2021
★介護人材―外国人介護士との協働の道のり 二文字修(75ページから)
★外国人高齢者への介護支援―アフターコロナを見据えた協働と強調  李錦純(80ページ~)
の介護人材と介護支援に関する過去・現在・未来に関するお二人の論考が光彩を放っています。高齢化社会を考える基礎として、ぜひぜひ、ご高覧くださいませ。
思えば、介護地獄・介護殺人・介護自殺といった言葉は、ずっと以前からありましたね。多文化研が、ジェロントロジーに取り組んだのは2000年代。 覚えていらっしゃいますか。
多文化社会を調査研究してきた8名の執筆者たちが多民族・高齢化社会の課題を浮き彫りにし、一冊の本に結実しました。宣元錫・川野幸男・渡辺幸倫・李錦純・堀内康史・藤田美佳・椙本歩美と川村の取り組みでした。

✤ 川村千鶴子・宣元錫 共編著『異文化間介護と多文化共生 誰が介護を担うのか』明石書店(2007年)をご紹介します。

http://www.akashi.co.jp/book/b65526.html

異文化介護と在日外国人の高齢化を見据え、多文化社会の課題を明らかにし、ケアと介護の本質を考察し、老後を支えあう協働・共創社会に向けた課題を提起しています。

まえがき

第1章 異文化間介護の視座(川村千鶴子)
 1 多文化社会の高齢化と問題の所在
 2 異文化間介護の背景
 3 なぜ異文化「間」介護なのか
 4 異文化間介護の研究課題

第2章 看護・介護分野の外国人受け入れ政策とその課題(宣元錫)
 1 受け入れ政策の動向
 2 政策動向の背景
 3 受け入れ政策をめぐる国内の議論
 4 政策のゆくえと課題

第3章 在日コリアンの高齢化とエスニシティ(川野幸男)
 1 日本の年金制度における在日コリアン
 2 在日コリアンの高齢者問題への対応と身分的名誉
 おわりに――エスニック集団としての在日コリアン

第4章 在日コリアン高齢者の介護の現状と課題――在日コリアン高齢者への実態調査から(李錦純)
 1 在日コリアン高齢者の人口の動向と歴史的背景
 2 在日コリアン高齢者と介護保険
 3 在日コリアン高齢者を対象とした実態調査
 4 今後の課題・展望

第5章 中国帰国者の高齢化――帰国二世の視点から見る年金・介護保険の現状と課題(藤田美佳)
 1 中国帰国者の高齢化と生活実態
 2 年金――受け取れた父と受け取れなかった母
 3 介護保険――運営上の盲点
 4 多文化社会における高齢化と異文化間教育――生活者の視点から

第6章 高齢化する外国人の社会保障、その現在と未来――新宿区のデータから(堀内康史)
 1 新宿区の現状
 2 新宿区在住外国人の社会保障への加入状況
 3 健康保険への加入状況と各属性の関係
 4 年金への加入状況と各属性の関係

第7章 介護者送り出し国フィリピンの事情――誰と介護を担うのか(椙本歩美)
 1 統計から見るフィリピン海外就労の状況
 2 フィリピン海外就労の歴史
 3 海外就労の背景――なぜ、海外に行くのか
 4 日本へのフィリピン人介護士導入をめぐって

第8章 海外で老後を過ごす可能性――介護・医療を目的に移動する人々、タイ王国の事例から(渡辺幸倫)
 1 介護・医療を目的に移動する人々
 2 シルバー・コロンビア計画の失敗
 3 政策としての定年者受け入れ(タイ王国の場合)
 4 タイの日本人向け介護施設
 5 タイの日本人向け医療施設
 6 介護つき旅行

多読味読では、一冊一冊の本に真摯に向き合ってきました。最近、長い巣ごもり生活には「読書」が強く見直され、出版業界は<読書回帰の流れ>に目を見張るものがあると語っておられます。
多読味読<77>は七夕にちなんで異文化間介護の幸せを祈ります。

川村千鶴子

============

【多読味読<76>:アイユ特別対談「共創から生まれるウェルビーイング ー外国人は、単に支援される「客体」ではないー」】

『アイユ・2021年6月号』(人権教育啓発推進センター)

「アイユ」という言葉をご存知ですか?
アイユは、ペルーの先住民族の言葉で,ケチュア語で「人々の集まり」を意味しています。
公益財団法人 人権教育啓発推進センターが発行する月刊誌の名前として有名ですね。多文化研は、20年以上のさまざまな交流があります。
「多文化共創とは何か」ついて執筆依頼をいただき、できるだけ多文化共創の実態を分かりやすくするために論文ではなく、当事者との「対談形式」で表現してみました。信頼で結ばれたラビ・マハルザン先生との対談です。
カトマンズのキリティプルから来日したラビ先生のオーラル・ヒストリーは、一冊の本になるような迫力と魅力があります。エベレストに登ったり、ヨモギのお灸をしたり、責任感をもって自ら人生を切り拓き、ネパール人コミュニティのリーダーとなり、最愛のラスミラ夫人とともに自己実現を果たしています。

ラビ・マハルジャン、ラスミラ・マハルジャン夫妻

✤アイユ特別対談「共創から生まれるウェルビーイング ―外国人は、単に支援される「客体」ではない」

ご高覧いただけると幸いです。
ラビ先生といっしょにご感想をお待ちしております。

川村千鶴子

============

【多読味読<75>:代表編集・川村千鶴子『多文化共創社会への33の提言:気づき愛Global Awareness』都政新報社】

—————————-

多文化研の皆様

『多文化共創社会への33の提言』都政新報社、を一通り拝読したところです。
今回の提言集は提言されている30名の執筆者に長年の実践と思索の土台があり、各章がコンパクトな割に大変説得力のある書物になっているように思います。
万城目先生の提言にあるように、すでに日本にも地域や企業にはかなりの経験とノウハウが蓄積されており、受け入れ現場にあるそれらの知恵を制度設計と運用に生かしていくべき時期にあると思いました。

私が住む清瀬市にはまだ農地が多く、道端に無人有人の野菜スタンドをよく見かけるのですが、つい最近、近くの公園の傍にある有人野菜スタンドで春野菜を買った際、パウチ菜のプレートに「ウチで働いている実習生が作ったものです」と書いてありました。そこに二人いたうちの一人がタイから来ている実習生ということで思わず声をかけてしまいました。

コロナはいずれウイズコロナからアフターコロナの時期に移行すると思いますが、構造的な少子化に直面する日本にとってwith other cultures ,with multiple cultures の時代はますますその密度を増していきます。

宗教的な自由度の高い日本は外国人受け入れの量的な適合だけでなく、受け入れの質においても世界の範となるレベルを是非実現してほしいと願っています。
多文化研の益々の発展を願っています。

川村先生

 「はじめに」にある「多文化な路地裏が恋しくなる」、ということば、実に素敵な表現と感服しました。表通りだけではない路地裏がさりげなく落ち着いた多文化の要素を含んでいる。
理想はここにあるという気がします。

            貫隆夫

============

【多読味読<74>:川村千鶴子「パンデミックの恐怖と戦争の苦境の中で」『国際人流3月号』入管協会】

多文化社会研究会
会員の皆様

桜の開花の便りが届く季節となりました。
多文化社会研究会の皆様におかれましては、ご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、本日は、入管協会発行『国際人流』の3月号の特集をお届けいたします。
今年度担当してまいりました連載の最終回(12回目)となります。
川村千鶴子先生による論考です。
新型コロナウイルスの感染拡大に直面する今、100年前の歴史から、私たちは何を学ぶのか?
会員の皆様に、以下、多読味読とあわせて、添付の論考をご案内させていただきたいと存じます。

           事務局 万城目正雄


【多読味読<74>:川村千鶴子「パンデミックの恐怖と戦争の苦境の中で」『国際人流3月号』入管協会】
Co-Creation & Co-Working
人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」⑫最終回
「パンデミックの恐怖と戦争の苦境の中で」
『国際人流3月号』2021年3月

(『国際人流』2021年3月号)

感染者数5億人と推定されるパンデミック(スペイン風邪)と
戦争(第一次世界大戦)の悲壮感の中で、人々はどのように
苦境と悲しみを乗り越えたのだろうか。
共創・協働の歴史から私たちは何を学ぶのか?
衝撃の6枚の写真とグラフ(インフルエンザによる死亡者数の月別推移1917~1921)
をぜひ見てください。PDF(精細版)をご高覧ください。
収容所の中で繰り広げられた日本語教室の写真と
オーケストラの写真、スペイン風邪による死者の埋葬、
ミクロネシアへの孫たちの再会の写真をご覧いただけると幸いです。
特別な印刷技術で100年前の写真の精細版をつくってくださいました。

目次
1. 写真に問う 「いつ?どこで?だれが?何をしているの?」
2. 多文化の織りなす日本語教室
3. 共に働き憩う時空の創造―共創・協働の「安心の居場所」―
4. 1918年、猛威をふるった「スペイン風邪」
5. 「ドイツ兵に思いっきり、遊んでもらいなさい」
6. 水半球・オセアニア世界への旅と伝承
7. いかにして社会の分断を防ぐことができるのか。
8. 活路を拓く
おわりに
参考文献・謝辞
川村千鶴子

================

【多味多読<73> 山脇啓造・上野貴彦(著)『自治体職員のためのインターカルチュラル・シティ入門』発行:欧州評議会 制作:株式会社明石書店】

多文化社会研究会の皆様
川村先生

いつもお世話になっております。クレアの藤波です。
すでに関係の皆様からもご案内があったかとも存じますが、下記セミナーについて、クレアが広報等協力しておりまして、ご案内申し上げます。
自治体向けインターカルチュラルシティの入門書について、これまで日本語での解説書がなかったところですが、その説明もされる内容となっております。
25日セミナーでは、特に教育・多言語情報環境等について海外の取組が紹介される予定です。お時間ありましたら、ぜひご参加ください。

入門書インターカルチュラル05.indd (coe.int)

◇欧州評議会オブザーバー加盟25周年記念の開催について◇

日本が欧州評議会(CoE)にアジアからの唯一のオブザーバーとして参加を果たしてから25周年となることを記念し、オンラインイベントが開催されます(クレア後援)。
ぜひご出席ください。

25周年記念行事 | (emb-japan.go.jp)

●多文化共生セミナー「インターカルチュラル・シティと日本―浜松市と神戸市の取り組みから考える―」

100158229.pdf (emb-japan.go.jp)

日時:2021年3月19日(金)16:00〜18:00
会場:BlueJeansウェブセミナー

参加申込:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd80Oj6__r3F0mUXQbCXK9K8iQYMWCNdWSbCgA5g1HIGlcEHw/viewform

●Webinar on Intercultural Cities in the Asia-PacificLocal ―experiences, regional cooperation-

100158232.pdf (emb-japan.go.jp)

日時:2021年3月25日(木)17:00~19:30
会場:BlueJeansウェブセミナー

参加申込:https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSff4eWqCN_IeghSoXl7toCzOx4Q3K-K6aZ05buk5Rwu5JBuQA/viewform

藤波香織
FUJINAMI Kaori

一般財団法人自治体国際化協会 多文化共生課長
東京都千代田区麹町1-7 相互半蔵門ビル6F
tel: 03-5213-1725 (direct) fax: 03-5213-1742
email: k-fujinami@clair.or.jp
http://www.clair.or.jp/

================

【多味多読<72> 橋本みゆき(編著)猿橋順子・髙正子・柳蓮淑(著)『二世に聴く在日コリアンの生活文化――継承の語り』社会評論社】

新刊『二世に聴く在日コリアンの生活文化――継承の語り」のご紹介

多文化研のみなさま

なかなか収束の見えないコロナ禍ではございますが、暖かな日差しに春の訪れを感じる季節となりました。
お変わりなくお過ごしでしょうか。
この度、私が共著者として加わらせていただきました学術書『二世に聴く在日コリアンの生活文化――継承の語り』が社会評論社より刊行されました。
簡単にご紹介させていただきます。

橋本みゆき(編著)猿橋順子・髙正子・柳蓮淑(著)
『二世に聴く在日コリアンの生活文化――継承の語り』社会評論社(定価 2,800円)

2014年から取り組んで参りました、11人の在日韓国・朝鮮人二世のライフストーリー・インタビューを元に、社会学者の橋本みゆきさん、文化人類学者の髙正子さん、ジェンダー研究がご専門の柳蓮淑さん、社会言語学を専門とする私(猿橋順子)が、それぞれの観点を持ち寄って執筆いたしました。
2020年度科学研究費補助金の研究成果公開促進費の助成を受けて刊行いたしましたが、第1部は一人ひとりの生活文化継承の語りを物語風にまとめてございます。生活文化の継承とは、料理、家事、育児、音楽、ことば、祖先祭祀をはじめ、
価値観や関係性、役割認識なども含めております。

一世の親から、二世の子へ。何が、どのように伝わったと受け取る側が認識しているのか。
いつそのことに思いを馳せるのか。認識は時間の経過と共に変わるのか。
これらの親から継承したモノ、コトの語りは、在日韓国・朝鮮人二世の語り手、一人ひとりの生に触れることになろうかと思います。加えて、生活文化の継承の語りは、移住者として暮らす人びとはもちろん、代々同じ土地で暮らしている人びとにとっても、どこか共感できる側面があったり、当たり前だと思っていたことが、実はそうではないといった気付きを呼び起こしたりする瞬間があるのではないかな、と期待しております。

ひとりでも多くの方に手に取っていただき、読後感などお聞かせ願えましたら、嬉しく思います。僭越とは存じつつ、拙著をご紹介させていただきました。

猿橋順子 (青山学院大学・国際政治経済学部・国際コミュニケーション学科・教授)

================

【多味多読<71> 加藤丈太郎「『にっぽんのものづくり』をベトナム人特定技能人材と共に―有限会社小穴鋳造所(山梨県甲府市)の取り組みから―」『国際人流』2021年2月号】

多文化研の皆様

大阪大学の佐伯です、本日は多文化社会研究会が2020年4月から12回シリーズで担当している公益財団法人入管協会『国際人流』の連載企画「人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」」に早稲田大学の加藤丈太郎先生がご執筆された最新号についてご紹介いたします。

———–以下、紹介————-
 第11回目となる今回は、山梨県甲府市の有限会社小穴鋳造所における技能実習生と特定技能人材の取り組みについて考察が行われている。鋳物業は1,500度程度の熱で鉄を溶かすなどの作業が行われるため夏場は特に熱く、重い鉄の運搬などで体力を必要とする仕事であり、求人をかけても人がなかなか集まらず、離職率も高いという課題を抱えていた。そこで2007年から技能実習生の受け入れを開始し、現在は全従業員11名のうち日本人は4名で、ベトナム出身の技能実習生4名と特定技能3名が重要な役割を果たしている。

まず印象的だったのは、小穴鋳造所の小穴明彦社長が毎年ベトナムを訪問し、技能実習生の両親だけでなく、配偶者と配偶者の両親も訪問して感謝の気持ちを伝えるなど、技能実習生の家族を非常に大切にしていることである。本稿で紹介されているファップ氏が2015年に同社での3年間の技能実習を修了してベトナムに帰国した後も関係性が続き、特定技能制度が創設された2020年3月に特定技能人材として再来日することになったのは、技能実習修了から5年を経てなお、両者が強い信頼関係で結ばれていたことの証左であろう。本稿でも紹介されている通り、特定技能人材の転職・地方から都市部への流出を恐れ、様子見をする企業も少なくない。しかし、同社のような職場から人材が流出するリスクは低いと思われ、制度設計も重要であるが、経営者の人柄や企業風土こそが人材定着の重要な規定要因であることを本稿は再認識させてくれる。

 またベトナムで生活を送る家族のことを大切に思う小穴社長だからこそ、「ベトナムの家族を大切にするために、(技能実習と特定技能の)10年間で学んだ技術を日本ではなく、ベトナムで活かして欲しい」という思いに至っていることは示唆に富んでいる。小穴社長が採用してきた人材の大半が自らの世帯を既に持っていることもあり、「家族のため、子どものために頑張る」という明確な動機が同社のスタッフには存在する。加藤先生が原稿内でも述べられている通り、特定技能2号の業種拡大についての議論も行われる中で、来日する技能実習生と特定技能人材だけでなく、彼ら・彼女らの家族全体にとって幸福な制度設計とは何かを本稿は問いかけている。

本稿を通じ、多文化研内外でさらに議論が深まることを確信し、是非とも皆様にご一読いただきたい。

====================

【多味多読<70> 『A transnational critique of Japaneseness』河合優子 Lexington Books (Rowman & Littlefield, 2020)】

河合優子
(立教大学 異文化コミュニケーション学部 異文化コミュニケーション学科教授)

多文化研のみなさま ご無沙汰しております。
立教大学異文化コミュニケーション学部で教えております河合優子と申します。

先日、拙著A transnational critique of Japaneseness: Cultural nationalism, racism, and multiculturalism in Japanが米国Lexington Books (Rowman & Littlefield社)から出版されましたので、このMLでも宣伝をさせていただければと思います。
https://rowman.com/isbn/9781498599016Google books
で少し内容を見ることができます。


大学図書館などにいれていただけると大変うれしく思います。 
この本は、多文化主義と人種主義を考える際に、「日本人」の意味を問い直すことが必要であるという問題意識に基づいています。「日本人」の意味に関わる日本の人種概念(「人種」「民族」)を西洋の人種概念との関係で歴史的に捉え直すとともに、多様な「他者」を使いながら(西洋、アジア、英語、アメリカ、中国、韓国、日系アメリカ人、日系ブラジル人)、2000年代以降のコミュニケーション実践でどのように「日本人」の意味が構築されてきたかを分析しています。
 
<目次>
Introduction: A Transnational Critique for a Multiculturalist Japan
Chapter 1: Japaneseness, Western and Japanese Concepts of Race, and Modalities of Racism
Chapter 2: Neoliberal Nationalism and Japaneseness
Chapter 3: Remembering Japanese Americans and Japanese Brazilians for Japaneseness
Chapter 4: Using China and Korea for Japaneseness: “Hate Books,” History, and the Grammar of Japanese Racialized Discourse
Chapter 5: Entering the West and Encountering Asia: Trans-East Asian Friendships Made in the WestConclusion

またみなさまにお会いできる機会を楽しみにしております。

河合優子

====================

【多味多読<69>マハルザン・ラビ「在住ネパール人のコロナ禍の影響による新たな課題と取り組み」『国際人流』2021年1月号】

万城目正雄
(東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程准教授・多文化研事務局長)

多文化社会研究会が2020年4月から12回シリーズで担当している公益財団法人入管協会『国際人流』の連載企画「人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」」の第10回目の論考を紹介します。

『国際人流』2021年1月号

今回は、マハルザン・ラビ先生が担当された「在住ネパール人のコロナ禍の影響による新たな課題と取り組み」です。在住ネパール人の視点からコロナ禍の影響・課題が論じられています。
ラビ先生の論考は、「在住ネパール人の現状」、「コロナ禍でのネパール人コミュニティの取り組みと日本の政府・自治体・地方団体の対応」、「コロナ禍で出てきた新たな課題」の3つの項目から構成されています。

「在住ネパール人の現状」では、急増した日本在住ネパール人の背景と現状が説明されています。2019年末の在住ネパール人は96,824人。国別でみると中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルに続いて第6位。家族滞在、留学生の在留資格を有する方の占める割合が高いことなど、急増する在住ネパール人について、データに基づき解説されています。興味深い点は、ネパール人急増の背景が「日本は他の欧米先進国よりもビザが取りやすい、と捉えられているうえ、アルバイトや就職が可能という意見が多い」と説明されていることです。そして、実際に来日された方々の現状についての説明が続いています。多額の借金を支払って来日する留学生の現状、調理師として、「技能」の在留資格を得て就労するネパール人の厳しい就労環境、週28時間までに限定されている留学生や家族滞在で滞在する方々の現状など、日本に在住するネパール人が抱える現状と課題が説明されています。こうした状況を踏まえ、ラビ先生は、日本語が話せない在住ネパール人の方々への支援の必要性を指摘しています。

次に、「コロナ禍でのネパール人コミュニティの取り組みと日本の政府・自治体・地方団体の対応」が解説されています。多民族国家であるネパールの方々のコミュニティを通じた支援、日本政府、自治体などが発信したネパール語で情報について、具体例をあげて説明されています。その上で、ラビ先生は、「現在の自治体や政府が外国人コミュニティの存在と彼らの活動に関心を持ち、多言語での情報提供に力を入れていることといえるだろう」とその取り組みを評価しています。同時に、「情報発信だけでは在住外国人の悩みやニーズに対応できるかを深く考える必要がある」という問題も提起されています。

そして、最後に「コロナ禍で出てきた新たな課題」の中で、①法的な悩みについて相談できる窓口、②多言語での情報提供、③医療機関での通訳の3点の課題を指摘し、必要な支援とは何かについて、とりまとめています。

急増するネパール人がコロナ禍で抱える問題や支援を検討する際に参考となる貴重な論考です。是非、ご一読いただきたいと思います。

万城目正雄
(東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程准教授・多文化研事務局長)

====================

【多読味読<68>中本博皓著『太古の昔 ゾウの楽園だった日本列島』(株)税務経理協会2020年12月】

多文化研のみなさま
中本博皓先生 (多文化研名誉会長、農学博士。大東文化大学名誉教授)

40万年も前から日本列島に棲みついていたナウマンゾウの長年にわたるご探究をこのたび、一冊の立派な本にまとめられ、ご高著をご恵贈賜り、心から感謝申し上げます。

『絶滅したナウマンゾウのはなし 太古の昔 ゾウの楽園だった日本列島』

このパンデミックを奇貨として、地球の歴史、人類の歴史に思いを馳せる日々を送ってまいりました。本書から人類は、自ら「種」の絶滅の危機と常に向き合い、闘いながら生きていかなければならない状況にあり、それもまた、地球温暖化という現世の気候変動によるストレスの一つだということを忘れてはならないことを深く学びました。
それにしても野生ゾウの一日の移動域は、すごい広さですね。なんと200キロ平方メートル。リス氷期におえる海水準の低下で、北方の海峡が陸地化して、ナウマンゾウは、アジア大陸からサハリンへ、そして北海道にも移動していた忠類生息論に繋がる可能性も否定できないと書いておられます。

ナウマンゾウなどの大型獣の絶滅の原因には、自然環境の物理的ストレスや人類との出会いなど生物的ストレスが考えると書いておられます。
生物的なストレスには、直接に与えられる影響だけでなく、ウイルスから昆虫までさまざまなストレスが原因で種の絶滅を招く可能性もあるのですね。

かつては、中本先生を中心に、多文化研の環境問題研究者は、海面の上昇から海抜の低いツバルなど太平洋島嶼国の深刻な問題に太平洋調査をして、20年ほどになります。
ケニアなどアフリカ大陸ではサバクトビバッタという昆虫の大群が飛来して、砂漠化に輪をかける事態を引き起こしているのですね。

人類を震撼させている新型コロナウイルスも、一つ間違うと人類という種の絶滅をもたらしかねない。重ねて言えば、人類は、自ら「種」の絶滅の危機と常に向き合い、闘いながら生きていかなければならない状況にあり、それもまた、地球温暖化という現世の気候変動によるストレスの一つだということを忘れてはならないと思いました。

ナウマンゾウの歴史から コロナ時代を生きる知恵と史実に根ざす柔軟な視点を学ばせていただいております。

ここに新しい会員の方々のために中本博皓(ひろつぐ)名誉会長をご紹介申し上げます。中本先生は1934年5月1日に台湾でお生まれになりました。東京農大大学院農学研究科の博士課程後期課程を修了されました。関東大学ラグビーフットボール連盟会長、大東文化大学の経済学部長や図書館長を歴任なさっておられました。私は、幸運にも大東文化大学環境創造学部でご一緒させていただきました。

主なご著書は、『キリンビール』明治書院、『現代日本製糖業の発展と分析』新生社、『現代の消費と消費者行動』税務経理協会、『グローバル化時代を迎えた日本経済と外国人労働者政策』税務経理協会などが有名です。

80年代からトンガ留学生と「トンガ文化研究会」を立ち上げ、1989年「多文化社会研究会 Global Awareness」発足時からの会長になっていただきました。経済学、環境学、移民政策のご指導をいただきました。その後、多文化研が32年間と持続可能な研究会になったのは、一重に中本先生の崇高なあたたかいご人格のお陰と感謝しております。

川村千鶴子

Emeritas Prof. Dr. Chizuko Kawamura

====================

【多読味読<66>「外国人実習生 企業まかせ」朝日新聞2020年12月2日】
【多読味読<67>「気がつけば『移民大国』The Asahi ShimbunGLOBE12月6日】

多文化社会研究会のみなさま

朝日新聞 機動特派員 特別報道部員
織田一(おだまこと)様

「日本で働く外国人技能実習生の急増を受けて朝日新聞社と東海大学の万城目正雄・准教授(国際経済)は、地域住民に占める実習生の割合が高い全国100自治体の首長に共同アンケートをした。・・・・」

多文化研の川村千鶴子です。

12月2日の2面の全面びっしりを使って、その実態「水産業の村:実習生は必要」を詳細に伝えてくださってありがとうございました。万城目先生のコメント「欠かせぬ存在共生主導して」も拝読しました。
ご連絡があったとき、朝日新聞なら、きっと織田さんに違いないとピンときました(笑)。
JICAのシンポジウムの最後に私は、(勇気を出して)技能実習制度に関して「もっと詳細を調査して、成功事例もあるし、バランス感覚のある記事を発信していただきたい」と報道関係者の方々にお願いをしたことを覚えています。そうしたら織田さんが反応してくださり、多文化研にもご出席いただき、そして、今日はGLOBE特集に「気がつけば『移民大国』織田さんの歴史を振り返っての「もし」の論稿、拝読しました。
多文化研では何度か国会議員の方々にご講演いただいたこともあります。講演の最後に「今日の話は移民政策と誤解されませんように!」と締めくくられたことを思い出しました。GLOBEの9頁目に「苦悩する先進国」として「岐路に立つ多文化主義の国スウェ―デン」と「移民追い出し、増えた密航者@英国」、13頁には「夜の街 営業再開に厳しい試験 シンガポール流のコロナ対策」なども興味深く拝読しております。

在留外国人数は、2,885,904人(2020年6月末)、在留資格は「特定技能」を含めて29種類。永住者に続いて、技能実習、特別永住者、と続いています。新大久保駅の工事現場でインドネシアからの技能実習生らと歓談したことを思いだしております。

ぜひ、取材の裏話などまた聞かせてください。

多文化研のみなさま

12月10日は、世界人権ディです。
世界人権宣言の歴史を振り返っております。
多文化研MLには、お気軽にご感想をお寄せくださいませ。

川村千鶴子

====================

多読味読<65>山本弘子「コロナ禍の日本語学校への影響と課題」
『国際人流12月号』公益財団法人入管協会】

山本弘子校長
多文化社会研究会のみなさま

多文化研は、今年も4月から新しく下記の新連載名で、リレー式連載を担当しております。
Co-Creation & Co-Working 人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」

第9回の12月号は山本弘子校長の「コロナ禍の日本語学校への影響と課題」です。

コロナ感染拡大の最中、外務省、文科省、入管庁に留学生の入国制限緩和に向けて要望書を出され、日本語学校の管理体制整備にも尽力されてきました。
日本語学校は、学校といえども学校法人、株式会社、個人、財団法人など様々な設置形態が混在している。だから主管官庁が明確ではなく、国からの通達が直接来ないということも大きな課題だったと伺っていました。
弘子校長は、新大久保に1987年にカイ日本語スクールを創業され、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災など何度も何度も経営的苦境を乗り越えてこられた。定員数280名、常時40ほどの多国籍環境を維持してこられた優れた経営者+教育者でもあります。そしてコロナの襲来と緊急事態宣言を受け、34年間の経営者としての視点とオンライン授業への移行などを詳しく分析され、教育価値の再定義を
論じておられます。本日、敬意をもって拝読いたしました。

弘子校長の凄いところは、コロナ禍下における留学の意義を問い直し、体験型授業の提供を実施され、危機をチャンスに変える勇気と行動力があるところです。
私も参加したので、よく見るとZoom講習会のマスク姿の私の写真も掲載されています。(笑)

多文化研のみなさま、ぜひ「国際人流12月号」をご一読くださいませ。
いまコロナに闘っているのは、飲食業ばかりではないことがよく分かり励まされる貴重な論考です。

敬意をもって

川村千鶴子

========================

【多読味読<64>:駒井洋監修、小林真生編集『変容する移民コミュニティ-時間・空間・階層』明石書店、2020年 & 第165回多文化共創フォーラム21】

多文化社会研究会の皆様

気温の急激な変化に戸惑う今日この頃ですが、皆様にはお変わりなくお過ごしでしょうか?

先日ご案内の通り、今週土曜(10月10日)午後2時より、日本の移民コミュニティを31の事例から分析した『変容する移民コミュニティ-時間・空間・階層』出版記念の多文化共創フォーラムが、オンラインで開催されます。

https://tabunkaken.com/

今回の多読味読64では、10日の発表者の2名から、この本の執筆箇所の紹介をお送りします。(番号は本の章-節です)

1‐7「ロヒンギャ――群馬県館林市から東京、バングラデシュへ」加藤 丈太郎(早稲田大学アジア国際移動研究所)
在日ロヒンギャは250名程度いるとされ、群馬県館林市を中心にコミュニティを形成しています。
単身男性が工業に従事していた過去から、現在では女性の社会進出、第3世代の誕生、バングラデシュに避難した同胞への日本からの支援など変化が見られます。
研究会ではこの度発刊された書籍に基づきコミュニティの変遷をご紹介します。

2‐4 「中国人留学生―1980年代から現代までの変化とコミュニティの特徴  佐藤由利子・徐一文(東京工業大学)
1980年代から現在に至るまで、中国人留学生は日本留学生最大グループですが、中国の経済発展とインターネットの発達に伴い、中国人留学生の意識とコミュニティのあり方も変容しています。本稿では、過去20年間の中国人留学生とコミュニティの変化を、4つの時期に区分して分析しています。

5‐2 「ベトナム人留学生-中国人留学生と比較した特徴とコミュニティの役割」 佐藤由利子・フン・ティ・ハイ・タン(東京工業大学)
2011年から2019年にかけて、ベトナム人留学生は14.4倍に急増しました。本稿では彼らの増加の背景と、中国人留学生と比較した特徴、コミュニティの役割について、時間・空間・階層の観点から分析しています。

10日の多文化共創フォーラムでは、上記2名のほか、3名の執筆者と本の編著者の小林真生さんが登壇します。
プログラム・申し込み方法は下記のとおりです。

日時:10月10日(土)午後2時 ~5時

プログラム:

開会の挨拶 川村千鶴子(多文化社会研究会理事長)
司会:佐藤由利子(東京工業大学)/加藤丈太郎(早稲田大学)

1.「本書の紹介、企画・構成意図」小林真生(立教大学)
2.難民のコミュニティ
 インドシナ難民―現在・過去そして展望 長谷部美佳(明治学院大学)
 ロヒンギャ―群馬県から東京、バングラデシュへ 加藤丈太郎
3.高度技能者、留学生
 韓国人ニューカマー―ミドルクラスの移動と定着 宣元錫(中央大学)
 トンガ出身者―ラグビーを職業とする人々 北原卓也(早稲田大学)
 中国人留学生―1980年代から現代までの変化とコミュニティの特徴 佐藤由利子 
 ベトナム人留学生―中国人留学生と比較した特徴とコミュニティの役割 佐藤由利子
4.「日本の移民コミュニティ全体の傾向」小林真生

質疑応答

参加方法:下記のZoomのサイトで、本イベントへの参加を事前登録してください。

https://zoom.us/meeting/register/tJAvd-GvpzwrE9xVO7ug88OcSwhbfhZIleKi

登録後、Zoomミーティング参加に関する情報の確認メールが届きます。

皆様のご参加をお待ちしています!!!

PS.『変容する移民コミュニティ-時間・空間・階層』の詳細については、下記URLをご覧ください。

https://www.akashi.co.jp/book/b525012.html

多文化研・企画担当
佐藤由利子

====================

【多読味読<63>:大野勝也「日本における零細家主形成プロセスと課題―外国人に対する住宅供給時の葛藤をめぐってー」『ソシオロジクス第42号2020』日本大学大学院社会学研究会】

Formation of micro landlord in Japan-Focusing on conflict with tenant from abroad-Society for the Study of SociologyGraduate School of Nihon Universitycid:174d82b272b4ce8e91

多文化研のみなさま

よく多文化研の魅力は、国籍・年齢・世代・所属・専門分野を問わず対等な人間関係と信頼関係を培っていることと言っていただいています。学部生時代から、多文化研に毎回必ず参加して的確な質問や鋭い意見を積極的に述べて、議論を盛り上げている大野勝也さん(日本大学大学院文学研究科社会学専攻博士前期課程)の存在は大きいですね。学術誌への寄稿論文を送ってくださいました。

<多読味読63>は、トーク形式で大野さんの生き生きとした生の声をお伝えします。

Q(川村):凄い!論文を拝読して感激しました!住宅政策の歴史を精査し、零細家主の登場と実態零細家主からみる住宅困窮者と住宅政策の課題、そして、日本における外国人居住と続きます。賃貸住宅にける差別問題に着目しつつ、ハウジング議論が今後の課題となりますね。まず、大野さん、当初の問題の所在はどこにあったのか、強調したいところを教えてください。

A(大野):ありがとうございます。私が最初の問題意識は、昨今から叫ばれている少子高齢化社会において人口減少は避けて通れない問題です。それに伴い、労働力不足、高齢者のケア問題など社会課題も発生している現状です。

Q(川村):グローバルな人の移動とケアが発動する居場所が注目されてきました。ケアと気づき愛は、格差を是正するもとになっていますね。さてここではサブリースのことも問題になっていますが、今後はどのように展望しますか?

A(大野):サブリースというのはそもそも長期的に安定経営を望む家主側の意向の意味合いはあるかと思います。ただし、住宅に寄せて考えると東京などの大都市は一極集中がしばらくは続くものの、今後は減少していくでしょう。そうなると大量建設された住宅が空き家化と化す問題が考えられます。もちろん、サブリースも当初の想定通りに運用できるとは限りませんし、高齢者向けなど住宅のニーズも変化するでしょう。

今回の論文では、そうなる前段階(所有者であるオーナーを零細家主)とし、日本の民間賃貸住宅の供給主体が零細規模で支えている課題と、外国人流入の間で零細規模の供給がゆえに発生する課題を設定しました。

特に先程サブリースについて意見を述べましたが、供給主体である家主側に建築助成などの社会保障の可能性も展望されます。他方で、トラブルの際は家主単独ではなく不動産会社が間に入る場合がほとんどですが、日本の住宅供給システムと今後の課題として絞られた部分(家主、不動産会社、入居者)ではなく何らかのマクロな視点も必要だと感じています。

Q(川村):なるほど。大野さんの研究で、ここぞという独創性は何ですか。

A(大野):特に人口減少社会においてどの人も多様な人々が住みよい暮らしができる安心の居場所として、「共創」を軸に社会を考察することが、私のミッションだと考えています。特に様々な外国人が暮らす中で、インフラとしての住宅における問題は基本的な社会課題だと捉えています。

Q(川村):大野さんの独創性に期待しています。ところで多文化研では、ユースの活躍が目立ちます。この時期、後輩に向けるアドバイスがありますか?

A(大野):コロナ渦の中でオンライン授業や人とのかかわりが少なくなったと感じる方も多いと思います。しかし、以前からフェイストゥーフェイスの関係以外の関係はあったと思います。たとえば、SNSによるチャットなど当たり前に目の前に人がいないコミュニケーションをしていたと思います。ネットワークによる人々の弱く広いつながりを弱い紐帯などという場合があります。

Q(川村):今後を展望して多文化研の皆さんにメッセージをお願いいたします。

A(大野):今回ソシオロジクスを執筆するにあたっては住宅と外国人に焦点を当てました。目の前に当たり前にある建物ですが、実は外国人に対して優しくなかったり、様々なフィールドとなっています。学生のみなさんは、自分の中の当たり前が本当に当たり前か、考えてみると社会のあらゆることに視線が向くと思います。

是非、この「当たり前」を疑ってみてください。新しい知恵を得ていけたらと思っています。

(川村):パンデミックの最中だからこそ、トランスナショナルな地域の気づき愛(Global Awareness)が大切ですね。

とても勇気づけられる示唆的なメッセージをありがとうございました。

川村千鶴子
(9月29日 新型コロナによる世界での死亡者数が100万人を越えました。感染者数は、3340万人と言われています。)

====================

【多読味読<62>: Mai Kaneko ” NATIONALITY OF ‘FOUNDLINGS’ “ 金児真依著『「父母がともに知れない」子の国籍』490頁英文】

多文化研、無国籍ネット、JARのみなさま

国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所で、首席法務アソシエイトとして活躍されている金児真依さんから製本された貴重な限定本のご著書をご恵与いただきました。
金児さんは、難民認定や難民の定住、無国籍の予防や無国籍者の保護等のため、日本政府をはじめ様々なアクターをサポートする業務に従事され、多文化研共創フォーラムにも参加されています。

オランダのマーストリヒト大学にてジェラール・ルネ・デフロート名誉教授(国際私法・国籍法)の指導のもとに、無国籍の防止について比較法・国際人権法の視点から博士論文を完成され、2020年1月の口頭試験の結果、博士号(法学)の学位を取得されました。

” NATIONALITY OF ‘FOUNDLINGS'”
Are your parents really ‘unknown’?Assessment of ‘foundlinghood’ under international law to avoid statelessness

6歳のお子様を育てながらどんなにか大変なことだったと思いますが、無国籍に関する科学的分析に尽力され、さらに実践に活かしておられることに心から敬意を表します。

共著に墓田桂・杉木明子編『難民・強制移動研究のフロンティア』(2014年、現代人文社)等があり、みなさまにはご存知の方が多いと思います。事実上あるいは法律上の無国籍の当事者や論者が多いので、いつか金児さんご自身が多文化フォーラムにご登壇いただけると伺っております。

◆金児さんは、学生時代、カルフォルニア大学デイビス校に交換留学され、「移民学」を学び、インド系移民2世のジェンダーやアイデンティティについてリサーチされました。2004年米国コロンビア大学にて修士号取得。レバノン(准第三国定住官)、パキスタン(法務官)等でも難民の第三国定住や国籍法のリサーチ等に従事されました。原語から翻訳を重ねてなんと193か国の国籍法におけるFoundling provision等の比較表(2019年1月時点)を掲載されています。EXECUTIVE SUMMARYにも書かれていますが、「FOUNDLING」という語は、条約の文言にも、領域内で発見された時について年齢制限が設けてあるわけではないことや、各国の法を比較しても、すべての未成年を含んでいる国が11か国はあったこと、必ずしも年齢を限定しない文言の国も多かったこと、子どもの権利条約7条など総合的に考え、一般的な「新生児・乳幼児」という解釈ではなく、18歳未満等の未成年の子どもで領域内で発見された父母が知れない子どもについてFOUNDLINGとするべきという結論を導きだされたようです。

課題の多い難民認定や難民の定住、無国籍の予防や無国籍者の保護等を考える上に重要な視点を指摘されており、ゆっくりとご講演される機会を楽しみにしております。

川村千鶴子(9月26日、今日は母の命日)

================

【多味多読<61>万城目正雄「民間活力による アジア諸国の産業人材の育成に向けた取組」『国際人流』2020年9月号】

多文化研の皆様

晩夏を思わせる日々の中、いかがお過ごしでしょうか。会員の伊藤です。

 さて本日は、公益財団法人入管協会が出版している『国際人流』誌上で、当会メンバーが担当している連載「人権に根ざす共創・協働の「安心の居場所」」の中から、事務局長の万城目正雄先生(東海大学)が執筆された最新号の記事についてご紹介いたします。

「国際人流」2020年9月号

———–以下、紹介————-

 連載第6回の本記事では、60年以上にわたり経済発展を担う産業人材の育成を実践してきたAOTS(一 般財団法人海外産業人材育成協会)の取組が検討されている。具体的には、国と企業を繋ぐという意味において「中間組織(団体)」ないしは「橋渡し機関」といい得るであろうAOTSが実施する、①「技術研修」・「管理研修」と②「専門家派遣」を取り上げ、それがどのように「共創社会」に貢献しているかが考察されている。

 ①「技術研修」・「管理研修」は、海外人材が日本に来て受講する形式の研修で、前者が海外の日系企業等で働く技術者、後者が海外の現地経営者や管理職を対象としている。研修はAOTS研修センターで行われる日本語・日本文化等の一般研修、企業や生産現場で行われる実務研修から構成されている。この研修の特徴は、生産・品質管理を体系的に学べることや企業の先進・優良事例を実地で学べることにあることが記事から分かる。一方の②「専門家派遣」は、日本企業の技術者等の専門家をAOTSの専門家として現地に派遣し指導を行うものである。②に特徴的なのは「多くの従業員を対象とすることができ、現地で直接技術指導」できることであるという。そして①、②のいずれもが「国庫補助事業」として行われており、AOTS事業を活用することは経費の面からも企業にメリットがある。

 そして共創・協働の観点から、過去60年にわたり40万人に上る元研修生による「同窓会」組織の重要性が取り上げられており、44の国と地域において73カ所に「同窓会」が組織されているという。しかしこれら同窓会は単に旧交を温めるというものではない。同窓会組織は、日本と当国の友好・親善に寄与するものであることに加え、「パートナーシップ」に基づく協働によって、例えば「人材確保」といった面でwin-winの関係を生み出すものであることが記事を読むと分かる。具体的な活動内容は記事に譲ることとするが、日本企業の進出があまり進んでいないアフリカ地域にも同窓会があることが指摘されている(紹介者としてはトルコにも同窓会があることが気になった)。

  本記事は、ある種の「中間組織(団体)」を介した国際的な人材育成やパートナーシップの構築に関心がある向きにはうってつけであろう。是非、一読願いたい。

—————-終わり—————-

伊藤 寛了

========================

【多読味読<60>:駒井洋監修、小林真生編集『変容する移民コミュニティ-時間・空間・階層』明石書店、2020年】

多文化研の皆さま

 先ほど佐藤由利子さんから、お知らせがありましたように10月10日(土)の14時から研究会を行いますが、その基盤となっていますのが、私が編集いたしました表題書駒井洋監修、小林真生編集『変容する移民コミュニティ-時間・空間・階層』明石書店、2020年となっております。出版社の概説は前掲メールにもありますように下記となっています。

https://www.akashi.co.jp/book/b525012.html 

また、私が授業を行う立教大学の平和・コミュニティ研究機構より自著紹介の依頼を受け、下記のようなものを執筆いたしました。5000字ほど分量がありますので、お時間がある時に目を通していただければ幸いです。タイトルをクリックしますと、文章が出てきます。

https://www.rikkyo.ac.jp/research/institute/ipcs/bookreview.html 

目にされてきた方もいらっしゃると思いますが、この本は明石書店から出ている「移民・ディアスポラ研究」シリーズとして刊行されています。従来、このシリーズでは2万字程度の論文を10-12本ほど掲載してきたのですが、今回は日本の移民コミュニティの全容を掴もうとする構想があったため、過去から現在に至る31の事例を扱っています。詳しくは上掲のホームページや発表の際にお伝えしますが、副題となっております「時間・空間・階層」の概念にそって多くの執筆者の皆さんに協力して貰いました。予想以上に編集作業(交通整理?)に手間取りましたが、興味深い論考が揃っていると思いますので、是非手に取って御確認いただければ幸いです。 それでは、まだ暑い日も続き、天候も不安定な中ですので、お気をつけてお過ごし下さい。ネット上ではありますが、研究会にてお会いできることを楽しみにしております。

 小林真生

========================

【多読味読<59>:Cross-border Human Mobility and Multicultural Synergy『多文化共創をキーワードとした研究室』佐藤由利子研究室 2020年8月25日】

みなさま

度々、お邪魔して申し訳ありません。
多文化共創をキーワードとした研究室紹介が,佐藤由利子先生の東京工業大学の地球環境共創コースの公式ホームページに掲載されたとのことです。
URLは図表があって、非常に分かりやすいです。↓英語からいきましょう。

●『佐藤由利子研究室 -研究室紹介 #5-』

英 語URL:https://educ.titech.ac.jp/tse/eng/news/2020_08/059545.html

日本語URL:https://educ.titech.ac.jp/tse/news/2020_08/059540.html

人口減少に直面する日本社会にとって、外国人の受け入れは重要な課題です。異なる文化背景を持つ人と互いの強みを活かして協働し、相乗効果を得る(=多文化共創)ためには、どうすればよいのでしょうか?日本を理解し、日本人と他の外国人の橋渡し役となる留学生は、多文化共創実現のためのキーパーソンと言えます。

佐藤研では、留学生などの国際的人の移動が社会や組織にもたらす変化と、多文化共創を促進する社会環境について研究を行っています。

佐藤先生のご研究を拝聴できる日を楽しみにしております。

❖多文化研のみなさま

多読味読は、次回は<60回>を迎えます。4年前に始めました。
会員の皆様の筆力と洞察力に圧倒されております。
どうぞ今後、この【多読味読】を有効活用してご自身の本やコラムなどを発信してください。
特に今注目される入管法の改正に絡むことや無国籍、難民政策、地球環境に関することなど、ご自身の論文やコラムもご紹介いただけると幸いです。

川村千鶴子

====================

【多読味読<58>:【Reseacher’s Eye】90倍の入場料ぺトラ遺跡、無料立ち読みサイト(慶應義塾大学出版会)2020年】

みなさま

多文化研HPはWeb班のご尽力のお陰で充実しています。海外在住で時差のために参加できなかった皆様は以下をご覧くださいませ。日本特有のシステムがあるようです。

https://tabunkaken.com/%e5%a4%9a%e6%96%87%e5%8c%96%e5%85%b1%e5%89%b5%e7%a0%94%e7%a9%b6/xiii%e3%82%b3%e3%83%ad%e3%83%8a%e7%a6%8d%e5%be%8c%e3%81%ae%e4%bd%8f%e5%b1%85%e3%81%a8%e3%81%be%e3%81%a1%e3%81%a5%e3%81%8f%e3%82%8a/

❖かつてディアスポラ研究会ほか複数の学会・研究会で同席させていただいた錦田愛子さん(中東地域、移民・難民研究者)が慶應義塾大学法学部政治学科准教授に就任されこの度、三田評論の【Researcher’s Eye】90倍の入場料ペトラ遺跡が掲載されました。錦田さんならではの鋭い視点です。

https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/researchers-eye/202007-1.html

https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/researchers-eye/202007-1.html

砂漠に忽然と現れる砂岩の遺跡や、ラクダに乗って回るツアーなどは、エドワード・サイードが批判するオリエンタリズムをまさに体現するものなのかもしれない。

https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/

https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/

❖さて、本屋の「立ち読み」が大好きな方に耳よりなお話。
慶應義塾大学出版会から無料の「立ち読み」サイトをいただきました。御高覧くださいませ。お勧めのURL タイトルページはこちらです。↓

充実した本が並び、無料で序章など20頁を読むことができます。

❖特設サイトでは拙編著書『いのちに国境はない』も立ち読みできとのこと。懐かしい冒頭20頁(目次・序章の大半)が無償公開されていました。母子手帳の胎児の写真を掲載した序章です。ご笑覧ください。

立ち読みのお知らせまで

川村千鶴子

====================

【多読味読<57>:万城目正雄「特別企画 新型コロナで変わるモノづくり」「コロナ禍で中小製造業における外国人材の 活用はどうなるか」『型技術9月号』2020年9月16日発行。日刊工業新聞社。1400円】

川村千鶴子

多文化研のみなさま

予想されたようにコロナウイルスの感染拡大は、日本の雇用情勢と雇用環境を一段と悪化させました。就業者数、雇用者数がともに2か月連続で減少し、完全失業者数の増加に加え、失業予備軍といわれるコロナに関連する解雇や雇止めは、2020年6月26日の集計では、28,173人(うち、製造業4,133人)になっています(厚生労働省)。

万城目先生は特別企画を寄稿しておられます。
「特別企画:新型コロナで変わるモノづくり」
「コロナ禍で中小製造業における外国人材の活用は  どうなるか」

Q(Kawamura)!(^^):

『型技術』興味深く拝読いたしました。コロナ禍で変化する外国人労働者に対する政策的対応をどのように考えておられますか?特に出入国管理政策上の特例措置や技能実習生に対する支援などいかがでしょう?

A(Manjome)(^^):

コロナウイルスの感染拡大により、国境を越えた人の移動が制限されるようになりました。一部緩和される動きも見られますが、水際対策による上陸の拒否により、新規入国ができない状況が続いています。また、帰国したいのに母国に帰れないという帰国困難な状況も発生しています。帰国困難者には、特例措置により在留資格の変更し、就労継続が可能になっているほか、再就職先支援も行われています。

技能実習生にも日本人と同様、特別定額給付金(10万円)のほか、雇用維持のための雇用調整助成金も支給されています。また、生活の安定に対する支援として、求職中の技能実習生にも雇用保険の給付が行われています。

Q(Kawamura)(^^):そうですか。

ご公務が多忙を極める中、ヒヤリングを重ねておられるわけですが、実態はどうでしょうか?

A(Manjome)!(^^)!:

先日、求職中の技能実習生や関係者とお話ししました。政府による支援だけでなく、地域社会・ボランティアの方から野菜等を支援もいただいているとのことでした。

地域社会の励ましが技能実習生を勇気づけているという話を聞き、多文化研がキーワードとする多文化共創社会の可能性を感じさせられました。

Q(Kawamura)(^^♪: 

地域が連携して協働・共創しているのですね。感染拡大が終息しても、世界的に急減した需要の回復には、さらなる時間を要するのではないでしょうか?
私は、雇止め対策や心のケアも必要だと思いますが、万城目さんはどのように分析しておられますか?

A(Manjome)(^_-)-☆:

コロナショックは、好調であった日本経済に陰りが見え始めてきた時期に追い打ちをかけるように発生したといっていいのでは
ないでしょうか。世界経済の減速傾向も加わり、日本経済の人手不足の状況は、コロナショック前から緩和される方向が示されていました。

例えば、2019年平均の有効求人倍率は、10年ぶりの減少でした。中小製造業の人手不足の状況について、中小企業庁・中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」の従業員過不足数DIの推移からみると、さらに興味深い状況が観察できます。

中小製造業における技能実習生の状況ですが、雇用調整助成金で技能実習生の雇用を維持しているという話も聞こえてきております。しかし、雇用や失業は遅行指標といわれています。これから更に悪化することが見込まれます。当面は、コロナに直面する技能実習生の雇用の維持や心のケアのための更なる支援が求めれると思います。

(Kawamura)(^^♪:

まさにそうですね。コロナ禍後の変容と新しい世界を見据え、じっくりと多面的に検討する視点が大切と思います。日刊工業新聞社のHPを拝見していると中小製造業の絶え間ない取り組みと「モノづくり日本」の未来が見えてきます。

『型技術』9月号をご紹介いたしました。

59頁の食べらる容器には感動しました。60頁のさまざまなデザインの「熱絞り紙容器」の写真も素敵です。

多文化研のみなさまも是非ご高覧くださいませ。

川村千鶴子拝

====================

【多読味読<56>:廣瀬明香・二見茜・冨田茂監修『薬局・ドラッグストアのためのコミュニケーションBOOk』株じほう2020年7月】

https://www.books.or.jp/books/detail/2365132

多文化研のみなさま
          川村 千鶴子(ミャンマーレストラン・ルビーにて)

多言語多文化対応で有名な「高田馬場さくらクリニック」をご存知と思います。
是非ご覧ください。
→ HP: http://www.sakuraclinic.info/
数年前、チョウチョウソーさんのお店ルビーで偶然冨田茂院長(SHIGERU TOMITA MD, MPH, PhD)とお会いして以来、新宿区高田馬場4丁目の河上ビル3階を訪問し、素敵なインテリアと大勢の外国人スタッフが毎週勉強会をもって養成されていることに驚きました。ぜひ、整形外科が必要の時は、訪れてみてください。
その後、拙編著『いのちに国境はないー多文化「共創」の実践者たち』慶應義塾大学出版会で玉稿をご寄稿いただき、高田馬場さくらクリニックは多文化共創クリニックの先駆けとして有名です。

昨日、冨田先生からこの2020年7月に刊行されたばかりの廣瀬明香・二見茜・冨田茂監修『薬局・ドラッグストアのためのコミュニケーションBOOk』日本語・英語・中国語対応株じほう2020年7月】をご恵与いただきました。
https://www.books.or.jp/image/9784840752862/0/20200715123825

以下、<トーク・ショー>スタイルでご紹介いたしますね。

❖川村:「移住と健康」にお詳しい先生が、コロナ禍を乗り越えて、新しい本を刊行され、おめでとうございます。漢字にフリガナが振ってある本は珍しくありませんが、それだけでなく、英語や中国語にもフリガナがついていて、さらにすべてのページにカラーのイラストが入っている本は初めてみました。

❖冨田院長:そうなんです。じほう社より最近、新しい書籍を出版しました。アマゾンでも購入できます。
イラストは、ドラマ化された漫画「ナースあおい」の人気漫画家こしのりょう先生が担当です。見ているだけでも実に楽しい本になりました。

❖川村:健康は「幸せ」に直結する重要な要素だと思いますが、この本の主旨と目的は何ですか?

❖冨田院長:外国人住民の多くにとって、病院にかかるのは言葉や保険制度のハードルが高くのしかかります。ドラッグストアでセルフメディケーションで済ませてしまうことが現実として多くあります。
皆が医療機関にかかれる世の中にという理想はありますが、現実的な対応としてドラッグストアでの誤解や事故を防ぐための手助けとなることを、本書は期待しています。
医療者にも外国人にもポケットに入れて利用してほしいと思い、白衣も含めて、一般的なジャケットのポケットに入れておけるサイズにまとめました。

❖川村:さすがですね。活躍されてきた二見茜さんも監修者ですね。

❖冨田院長:それに、薬剤師の廣瀬明香さんが中心になって頑張りました。彼女が考えたツール → (https://www.sankei.com/life/news/171017/lif1710170016-n1.html )が元になっています。
廣瀬さんによると本書の特徴は以下の点ですね。

①探したい情報を見つけやすい📖巻頭にフローチャートをつけたり、より詳しい情報はコラムに飛べたりなど、該当ページが見つけやすいように工夫しました。情報も多くしすぎず、応用できるフレーズは、変える単語だけ選べば良いようにするなどして、なるべく簡略化しました。
②白衣に入るポケットサイズ🥼
持ち歩けてさっと取り出せるように、ポケットに入るコンパクトなサイズにしました。
③イラストやカラーで読みやすい🎨
漫画家の方にもご協力いただき、親しみやすいようなデザインにしました。
まずは、薬局やドラッグストア向けで、英語と中国語に対応できるように作りました。
言語に自信がなくても、この本をきっかけに、コミュニケーションの第一歩を踏んでいただけたら嬉しいです😌
海外の方がたくさん来日するであろう今年のオリンピック・パラリンピック前の発売を目指していましたが、オリパラは延期になってしまいましたね。
でも、そのときまでの準備期間ができたと思えば良いのです!

チョウチョウソー理事:続編としてミャンマー語やベトナム語、ネパール語、タイ語などのコミュニケーションBOOKができると有難いですね。期待しています。日本に在住する難民の人々も高齢化しており、最近も亡くなりました。葬儀には自治体からのご支援もいただいております。コロナの影響は大きいですが、みんなで助け合って暮らしています。

冨田院長:続編を出していくことが、今回の狙いでもあります。「健康」のベースは、まさに「教育」であるのです。

川村:外国語が話せなくとも必要な会話を指で差してコミュニケーションができる。それに日本の保険制度やお薬手帳の説明や「国によって異なるお薬事情。呼び名が違う?量が違う?」が分かる。基本的なことが多言語でわかる素晴らしい本ですね。日本社会は、外国にルーツを持つ人々との共創・協働がベースとなっています。

多文化共創の時代に、必読の本をご紹介しました。

川村千鶴子(ミャンマーレストラン・ルビーにて)

================

多読味読<55>: 『三田評論7月号 特集 人口減少社会のモビリティ』ONLINE『特別座談会:「コロナ報道」を考える──リスク社会のメディアのあり方』慶應義塾大学出版会2020年7月】

多文化研のみなさま

木内鉄也様(慶應義塾大学出版会、URL: http://www.keio-up.co.jp/)

「リスク社会のメディアのあり方」というテーマを見て飛びつきました。実は昨夜、ニューヨーク州でカウンセラーをしておられる山口美智子さん(多文化研理事)とラインビデオで繋ぎ、コロナ報道について各国のメデイアの扱いについても話していました。
ニューヨークでは日々、800人を超える死者がでて、葬儀も弔いも難しいお話しも伺いました。東京では、いま243人の新規感染者がでて、過去最多とか棒グラフで表していますが、おそらく実際は何倍なのか、分かりません。

多文化研のみなさまには、ぜひ下記URL「三田評論ONLINE」をゆっくり丹念に御覧になってください。
https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/
特別座談会:「コロナ報道」を考える──リスク社会のメディアのあり方

これ凄いです。実際は、2020年6月1日、オンラインにより収録したものだそうです。
座談会という形式が分かりやすく、私には、眼から鱗でした。多文化研にはメディア関係の論者がおられるので、ぜひぜひ論評なさってくださいませ。慶應病院の北川院長先生の取り組みも拝読いたしました。https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/

『いのちに国境はないー多文化「共創」の実践者たち』慶應義塾大学出版会2017年の共著仲間の国立国際医療研究センターの堀成美さん、さくらクリニックの冨田先生、塩田ドルジさんにもお知らせします。

■今月下旬には、「Researcher’s Eye」という研究者紹介コーナーで多文化研の錦田愛子先生(慶應義塾大学法学部准教授)の記事も公開されるとのこと。
また、次の8・9月合併号でも、「感染症と大学(慶應義塾)」というテーマで、このような状況下で大学がなすべきことは何かなどを、議論しているとのことです。

必読です。ご紹介まで。

川村千鶴子

Emeritus Prof. Dr. Chizuko Kawamura
Daito Bunka University

================

【多読味読<54>:錦田愛子編『政治主体としての移民・難民ー人の移動が織り成す社会とシティズンシップ】(明石書店2020年3月31日、279頁)

多文化研のみなさま
                        川村千鶴子

パンデミックの最中、政治主体としての移民と難民の人々のシティズンシップを探究した待望の集大成が完成しました。

https://honto.jp/netstore/pd-book_30249620.html

政治主体としての移民/難民 人の移動が織り成す社会とシティズンシップ

誰一人取り残さない世界をつくるためには、移民と難民の人々との関わりが欠かせない。誰もが当事者性を感じつつ、身近に話し合うべきテーマです。

まずは、編者で多文化研会員の錦田愛子(にしきだあいこ)さんをご紹介します。

錦田愛子(にしきだあいこ)
現在は、慶應義塾大学法学部政治学科准教授。
1977年 広島県生まれ、東京大学法学部卒業、同法学政治学研究科修士課程修了。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程修了(文学博士)
専門はパレスチナ/イスラエルを中心とした中東地域研究です。
主な著作として
*『政治主体としての移民/難民――人の移動が織り成す社会とシィティズンシップ』編著(明石書店、2020年)
*「紛争・政治対立と移動のダイナミクス――移民/難民の主体的な移動先選択」小泉康一編著『「難民」をどう捉えるか――難民・強制移動研究の理論と方法』(慶應義塾大学出版会、2019年、81-96頁)
*「なぜ中東から移民/難民が生まれるのか―シリア・イラク・パレスチナ難民をめぐる移動の変容と意識」『移民・ディアスポラ研究』第 6号(2017年、84-102頁)
*「北欧をめざすアラブ系「移民/難民」――再難民化する人びとの意識と移動モデル」広島市立大学紀要『広島平和研究』4号(2017年、13-34頁)http://www.hiroshima-cu.ac.jp/modules/peace_j/content0252.html
*『移民/難民のシティズンシップ』編著(有信堂高文社、2016年)
*『ディアスポラのパレスチナ人―「故郷(ワタン)」とナショナル・アイデンティティ』(有信堂高文社、2010年)

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784766423716

https://honto.jp/netstore/search/au_1000593787.html

<多読味読対談>

川村千鶴子・錦田愛子

Q1(川村):これまで錦田さんの論考を拝読する度に、グロバール化の奥深さを感じてきました。執筆者の玉稿が揃った集大成というべき大著ですね。刊行まで、どの位の期間をかけましたか?

錦田愛子(^^):お恥ずかしいながら、こちらは2016年度に終了した共同研究会の成果で、刊行までかなり時間がかかってしまいました。共著者の皆様には3年前の2月に初校をお寄せ頂き、それから業務の合間を縫って編集作業を進め、今年3月の刊行となりました。

Q2.序章を拝読し、第1章 近藤敦さんと第4章の陳天璽さんから、拝読しています。拝読するのに順番として、お薦めの読み方がありますか?

錦田愛子(^^):各章は独立した内容なので、ご興味のあるところからお読み頂いて構いません。とはいえ法律の枠組みを踏まえてから、人類学的調査の研究に読み進める方が、頭を整理しやすいかもしれないので、授業では1章から順に扱っています。

Q3.抗しがたい難解なテーマもあるように思います。正解のない問いかけもありますか?編者として、力を注いだのは、どんな点でしょうか?

錦田愛子:移民/難民がそれぞれのおかれた社会で、援助や政策の客体としてだけではなく、主体として政治的・社会的に影響を及ぼし得る存在だ、ということを強調しました。その共通テーマを基に、各章は比較的自由にお書き頂いていますが、全体として調和のあるものになっていると思います。専門性が高いという点では、少し難解な個所もあるかもしれません。現在進行形の課題ばかりですので、まだ正解はないかもしれませんね。

Q4:このコロナ危機にある時、幅広い年齢層に読んで欲しい内容だと思いました。高校生も読むことができますか?

錦田愛子(^^)♪:専門用語の多い章は、完全に内容を理解してもらうのは難しいかもしれません。でも当事者の声を感じ取って頂けるかと思います。幅広いテーマで移民/難民の現在を問う内容となっております。ぜひ授業などでご紹介頂ければうれしい。

<多文化研の必読書です。目次をご高覧ください>

序章 移民/難民と向き合う社会をめざして[錦田愛子]

 ■「国際化」する日本
 ■「今そこにいる人々」と向き合う
 ■「自分とは違った人たちとどう向き合うか」
 ■「包摂と排除」を越えて
 ■「移民/難民」のシティズンシップ
 ■各章の内容
 ■多様な生き方への尊重

第1部 移民/難民の政治参加の保障のあり方

第1章 民主主義諸国における移民の社会統合の国際比較――権利レベルと実態レベル[近藤敦]

 はじめに
 1.政治参加
 2.永住許可
 3.国籍取得
 4.労働市場
 5.家族呼び寄せ
 6.教育
 7.差別禁止
 8.保健医療(健康)
 おわりに――インターカルチュラリズムとしての多文化共生

第2章 難民及び庇護希望者の労働の権利――難民条約と社会権規約の比較検討[小坂田裕子]

 はじめに
 1.難民条約における労働の権利
 2.社会権規約における労働の権利
 3.考察
 おわりに

第3章 リベラルな社会はいかなる意味で多様な集団に対して「寛容」でありうるか――「中立性」概念の検討を手がかりに[白川俊介]

 はじめに――岐路に立つ多文化主義とリベラリズム
 1.リベラリズム・寛容・中立性
 2.「中立である」とはどのようなことを意味するのか
 3.「リベラルな文化主義」はいかなる意味での「中立性」を擁護するのか――ウィル・キムリッカの説明
 4.「処遇の中立性」の擁護と「平等な承認」――アラン・パッテンによるキムリッカ批判
 5.「リベラルな文化主義」はいかなる意味で「リベラル」であるべきか――パッテンによるキムリッカ批判の含意
 むすびにかえて

第2部 法と政治という暴力――奪われるシティズンシップ

第4章 難民から無国籍者へ――身分証明書が持つ暴力性[陳天璽]

 はじめに
 1.国籍と個人
 2.在留管理制度の導入と無国籍者の類型
 3.難民の国籍、身分証明書、アイデンティティ
 おわりに――身分証明書が持つ暴力性

第5章 イギリス海外領土からの強制移動[柳井健一]

 はじめに
 1.バンクール事件――事件の背景
 2.訴訟におけるマグナ・カルタ
 3.現行法としてのマグナ・カルタ
 4.権利章典としてのマグナ・カルタ
 結語

第3部 移民/難民による政治・社会の再構築

第6章コミュニティを御する人びと―北部ウガンダにおける人の移住とその暮らし[飛内悠子]

 はじめに
 1.ウガンダの国籍法と難民政策
 2.マディ・ランドと南スーダン
 3.ビヤヤ(Biyaya)
 4.共同体を御する場
 結論

第7章 環流する知識と経験――難民の「帰還」とシティズンシップ[久保忠行]

 1.移民/難民とシティズンシップ
 2.タイ・ビルマ国境の移民/難民
 3.難民キャンプの政治性
 4.環流する知識と経験

第8章 スーダン・ヌバ難民キャンプからの報告――シティズンシップの連続と断絶[佐伯美苗]

 はじめに
 1.近代スーダンとヌバの成立
 2.紛争とヌバ
 おわりに

第4部 人口割合がもたらす政治的・社会的インパクト

第9章 東マレーシア・サバ州における越境のポリティクス――フィリピン系ムスリム移民/難民の事例を中心に[床呂郁哉]

 はじめに
 1.フィリピン南部/サバ間の人の越境的移動の概要
 2.サバへのインパクト――人口動態への影響
 3.受入国への社会的・政治的影響
 4.移民/難民の越境的移動の背景
 結語

第10章 パレスチナ難民のシティズンシップ――ヨルダンとレバノンにおける移民/難民の人口増加が与える政治的影響[錦田愛子]

 はじめに
 1.人口統計からみるディアスポラのパレスチナ人
 2.ヨルダンのパレスチナ難民
 3.レバノンのパレスチナ難民
 4.難民の人口比とシティズンシップ

第11章 なぜ男性移民は社会から排除されるのか?――UAEとカタルにおける人口男女比の不均衡がもたらす政治社会問題[堀拔功二]

 はじめに
 1.GCC諸国における人口バランス問題と男性移民
 2.都市部における男性移民の集住と隔離
 3.公共空間における男性移民の排除
 おわりに

ぜひ感想を<多読味読>にお寄せください。Web班のご尽力によって、「多読味読」は多文化研ウェブサイトに掲載され、Facebookアカウントにも投稿されています。

https://tabunkaken.com/%e5%a4%9a%e6%96%87%e5%8c%96%e5%85%b1%e5%89%b5%e7%a0%94%e7%a9%b6/%e5%a4%9a%e6%96%87%e5%8c%96%e7%a0%94%e3%83%aa%e3%83%a9%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%b9/%e5%a4%9a%e6%96%87%e5%8c%96%e7%a0%94%ef%bc%9d%e3%80%90%e5%a4%9a%e8%aa%ad%e5%91%b3%e8%aa%ad%e3%80%91/

川村千鶴子

================

【多読味読<53>:明石純一著『人の国際移動は管理されうるのか ―移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築―』ミネルヴァ書房2020年3月】

明石純一さんの集大成です。ご出版、おめでとうございます!!!

明石純一著『人の国際移動は管理されうるのか―移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築―』ミネルヴァ書房

国家は越境を試みる人々をどう制御するのか――人の越境に関与する国々が置かれている立場や状況の多様性と、当事国間の流動的な関係性を捉えるための視点を提示する。
今日、世界における移民、および国内避難民を含む難民の数は歴史上最多に達している。これに伴い、人身取引、密入国、不法就労、移住労働者の搾取や人権侵害といった諸問題が深刻化している。
これらの解決には、多国間かつマルチステークホルダーの連携に基づくガバナンス構築が求められるが、国境管理や入国審査を専権事項としてきた国家はそれに抗っている。

本書は、人の国際移動をめぐる緊張関係を概念と事例の双方から論じる。

目次
はしがき
図表一覧

序 章 移民をめぐる秩序形成とガバナンス構築
 1 人の国際移動をめぐる国家と秩序
 2 移民ガバナンスの追及
 3 移民ガバナンスの解釈
 4 アジアへの視点
 5 人の国際移動は管理されうるのか

第Ⅰ部 秩序形成をめぐる国際的動向

第1章 移民政策の再編――国家・市場・市民社会
 1 人の国際移動をめぐるトリレンマ
 2 国家の「復員」と人の国際移動をめぐる秩序
 3 移民政策の再編にみる規制強化の動向
 4 国際労働移動を律する国際ルールの不在
 5 模索されるグローバルガバナンス
 6 国境を越える人の移動と非国家アクター
 7 活性化する人の国際移動と顕在化する国境

第2章 人の国際移動に対する政策的管理――実効性と限界
 1 人の国際移動に対する政策的管理への関心
 2 管理が及ぶ範囲と対象
 3 政策の実効性とその諸条件
 4 日本の事例の考察
 5 政策の効果とその評価の困難

第3章 高度人材の国際的誘致――制度と環境
 1 人材獲得への関心の高まりとその背景
 2 「人材」の定義と属性についての難題
 3 人材誘致のアプローチ
 4 多国間の取組みと国内的制約
 5 人材誘致をめぐる葛藤

第Ⅱ部 アジア諸国・地域の情勢分析

第4章 アジアの「先進」事例――シンガポール
 1 外国人労働者受入れの歴史と概況
 2 外国人労働者受入れの制度と環境
 3 市民社会の働きかけ
 4 シンガポールの固有性と普遍性

第5章 人材誘致政策とそのジレンマ――シンガポール
 1 シンガポールの人材誘致政策
 2 人材誘致政策の背景と効果
 3 人材誘致に課される制約
 4 シンガポールの先駆的経験――模倣できるロールモデルか?

第6章 外交資源としての外国人労働者――台湾
 1 外国人労働者をめぐる外交
 2 国際労働力移動に関する分析視角
 3 導入・拡大期――1980年代後半から1990年代前半まで
 4 抑制・調整期――1990年代後半以降
 5 外交資源としての外国人労働者
 6 台湾の事例の特殊性と一般的含意

第7章 東アジア後発事例――台湾・韓国・日本
 1 活発化する越境労働と政策の異同
 2 外国人労働者受入れの背景と政策の規定要因
 3 国際環境上の制約と外交戦略への転用――台湾
 4 政策転換の唯一例――韓国
 5 「気乗りしないホスト」――日本
 6 なにが政策に多様性をもたらすのか

第8章 国際労働力移動における送出国――インド
 1 国際労働力移動をめぐるガバナンス
 2 インドからの移住労働とその制度的枠組み
 3 ケララ州の事例が示すもの
 4 ガバナンスの条件の再検討

第9章 ITワーカーの越境――インド・アメリカ・日本
 1 インド人ITワーカーの越境とその背景
 2 ヒーローとクーリー
 3 「頭脳流出」から「頭脳還流」へ
 4 インド人ITワーカーの選好と選択肢
 5 インド人のビジネスネットワーク
 6 アメリカを中心とする先進国の受入れスタンス
 7 外国人高度人材に目を向け始めた日本
 8 インド人ITワーカーの歴史的位置づけ

参考文献 
初出一覧 
あとがき
索引

著者略歴 :明石 純一(akashi junichi)2020年3月現在 筑波大学人文社会系准教授

================

【多読味読トークショー<52>:万城目正雄・川村千鶴子共編著 『インタラクティブゼミナール 新しい多文化社会論—共に拓く共創・協働の時代 —Interactive Seminar: Co-Creation through Multicultural Synergy』東海大学出版部264頁2500円】

🎤 中本 博晧

過日、万城目先生からご恵与賜りました川村先生とのご編著『新しい多文化社会論 共に拓く共創・協働の時代』(東海大学出版会刊)、誠に有難うございました。先生方の長年にわたるご研究の成果の一端に接することが出来ましたこと深く感謝申し上げます。
ようやく、万城目先生がご執筆されました第5章「日本の生産を支える外国人材:技能実習制度と特定技能制度」を読み終わったところです。
とくに、(2)「外国人受入れの経済学的検討」につきましては、二度、三度拝読させて頂きました。

昨年11月の小崎教授のご講演を伺っていましたので、大変興味深く勉強させて頂くことが出来ました。
小生が、この分野に関心をもちましたのは1996、7年ごろだったと思います。
途上国から先進国への労働力移動の効果をめぐる議論が一部の労働経済学者及び国際経済学者の間で行われたことがございます。
その先行研究として、Global modelがあり、頑張って勉強した記憶があります。
御著69~70頁で万城目先生が言及されている内容は、昨今における外国人材受入れ問題で避けられない分野だと考えています。

とても全章に目を通すのは難しいと思いますが、拝読させて頂きたいと思っておりますのが第10章「多文化共創による持続可能な社会開発」です。
小生には難しい内容ですが、時間をかけて勉強させていただきたいと考えています。

中本博皓(大東文化大学名誉教授、多文化研名誉会長)

中本先生

🎤 万城目正雄

90年代の半ば、私が学生のときに、中本先生のご著書を拝読し、外国人労働者受入れの経済学について勉強したことがございます。
この度は、中本先生から貴重なコメントをいただき、光栄に存じております。 誠に有難うございます。
中本先生からいただいたコメントを励みに、理論的・実証的にも分析を進めるなど、研究・教育にしっかりと取り組んでいきたいと存じます。
この度は、本当に有難うございました。

中本先生

🎤 川村千鶴子

ご高覧いただき感想を寄せていただき感謝申し上げます。
万城目先生の第5章「日本の生産を支える外国人材:技能実習制度と特定技能制度」は、日本の将来を考えるに示唆的な論考です。

(2)「外国人受入れの経済学的検討」を繰り返し読んでいただいて嬉しいです。

昨年11月の多文化研フォーラム「経済学的アプローチ」に中本先生がご出席いただき貴重なコメントをいただきありがとうございました。

本書の中は、貴重な写真、図表、グラフがいっぱいです。
デザイナーさんが、世界難民地図をカラーでいれてくださいました。←ちなみに表紙は2019年に生まれた孫の手です。
いま傍で立ち上がり歩き始めました。歩ける喜びが表情にあふれています。
この子が20歳になるとき世界と日本はどのようになっているだろう?という問いかけを添えました。
P198には藤沢市にある善然寺に1987年に建てられた「日本在住 インドシナ人の墓」と墓石に刻まれた墓地の写真です。母国を逃れ、日本で亡くなられたベトナム・ラオス・カンボジア人の遺骨を納める共同墓地です。

     川村千鶴子

================

【多読味読<52>:万城目正雄・川村千鶴子共編著『インタラクティブゼミナール 新しい多文化社会論 —共に拓く共創・協働の時代 —Interactive Seminar: Co-Creation through Multicultural Synergy』東海大学出版部2020年2月28日】

かつて日本は移民の送り出し国であった。戦前そうであったし、戦後もそうであった。私は大学時代に学生寮に住んでいたが、寮生の一人がブラジルに移民するというので送別会を開いたことを記憶している。昭和34年(1959年)のことであった。時代が進んで昨今は移民の受け入れ国になっている。それは少子化がもたらす労働力不足を背景としているが、やって来る人々はそれぞれ出身国の文化を身に着けてやって来る。日本は治安の良さや清潔さなど様々な長所を持つが、日本語や日本文化など外国人にとって習得や適応に障壁の高い要素も多く、島国としての地理的条件から同質化圧力の強い国でもある。

本書は異文化を抱えた人々を少数派として同化を迫ることはもちろん、移民をたんに支援の対象として見るスタンスももはや合理性を持たない時代、すなわち共創・協働を目指すべき時代となったことを各章それぞれの著者が自らの研究と実践を踏まえ、歴史と現状分析、課題の提示と解決策の示唆を行っている。

タイトルに付された「インタラクティブゼミナール」という言葉が示すように、本書は各章に示される著者の知識を吸収するというより、各章を読んだ者同士が意見をぶつけあう、ということに力点を置いており、そのためにデスカッションテーマとロールプレイのテーマが例示されている。文化を異にする者同士が社会を構築する中で、来る者と受け入れる者とのインターラクティブな取り組みが必要になるが、そのことを学ぶ方法も著者と読者、読む者同士のインターラクティブな取り組みとなっている。

2019年4月に施行された新しい入管法を契機に外国人材の受け入れ拡大に向けた政策が動き出している状況の中で、これだけの質量を持った多文化社会論がいちはやく登場することに、私は日本の多文化社会形成への大いなる希望を持つ。移民問題への対応は欧米諸国に見られるように社会の分断をもたらすリスクを孕むものであり、米中対立や新型コロナ肺炎を背景にアジアにおける(中国から)日本への再シフト、それに伴う海外からの人材流入の加速が予想される中で、本書は、移民問題対応への優れた先行モデルを示すための有益な、そして質の高い参照文献として位置付けられるに違いない。                 

                    (武蔵大学名誉教授 貫隆夫)

ちなみに、本書の構成は以下のようになっている。

はじめに                       万城目正雄

インタラクティブゼミナールにようこそ!本書の対象と活用術                 川村千鶴子

第Ⅰ部 出入国管理政策と改正入管法の基礎知識

第1章 入国管理とは何か:日本の政策展開と2018年改正入管法 明石純一

コラム1 日本におけるEPA外国人看護師・介護福祉士の受入れ 村雲和美

第2章 日本に在留する外国人の人権          秋山肇

第3章 高度人材獲得政策と留学生          佐藤由利子

第4章 日系人と日本社会:歴史・ルーツ・世代をめぐって 人見泰弘

第5章 日本の生産を支える外国人材:技能実習制度と特定技能制度        万城目正雄

第6章 自治体の外国人住民政策と社会保障        阿部治子

第Ⅱ部 多文化「共創」社会の実践に向けた課題

第7章 外国人高齢者への健康支援とケアマネジメント   李錦純

第8章 日本語教育の役割と今後の課題:外国人受入れと日本語学校教育      山本弘子

第9章 外国人人材の獲得とダイバーシティ・マネジメント 郭潔蓉

第10章 多文化共創による持続可能な社会開発      佐伯康考

第Ⅲ部 海外での多文化「共創」から

第11章 韓国の移民政策と多文化社会           申明直

第12章 難民の社会参加と多文化社会:トルコと日本の難民受入れを事例として   伊藤寛了

第13章 ドイツの移民政策と地域社会:欧州難民危機を受けたドイツ社会の対応     錦田愛子

第14章 アメリカにおける非正規移民1.5世をめぐる政治と市民社会       加藤丈太郎

終章  新しい多文化社会論:共に拓く共創・協働の時代  川村千鶴子

コラム 移民博物館の創設:社会統合政策への理解    川村千鶴子

================

【多読味読<51>『買い物弱者とネット通販』久保康彦 (著), 渡辺幸倫 (著), 鈴木涼太郎 (著), 中西大輔 (著), 井口詩織 (著), 久保康彦・渡辺幸倫・鈴木涼太郎 (編集) くんぷる 2019年3月】

https://honto.jp/netstore/pd-book_29542533.html

「ポチる」という動詞が一般的に使われるようになったのは、10年ほど前だろうか?
1995年がインターネット元年とすると、それからわずか10年ほどで、光ファイバーがDSLよりも多くなり、Amazonが書籍販売よりも一般商品の取り扱いが多くなった。今や、スマホさえあれば、家財道具から日用品や食料まで、一般家庭で使うものはそのほとんどを発注することができる。

本書は、ごく普通の一家が、海外在住になることによって、日本にいれば簡単に手に入った日用品や書籍などが、欲しくとも手に入れられない”買い物弱者”となったことに注目した、ユニークな企画書籍である。ネット通販の流通における社会的な機能や一般的なシステム分析を導入部とし、従前の生産・物流・市場・消費という流通構造が劇的に変化しつつある消費社会を、今一度チェックしようとする構成手法をとっている。
さらに第2部では、在外日本人家庭が、海外では入手困難な日用品(特に子供関係の品々)を調達するにあたって、ウェブ物流がどのように利用されているか、さらにはどのような対応を強いられているかについて、フィールドワークを進めている。

社会学の一般的手法=類型化だけでは対応が難しいウェブ流通の変化について、在外家庭をサンプル源にした構造分析と考察を展開する工夫は、”発想した時点で面白そうな研究になる”ことは、自明だったに違いない。
2部構成の前半は、近未来における流通とウェブ購買の問題点や解決要素が、そこここに暗示されていて、興味深い。

一方で、少子化や医学の発達による長命化などが理由とみられる高齢者の増加で、”買い物に行きたくても行けない”買い物弱者が、いまや日本では焦眉の社会問題となっている。

AIによる自動運転車がまもなく実現しようとする今、「買いたいものはウェブで注文し、買った物のほうから家にやってきてくれる」世の中の到来を、本書が予感させてくれる。

https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%B7%E3%81%84%E7%89%A9%E5%BC%B1%E8%80%85%E3%81%A8%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E9%80%9A%E8%B2%A9-%E4%B9%85%E4%BF%9D%E5%BA%B7%E5%BD%A6/dp/4875510659


『買い物弱者とネット通販』
第1部 買い物とインターネット

第1章 流通における調整形態の源流ー買い物弱者問題とネット通販をどう位置付けるのか

1.1 はじめに
1.2 企業環境と組織関係の研究系譜
1.3 資源ベース・アプローチと資源依存アプローチ
1.4 取引コストアプローチと中間組織
1.5 経済社会における調整概念
1.6 マーケティング論における調整概念
1.7 取引の長期・継続性と企業間統治
1.8 現代流通におけるネットワーク・アプローチ
1.9 むすびにかえて

第2章 SNSを活用する商業と消費者の関係ー「ZOZOTOWN」および「WEAR」におけるマーケティングの検討

2.1 はじめに
2.2 商業と消費者
2.3 SNSを活用する商業
2.4 おわりに

第3章 消費者情報システムと消費者学習

3.1 ネット社会がもたらす「暗い面」
3.2 関係性パラダイム
3.3 関係性パラダイム批判
3.4 消費者情報システム
3.5 消費者学習

第2部 買い物弱者としての在外子育て家庭

第4章 東南アジアにおける邦人子育て家庭の買い物環境

4.1 「買い物弱者」としての在東南アジアの邦人子育て家庭
4.2 タイにおける子育て商品の買い物環境
4.3 ベトナムにおける子育て商品の買い物環境
4.4 まとめ

第5章 バンコクにおける日タイ国際結婚家庭の教育商品調達について

5.1 はじめに
5.2 先行研究
5.3 日タイ国際結婚と日タイの両親を持つ子どもたち
5.4 調査の概要
5.5 インタビューの分析
5.6 考察:モノとサービスからみた教育商品
5.7 まとめ

第6章 在ベトナム邦人子育て家庭の商品調達における「弱い紐帯」の役割

6.1 はじめに
6.2 商品調達をめぐる諸議論と在外子育て家庭
6.3 研究の対象と方法
6.4 親族や友人への依頼とバザーの重要性
6.5 子育て用品調達における「弱い紐帯」の役割
6.6 むすびにかえて

第7章 商品分類からみる子育て商品の特殊性

7.1 問題の所在
7.2 商品分類の類型化
7.3 田村モデルの探索性向と探索マップ
7.4 在外子育て商品の探索価値と探索費用
7.5 子育て商品の特殊性
7.6 消費者ニーズの事前確定性と消費過程の多様性
7.7 むすびにかえて
————-

多文化研ウェブ班
    増田隆一

=============

【多読味読<50>:『3.11後の多文化家族ー未来を拓く人々』(明石書店2012年3月1日)】

こんばんわ。

覚えておられますか。3.11東日本大震災とその後。
2011年、すざまじい廃墟に直面し、その年の死者は1万5841人、行方不明者3493人、避難者は約33万人(2011年12月)という厳しい位相に生きてきました。岩手・宮城・福島の3県では失業手当受給者が1年だけで6割も増え、雇用情勢の厳しさが「生きる」闘いを一層困難にしていました。
大津波のうねりと原発事故は、原子力の安全神話を否定しました。
まさにその年、多文化研のこのMLが1000件以上も流れて多言語や除染などの情報を流しました。アンケート調査をもとに「つながる」をテーマとして社会言語学者の荒井幸康さんが論文を寄稿してくださいました。
日本のエネルギー基盤の脆弱性を露呈させ、時の断絶を映し出したとき、荻野政男さんが、「ふくしま国際メデイア村」代表となって民家の除染作業に尽力されました。

http://www.fukushima-news.com/ja/news/72

人口移動を分析して日本社会を再考したのが郭潔蓉さん。
チョウチョウソーさんが、難民の方々とバスに乗って被災地を訪れました。「助けるのは当たりまえ」を執筆しました。
表紙は、金澤さんのお母様の後ろ姿とご実家の写真です。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51H7sJJeVKL.SX309_BO1,204, 203,200.jpg

第1章:被災地市民の歴史          /金澤宏明

第2章:変わる被災地いわき市のコミュニティ/荻野政男

第3章:多文化家族を感じる         /リリアン・テルミ・ハタノ

第4章:家族とつながる            /荒井幸康

第5章:県営いちょう団地にみつ多文化家族の動き/長谷部美佳

第6章:外国人妻の被災地支援    /李仁子

第7章:多文化家族の課題と可能性 /武田里子

第8章:多文化「共有」の視点からみる/李ほひょん

第9章:多文化空間の人口移動分析 /郭潔蓉

第10章:未来を拓く多文化家族    /川村千鶴子

多文化研は、被災の当事者であり、実践者であり風化してはならない「歴史」を残す<doing history>の旅に出ました。それから9年が経ったのですね。

「安心の居場所」はどこにあるのでしょうか?

川村千鶴子🐢 🐢 🐢 🐢

================

【多読味読<49>:渡辺幸倫(わたなべ ゆきのり)編著『多文化社会の社会教育 公民館・図書館・博物館がつくる「安心の居場所」』(明石書店、2019年3月)】

https://www.akashi.co.jp/smp/book/b451543.html

(アマゾンでもお求めになれます。または、お近くの執筆者までお知らせください)

自分の編著を紹介するのは少し照れる気もして、昨年の3月に発刊されたにもかかわらず、こちらへの投稿が今になってしまいました。

さて、下記の目次でご覧いただける通り、執筆者の大半が当会会員の本書では「多文化多民族化が加速する日本で、住民の自治という経験の積み上げがある社会教育はどのような役割を果たせるのか」を問いました。十分にその問いに答えることはできなかったのかもしれませんが、個人的には初めての編著ですべての作業が新鮮で学びの連続でした。内容はこんな感じです。

(はしがきより)
“博物館、図書館、公民館などの社会教育施設が、変化する住民構成に応じてその活動の内容を変えていくのは当然のことであろう。しかしそれぞれの地域の事情の中で、どのような形があり得るのかといった参考事例が不足していることは否めない。そこで、本書では、現在日本の多文化状況と今後の展望、そして社会教育の課題を概観したうえで、国内外の安心できる居場所の創出にかかわる先進的な博物館、図書館、公民館およびそれに相当する施設での取り組みを紹介していくことで、今後の社会教育の新たな可能性を提示する。”

序章[渡辺幸倫]

第Ⅰ部 日本の外国人集住地域の「安心の居場所」
第1章 協働・共創を支える「安心の居場所」――内発的社会統合政策を拓く[川村千鶴子]
第2章 地方都市部の社会教育ならびに施設における多文化共生活動――静岡県磐田市南御厨地区を事例として[金塚基]

第Ⅱ部 居場所としての公民館
第3章 多文化社会における公民館の役割 難民申請者と地域住民の交流――埼玉県川口市の住民の取り組みを事例に[土田千愛]
第4章 二つの法体系が支える韓国の地域学習施設――光州広域市における「教育」と「支援」の連携事例を中心に[呉世蓮]
第5章 成人移民へフィンランド語教育を提供する公共施設――地域社会とのかかわりと学習以外の機能にも着目して[大谷杏]

第Ⅲ部 本から広がる図書館の取り組み
第6章 日本の多文化都市における図書館の取り組み――「多文化サービス」のあゆみと「安心の居場所」であるための提言[阿部治子]
第7章 多民族国家シンガポールを支える図書館――国民統合と多民族共生[宮原志津子]
第8章 移民・難民のくらしに寄り添う公共図書館――デンマークにおける取り組みに着目して[和気尚美]

第Ⅳ部 見て聞いて触って学ぶ博物館の役割
第9章 学校と博物館の連携の可能性――先住民族について学ぶ「国立アイヌ民族博物館」設立を受けて[若園雄志郎]
第10章 文化の由来を知る――「順益台湾原住民博物館」が担う社会的包摂機能[郭潔蓉]
第11章 ニュージーランドにおける太平洋諸島移民の文化的学習――博物館を中心に[玉井昇]

あとがき

==========

【多読味読<48>:二文字屋修(にもんじや おさむ)「医療・介護現場における外国人材受け入れ体制の整備と課題」『日本慢性期医療協会誌ー特集:外国人材の行方』日本慢性医療協会誌2019年12月号】

目次・表紙・購入方法はこちら

https://jamcf.jp/ltc_books.html

二文字屋修さん

昨日は長時間に亘り、ありがとうございました。
殆ど日本におられない二文字屋さんと、今年は2回もゆっくりお話しを伺う時間をつくって頂き本当にラッキーでした。いつも勇気づけられます。昨日、ご恵与いただいた素晴らしい医療・介護分野の本を今日はしっかり拝読しました。

「医療・介護現場における外国人材受け入れ体制の整備と課題」『日本慢性期医療協会誌ー特集:外国人材の行方』

日本全国各地の受入れ成功事例が実証的に報告され、グラフや写真も多く実にビジュアルで、一つ一つ施設や病院を訪問したいと思いました。奈良・八王子・札幌は特に行きたいです。
今日に至るまでの人生を振り返ってのインタビューでは、二文字屋さんの説得力ある、生の声が聞こえてきました。

「風穴を開けたと思う。外国人労働者の受入れは日本の法人改革、病院のダイバーシテイ経営にも役立つ。徐々に扉が開きつつある受け入れの方向性に、もう後戻りはないのだ!」

多文化研のみなさま

医療・介護分野の外国人材受け入れの日本一の先駆者ですが、最近、入会された多文化研のみなさまに、少しご紹介します。
二文字屋修さんはNPO法人AHPネットワークス執行役員です。
1993年11月に当時の厚生省から事業認可を得た「外国人看護師養成支援事業」に関わってこられました。
2008年までに56人のベトナム人が日本の看護師国家資格を取得したのです。以来現在までにベトナムを中心に看護・介護人材の育成に携わってこられました。本当のパイオニアです。ベトナム語版『老年看護・介護』というテキストも編纂。

ご著書に「暮らしやすい社会という理想にむけて―異文化協働の愉しさ構築」『外国人看護・介護人材とサスティナビリティ』(くろしお出版2018)

近刊には「外国人医療福祉人材の『日本語がわかる』とは」
『介護と看護のための日本語教育実践―現場の窓から』(ミネルバ書房2020年1月)
素晴らしいご家族のことなどは、ご自身から伺ってください。

介護分野における人材確保状況と労働市場の動向(有効求人倍率と失業率の動向)なども本当に参考になりました。
外国人材への期待とその定着に向けて、二文字屋さんにご講演いただける機会をつくりたいですね。
素敵な表紙は添付しました。

購入方法はここから⇒

https://jamcf.jp/ltc_books.html

2007年、私も30年間の老親介護の経験と研究からソンさんと共編者で多文化研の皆様とご一緒に出版しました。

*川村千鶴子 編著  宣 元錫 編著 
『異文化間介護と多文化共生 誰が介護を担うのか』
明石書店(2007年)

http://www.akashi.co.jp/book/b65526.htmlhttp://www.akashi.co.jp/book/b65526.html

異文化介護と介護・看取り・葬儀・弔いへの「生老病死」に寄り添って初めて多文化共創の概念が少し分かり始めました。メルボルン、シドニー、カンザス・シティ、パロアルト、神戸、尼崎、東京の共創・協働のケアシステムの構築の調査を懐かしく思いだします。
「もちつ、もたれつ」の多文化共創社会です。

みなさまもぜひ、二文字屋さんの本を2020年のお正月にお読みになってください。

川村千鶴子

==========

【多読味読<47>:万城目正雄「総論:人口減少社会の現状と海外人材がもたらす発展」『プレス技術』2019年12月特別増大号。日刊工業新聞社】

               川村千鶴子

NHKスペシャル「大廃業時代~会社を看取るおくりびと」(10月6日)に企業のライフサイクルの悲哀を感じられた方も多いと思います。

日本の中小企業は、存続の危機に瀕しており、廃業数は顕著に増大し、経営者の高齢化も進んでいます。展望のない事業をどうやって支えていくのでしょう。
デイビッド・アトキンソン著『新・生産性立国論』では、生産性の低い企業は淘汰され、企業数の減少はむしろ歓迎すべきであるという見解も示されました。みなさんはどう感じておられますか?

月刊『プレス技術12月号』は2つの特集を組んでいます。

特集1.「プレス現場の人手不足を解消する最新自動・ロボット化技術」
特集2.「海外人材の獲得と育成ノウハウ」

なるほど!両方とも重要そうですね!!

http://pub.nikkan.co.jp/cache/6612670bf01b7891445f8c52cf63cac4.jpeg

万城目先生の総論「人口減少社会の現状と海外人材がもたらす発展」では、人口減少と在留外国人の増加が統計データで示され海外人材活用の動向が中小製造業における従業員数過不足DIの推移を示して解説されています。2018年、約146万人の外国人を雇用する事業所は、約21.6万か所。外国人雇用事業所の推移をグラフ化し、その雇用状況を在留資格の分野別に精査しています。産業別外国人労働者の内訳をみると実に多岐にわたっていることも読み取れます。さらに人材獲得のためのエンジニアの採用、新しい技能実習制度の活用、そして新設された特定技能制度のフローをイメージ化して作成されました。そのフローチャートを手掛かりに、私たちは、現場を訪問し、今後の展望を摸索することになるのではないでしょうか。

私の父は、戦後、焼け野原に小さな工務店を開業して、ひたすら丁寧な高品質の建築物を創造してきました。「職人さんが一番大切!」我が家は、いつも職人さんや社員の休憩室で、母はなべ料理をふるまい、皆で伝統文化の祭りと地域コミュニティを支えてきました。
そんなわけで、私は零細中小企業こそが、地域の潤滑油であり、経済活性化の源泉と思っています。

万城目先生は、今後の展望としてSDGs・企業の人権の責任を熱く説いています。2017年11月に日本経団連は、SDGsの達成に向けて「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいてグループ企業、サプライチェーンにも行動改革を促すように求めていました。企業の社会的責任が問われつつ人権保護に根差す雇用と企業の活力は、多文化共創社会の相乗効果と共創価値をもたらすのではないでしょうか。

                     <評者:川村千鶴子>

==============

【多読味読<46>:小林裕子 『司法通訳人のという仕事 知られざる現場』 (慶応義塾大学出版会 2019)】

荒井幸泰(多文化社会研究会理事)

観光客が多く訪れ、労働者不足によって海外から多く住むようになっている今の日本では、外国人が加害者、被害者としてかかわる事件が多くなっていくだろうことは予想される。

司法通訳という仕事を行ったことはないが、存在は知っている。役割、存在が大きくなってきていることも想像できる。特殊言語の通訳に登録した人も知り合いでおり、どの様なことをするのかも、少しは聞いたことがあるが、全体的な実情を聞くことはなかった。

本書の筆者は、司法通訳として長年仕事をしてきた方である。

司法通訳の役割と、必要とされる知識に関して広く知ってもらうために筆をとられたようである。章立てをざっと紹介すると以下のとおり:

I 司法通訳とはどんな仕事か?

IIプロフェッションとしての司法通訳

III来日外国人犯罪、刑事手続きの現状

IV司法通訳人に法律知識は必要ないのか?

Vイメージの違い、厳密な通訳に必要なこと

VIグローバル化する社会と司法、司法通訳の能力向上のために必要なもの

社会言語学あるいは世間一般では、「第一言語」はその人が一番得意とされる言語のことである。しかし、この書の中で出てくる「第一言語」はかなり特殊で、裁判所において、被疑者が日本語をうまく話せないものの場合、被疑者が裁判のプロセスで最大限意思疎通ができる言語だということのようだ。もちろん、第一言語と「母語」が一致するのが理想的であるが、そのようにならないケースも多くある。

来日する外国人は、様々な言語や文化を背景に持つ人々である。よって、それらの人々の言語に対応してすべて対応しきれないので、母語以外で被疑者と通じる言語を模索しなければならない。長く住んでいれば日本語での意思疎通ができるようになるだろうが、それ以外の言語の中であれば、一番可能性のあるのは英語ということになる。実際、筆者は英語の通訳者であるが、英語母語話者以外の様々な人を担当している。

ただ、本書にある2017年のデータ(53頁)によれば、被告人通訳事件で一番多いのは、中国語920件で、全体の4分の1を占めるようだ。ベトナム語(718件)、タガログ語(247件)、ポルトガル語(216件)に続いてようやく英語が5位(190件)に顔を出している。

なお、話すといっても、十全でないことは、かなりうまく話せるという日本人でされ、あらゆるジャンルを英語で自由に話せるとは限らないことからも想像がつく。ましてやラテン語、ギリシャ語等がちりばめられた、英語の専門用語に対応するのは難しい。さらに、聞き手にとっても、それらが適切な英語に訳されたとしても、被疑者の教養のレベルによっては、ネイティブと呼ばれる人々だとしてもちんぷんかんぷんなのだ。日本人が、法廷に立ち、そこで使われる日本語に苦労するぐらいである。

話すもの、そして聞くものの程度の差はあれど、仲介者としている通訳者は、話者の口と、聴者の耳の間をつなぐ管のようなものでなくてはならず、存在を限りなくゼロにすることを理想とする。この書のなかでも何度も強調されることである。そこに必要なものは何であろうか。

当然、法律的な手続きの進め方などに関する知識は必須となる、また、相手文化のことを知らねばならない。お互いの言葉に通じているというだけでは通訳はできない。法律に関する通訳であれば、当然、法律に関する専門的な知識が必要になるだろう。しかし、そのような知識を持つ人が法廷で通訳に立たない場合もあることを筆者は指摘している。さらに、稀ではあるが、通訳としての資質が疑われる人が通訳として法廷に立つ場合(例えば34~37頁にある事例)もあるとのこと。

また、法律や社会秩序に関する文化的違いは、同じ言葉を使っても違う理解をされてしまうことが強調される。もちろん先ほど挙げた教養の差もここにはかかわってくるだろう。評者が経験者として分かることは、そのまま訳しても相手が分からないと表情をすれば、それをかみ砕き説明してでもなんとか伝えようとすることである。だが、時として解釈のし過ぎなど、「善意」が暴走することもあることを、本書は挙げている(40~41頁)。こうなると、通訳はゼロの存在とは言えないかもしれない。

現状においても、通訳の不足が指摘されていることも付け加えておかなければならないだろう。

最終章VIで、以上のような現状から、日本弁護士連合会が2013年、『法廷通訳についての立法提案に関する意見書』が出され、そこでは数の確保、質の確保、そして報酬基準の設定などに重点が置かれていることを紹介した上で、特に質の問題に関して、アメリカとの比較において検討が加えられている。

評者は、通訳、翻訳論を授業として担当したことがある。司法通訳に関しては、思い浮かぶものを上げると、丁海玉 『法廷通訳人 裁判所で日本語と韓国語を行き来する』(港の人 2015)で韓国語、森田靖郎 『司法通訳だけが知っている日本の中国人社会』(祥伝社新書 2007)で中国語の事情をある程度把握したが、本書は、通訳としての経験以上に、大学で教鞭をとり、論文の中で述べられている日本やアメリカの司法通訳士の扱いなどが紹介され、より全体が把握できるものとなっている。

水野真木子・内藤稔 『コミュニティ通訳 多文化共生社会のコミュニケーション』(みすず書房 2015)のような、国家機関や公的な機関よりもより、民間に近いレベルでの通訳に関して述べられた本でも、ここで挙げたような問題があることが挙げられていて、司法通訳に関する新しい知見を得るとともに、社会全体に共有される問題があることを改めて知ることが出来た。

個人的に言えば、通訳は英語や中国語など、ある程度の需要がある言語を除くと、なかなか通訳が育たない。本書の最終章に上げられたものの、それほどきちんと検討されなかった報酬基準などはもう少し考えねばならない問題のように思える。

日本人にとって、水がタダであるのと同じで、コミュニケーションに必要な技術もほぼタダだと思われている節が多いように思える。

来年行われるオリンピックにおいても、通訳はボランティア任せにしている部分が多くあるように見受けられるが、それで質が確保できると考えているのだろうかというところに甘さを感じてしまう。異言語を修得するのには、血のにじむような努力を必要とすると、自分の経験から考えるのだが、その報酬としてはあまりに少ないことが多い。だからなり手が少なく、質も保てないという状況にあるということが、実は本書に述べられていないが、強調しておきたいところである。

なお、ここでは外国人に関することが強調されているが、手話通訳も非常に重要な役割を果たす人々である、実態に関して、研究書を手に取ったことはないが、小説として、丸山正樹 『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(文藝春秋:文春文庫 2015)が面白いのでぜひ最後に紹介しておきたい(決して主人公が荒井という名前だから紹介しているわけでははない)

荒井幸泰

=============

【多読味読<45>:万城目正雄「特集:現場の新たな戦力へ!外国人材活用成功マニュアル」『工場管理』Factory Management 2019年11月号。日刊工業新聞社】

みなさんは『工場管理』という月刊誌を読まれたことがありますか?

日本を支える製造業の現場のリアリティを知る優れた雑誌です。

外国人材をどのように育て、職場の仲間として受け入れていくべきか。

その難問をいかに具体的に分かりやすく解説するか、教務委員長でいつもご多忙の万城目先生が長時間かけて取り組んでこられました。

『工場管理11月号』拝読いたしました。ありがとうございます。

外国人材を初めて受け入れるケースを想定し、法令上のルールの理解から、受入れ準備、現場での育成、生活支援に至るまでの留意点を詳述されました。万城目先生の分析と解説が、25頁に亘って掲載されています。出入国管理とは何か。29項目の在留資格制度を理解し、国籍別、産業別・事業所規模別の統計資料を読み解きました。技能実習制度と特定技能制度を理解し、経営面での受入れ体制を現実に整えていく道程には、おそらく想定外のご苦労も多々あろうかと思います。

特に適正な労働条件の確保と送り出し機関の役割や、とも働くための現場マニュアルの作成や安全教育やコミュニケーション教育と交流イベントの開催、住宅・医療・行政手続きの一連の支援を読んでいると、フー!「ダイバーシティ・マネジメント」と気安く気楽には言えなくなります。

多大なエネルギーと共創コストを未来への投資と肯定的に捉え、零細中小企業の経営者のみなさまが

「よし、うちもやってみようじゃないか」という意欲的な希望を持つためには、どうしたらいいでしょうか。

本書にあったそれぞれの国の理解とどん底から這い上がったグッドプラクティスのライフストーリーが勇気づけになっています。いやいや家業を継いだ社長さんが、NPO法人難民支援協会との連携でミャンマー難民、シリアなど中東諸国をはじめとして

さまざまな国の人を採用していった実話も満載されています。

 多文化研の事務局長として、いろいろなプロジェクトに取り組んでおられる万城目先生は、現在、東海大学教養学部人間環境学科の准教授ですが、国際研修協力機構(JITCO)に約20年も勤務されました。その間、技能実習生を受け入れた全国の中小企業を一万社以上も訪問されてこられました。

きっとトラブルも成功例あったと思います。

外国人材を雇用する中小企業の現場や農家の実態を目の当たりにし、多文化社会研究とは、「日本社会を映し出す鏡!!」という共感も湧きました。

インドネシア、フィリピン、ベトナムなどアセアン諸国との送出国政府との実務者協議にも多数参加され、技能実習機構・産業人材育成機構の検討委員会委員をなさっています。

外国人材との共創協働、中小企業の海外展開など国際機関や経済団体企業からの講演依頼でお忙しい中、外国人集住都市会議の基礎となるアンケート調査の分析作業など地味な仕事も大好きな感じです。

職人気質というのかしら。

さて、↓ここを開けると表紙と触りの文章を読むことができます。

http://pub.nikkan.co.jp/magazines/detail/00000904

【はじめに】これからの外国人材活用で留意すべきこと

東海大学 万城目正雄

【解説編1】外国人材受入れ準備マニュアル

東海大学 万城目正雄

【解説編2】現場マニュアル(ともに働く)

【事例編1】イノベーションにつなげるため戦略的に外国人を雇用

栄鋳造所

【事例編2】社員の7割が外国人!8カ国42人の多国籍企業の現場マネジメント

赤原製作所

【事例編3】ベトナム人材採用・活用ノウハウを外国人材紹介ビジネスへ発展

柴田合成

【事例編4】ミャンマー人を正社員として採用 国籍問わず平等にチャンスを与える

大阪銘板

【事例編5】女性外国人労働者が多数活躍する開発型自動車部品メーカー

備前発条

「国際貢献」などという気負った言葉は使わず、辛い製造業、さんちゃん農業、ビルクリーニング、建設業、介護などの仕事を通して、技能実習・特定技能に活躍する方々とホントの信頼関係が築けたら、若者たちは「かけはし」となり、幸福の連鎖が夢ではなくなります。中小企業の弛まぬ努力に光をあててみると技能実習制度は、廃止すべきではなく、改善に改善を重ねて、協力の輪を広げ、日本の産業と持続可能な社会を構築する基礎となっていくと私は感じております。

『工場管理11月号』は、人を雇用することの責任の重さと次世代の工場構築への道を拓く知恵を、「現場の実践」から伝える新しいアクティブ・ラーニングと言えるのではないでしょうか。

川村千鶴子

==========

【多読味読<44>:小泉康一編著『「難民」をどう捉えるか-難民・強制移動研究の理論と方法』慶應義塾大学出版会、P385 、2019年10月30日】

Searching for Directions:

Conceptual and Methodological Challenges in Refugee and Forced Migration Studies

http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766426076/

本書のページをめくる毎に、人類は常に〈移動〉を強いられてきたことを認識し、新たな苦難が今日も始まっていることに気づかされます。帰る「安心の居場所」があり、相互ケアしあう仲間や家族がいることの有難みを心から感謝する気持ちにもなります。

難民に関する新聞・雑誌記事や映画・テレビ番組の背景と深層にある厳しさと矛盾を直視し、冷静に明晰化し、国家、国境、移住、ネットワークについての基礎理論から、新たな思考法が必要であることを示唆してくれる「原典」ともいえる一冊だと思います。

小泉康一先生はじめ共著者の皆々さまのそれぞれの玉稿拝読しております。

このような優れた書籍を上梓し続ける出版社の存在は永遠だと確信しております。

編集を担当された慶應義塾大学出版会の木内鉄也氏の鋭い洞察力と忍耐力、さすがです。

多文化研の皆様には素晴らしい表紙と目次(以下)を追っていただけると、新しい課題に取り組んだ学術書であることがお分かりいただけると思います。

是非ご愛読くださいませ。私は、ライフサイクル論にそって新垣修先生の第8章 人間の新しいつくり方―国際代理出産と無国籍―から拝読しました。

はしがき

序 章 難民・強制移動研究とは何か――分野と現状(小泉康一)

 はじめに

1 現代世界の逃亡と庇護

2 強制移動を形成する主要なテーマ

 おわりに

 第Ⅰ部 難民・強制移動研究を捉える視座と分析枠組み

第1章 難民・強制移動研究の理論と方法(小泉康一)

 はじめに

1 研究の目的と範囲

2 用語・概念と分類

3 学際的な中範囲の理論をめざして

4 学際研究――さまざまな学問分野からのアプローチ

5 研究の方法

6 研究と倫理

 おわりに

第2章 難民と人道主義――歴史的視点からのアプローチ(上野友也)

 はじめに

1 人道とは何か

2 第二次世界大戦と戦後処理

3 冷戦と植民地解放

4 冷戦終結後の現代

5 難民支援の意味

 おわりに

 第Ⅱ部 移動のダイナミクス――発生要因とプロセス

第3章 紛争・政治対立と移動のダイナミクス――移民/難民の主体的な移動先選択(錦田愛子)

 はじめに

1 多様化する「紛争」難民の現状

2 移民政策と移動の過程についての先行研究

3 移動の動機を探る――質的・量的研究の併用アプローチ

4 なぜ、そこへ移動するのか――アラブ系移民/難民の移動の選好

5 結論

 おわりに

第4章 環境および開発と難民・強制移動――開発事業に伴う立ち退きと生活再建(浜本篤史)

 はじめに

1 強制移動としてのダム建設による立ち退き問題

2 代表的な研究枠組みとモデル

3 中国の経験をどう見るか

 おわりに――当事者の視点と隣接領域との接合

第5章 ジェンダーと難民・強制移動――抜け落ちる難民女性への視点(中村文子)

 はじめに

1 難民危機の時代と難民女性の現状

2 難民女性の被迫害要因

3 国際社会の対応と課題

 おわりに

 第Ⅲ部 法制度と政策――国家の管理と国際組織

第6章 法・政治理論と強制移動――難民保護と国際法・制度の現在(池田丈佑)

 はじめに

1 救う側の論理(1)

2 救う側の論理(2)

3 救われる側の論理

 おわりに

第7章 国際協調と国際機関――難民レジームの展開と新たな負担分担の模索(佐藤滋之)

 はじめに

1 難民に関する国際協調はなぜ必要か

2 難民問題に関する国際協調の萌芽

3 第二次世界大戦後の難民レジームの成立

4 UNHCRに見る国際協調を形作る「力」

5 「規範」の形成とレジームの変容

6 難民保護の新しいアプローチと「利益」のダイナミズム

 おわりに――国際協調と負担分担の未来

第8章 無国籍とは何か――削減条約の現代的課題における作用(新垣修)

 はじめに

1 無国籍者と無国籍削減条約

2 人間の新しいつくり方――国際代理出産と無国籍

3 国籍剥奪と無国籍

4 消えゆく島嶼国家と無国籍

 おわりに

 第Ⅳ部 難民の生活と社会――定住と共生、再構築への道

第9章 国内移動と国際移動(杉木明子)

 はじめに

1 難民の移動と移動モデル

2 国内移動

3 国際移動

 おわりに

第10章 新たな人生に向き合う――難民の暮らしとメンタルヘルス(森谷康文)

 はじめに

1 トラウマとは何か

2 「一般化されたトラウマ」の採用――オーストラリアの政策と定住支援

3 難民のトラウマとどのように向き合うのか――オーストラリアの定住支援を通して

 おわりに

第11章 メディアの機能と影響――治安と安全保障、彼らは負担か資源か(藤巻秀樹)

 はじめに

1 メディアから見た難民

2 報道を変えた難民政策

3 新聞の社説に見る難民

 おわりに

第12章 定住と社会統合――アイデンティティの再確立(小泉康一)

 はじめに

1 定住の目的と内容

2 定住を支える制度的枠組み

3 統合――用語と要因

4 統合――難民の社会編入

 おわりに

 第Ⅴ部 地域研究――事例分析と研究手法、課題の発掘

第13章 ダルフール紛争における国内避難民支援と遊牧民(堀江正伸)

 はじめに

1 遊牧民の置かれた状況

2 ダルフール紛争と人道支援

3 IDPと遊牧民

4 新しいモルニでの生活手段

5 外部者による再分類

6 国際機関のめざす解決策

 おわりに

第14章 トルコにおけるシリア難民の受け入れ――庇護、定住・帰化、帰還をめぐる難民政策の特質と課題(伊藤寛了)

 はじめに

1 先行研究と分析手順

2 トルコにおける難民政策の史的展開

3 一時保護体制下のシリア難民支援と実状

4 人道主義に優先される実利主義

 おわりに

第15章 「脱北」元日本人妻の日本再定住(宮塚寿美子)

 はじめに

1 帰国事業と日本再定住の脱北者

2 日本人妻をめぐる研究動向

3 日本人妻の北朝鮮での生活

4 日朝関係の推移と日本人妻の日本再定住

 おわりに

索引だけでも11頁ありました。

大東文化大学の東松山の毎週の学バスでの出会いは、本当に幸運でした。

感謝の気持ちを込めて、小泉先生のプロフィールをご紹介申し上げます。

 <https://www.keio-up.co.jp/img/cover_s/26070.jpg> 「難民」をどう捉えるか

【編著者】小泉 康一[はしがき、序章、第1章、第12章] 大東文化大学名誉教授

 1973年東京外国語大学卒業、1977年同大学院修士課程修了。その後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)タイ駐在プログラム・オフィサー、英オックスフォード大学難民研究所客員研究員、スイス・ジュネーヴ大学国際関係高等研究所客員研究員、大東文化大学国際関係学部教授などを経て、同大学名誉教授。

主要業績に『変貌する「難民」と崩壊する国際人道制度:21世紀における難民・強制移動研究の分析枠組み』(ナカニシヤ出版、2018年)、『グローバル・イシュー:都市難民』(ナカニシヤ出版、2017年)、

『多文化「共創」社会入門:移民・難民とともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』(共編著、慶應義塾大学出版会、2016年)、Urban Refugees:Challenges in Protection, Services and Policy (共編著、Routledge、2015)、

『グローバル時代の難民』(ナカニシヤ出版、2015年)、

『国際強制移動とグローバル・ガバナンス』(御茶の水書房、2013年)、

『グローバリゼーションと国際強制移動』(勁草書房、2009年)、

『国際強制移動の政治社会学』(勁草書房、2005年)、『「難民」とは何か』(三一書房、1998年)など。

川村千鶴子

========

【多読味読<43>:OECD(経済協力開発機構)&UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)『難民と働く―雇用主との連携において雇用主、難民、政府、市民社会へ向けた10のアクションプラン』日本語版2018年12月UNHCR駐日事務所初版発行】

                    川村千鶴子 2019年10月4日

みなさまは、難民とともに働くというテーマに主眼を置かれたことがありますか。本書は実現可能なアクションプランを提案し、未来を切り拓く多文化共創の視座に立っています。
多文化研も難民の方々に支えられています。難民の方々は様々な知識や技術や専門性を持っていることが多く、新たな市場を創出し、受入国に貢献できる可能性を秘めています。
本書のページをめくるごとに、英国、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、トルコ、オーストリア、ハンガリー、フランス、ニュージーランド、ドイツ、カナダなどのグッドプラクティスが掲載されています。同時に次々に「ご存知でしたか?」というコラム(アクション例)を読んでいて、私はこれなら日本でもできる!と勇気づけられました。多文化研の皆様の中にはすでに始められている経営者の方々もいると思います。
履歴書を書くのを手伝っている学生たちもいました。

雇用主は、主体的にインターシップやアプレンティスシップ(実地職業訓練のための見習い制度)、オン・ザ・ジョブ・トレーニング、そして雇用を通して難民に機会を提供し、グローバルな市民と捉えています。
雇用主と難民との「ともに働く」関係性に主眼を置き、実践を通して協働共創の価値を説いている点で、非常に説得力のある読み応えのある一冊だと思いました。
具体的に雇用主との連携において雇用主、難民、政府、市民社会へ向けた10のアクションプランが詳述されています。
読み進むにつれて意識改革にも繋がっている点が画期的です。
ぜひ、以下の流れに目を通してください。
1.行政の枠組みをうまく運用・活用する。
2.雇用主に法的な確実性を提供する。
3.難民のスキルを特定し、検証する。
このあたりからポジティブな気持ちになります。
4.雇用において求められるスキルを磨く。
5.難民の能力と雇用主のニーズをマッチさせる。
6.採用における機会均等を確保し、固定観念とたたかう。
ここが凄く大事で、経営者は、自らの職場の労働環境を見直すことになります。
7.労働環境を整備する。
8.長期的な雇用を可能にする。
経営者が自信をもって難民とともに働くことによって新たな展望を拓き、「共創価値」を生み出すことができます。
9.難民雇用をビジネスチャンスにする。
10.当事者間のコーディネーションをする。
これらのアクションプランから、日本社会全体でどのように難民の労働市場への統合ができるのだろうか。
多文化共創とは何か。ヒントが込められています。
理論だけを羅列するのではなく、実用的なツールによって実践できる道を拓くことが、多文化共創社会の実現に繋がることを感じました。難民のスキルや特性は受入れ国に重要な経済的可能性をもたらすと思います。
 UNHCR駐日事務所のみなさまのご尽力に感謝いたします。
                             川村千鶴子

================

【多読味読<42>:佐伯康考Yasutaka, Saeki『国際的な人の移動の経済学』ECONOMICS OF MIGRATION 明石書店2019年3月19日発行179頁】

多文化研の理事である佐伯康考さんは、大阪大学共創機構社学共創本部に勤務されています。2018年1月、社会と「共に価値を創造する」ことを理念とする共創機構が設立されました。複雑化する現代社会の社会課題解決のためには、大学だけの視点ではなく、企業・自治体・地域社会・市民団体などとの「共創」によって従来にはなかったイノベーティブな発想による価値創造に取り組んでこられました。「共創」の概念をテーマとして外国人労働者を中心とした国際的な人の移動について研究されています。つまり異質なものが混ざることによって生じる摩擦や軋轢を「対立」ではなく、「原動力」として新しい社会イノベーションを生み出すことをめざし、活動をしてこられたわけです。

本書は、国際経済学と労働経済学のアプローチを連関させ、従来の研究では行われてこなかった国際的な人の移動と国内における人の移動を同時に捉えた地域労働市場の分析を行っています。佐伯康考さんの長年のご努力の学位論文の刊行と伺っております。先行研究をくまなく精読され、どんなにか大変だったことと思います。御母上・美都子さまの人工透析35年目を迎える日に、本書を上梓され、巻末に感謝の気持ちが述べられており感動いたしました。さらに著者印税分全額を、外国にルーツをもつ子どもたちの学習支援活動に寄付されることが書かれており、佐伯さんの想いが伝わってきました。ぜひ注文してください。

2019年4月、改正入管法の施行とともに、日本の外国人政策が大きな転換期を迎えたまさにその時に刊行されました。国際経済学と労働経済学のアプローチを組み合わせて、理論的、実証的に分析し、多文化共創社会へ向けた課題解決を考察しています。本の最後第4部には、佐伯さんの具体的な説得力ある5項目の制度・政策提言があります。賛成です。
「第7章 国際的な人の移動の潜在力―多文化共創社会への視座―」です。

■以下の目次から本書の流れを読み取っていただけると幸いです。

序 章
第I部 国際的な人の移動の経済学的分析
第1章 経済統合と地域労働需給ミスマッチ

第II部 新興国の台頭と東アジア域内における国際的な人の移動
第2章 日本から新興国への高度人材移動に関する経済学的研究
第3章 ASEAN経済統合下における日系企業の人材現地化及び人材移動に関する経済学的考察

第III部 国内労働市場における外国人労働者の役割と社会統合の課題
第4章 地域労働市場の需給ミスマッチとアグロメレーションに関する経済学的研究
第5章 地域労働市場の需給ミスマッチと外国人労働者の動向

―日系人、新日系人及び技能実習生をめぐって―
第6章 定住外国人の子どもの高校進学についての経済学的研究

第IV部 制度・政策提言
第7章 国際的な人の移動の潜在力

―多文化共創社会への視座―

■以下は佐伯康考さんのプロフィールです。博士(経済学)。

東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室特任助教などを経て、大阪大学共創機構社学共創本部特任助教。外国人労働者を中心とした国際的な人の移動について研究を行っている。共編著に『街に拓く大学―大阪大学の社学共創―』(大阪大学出版会, 2019)、『グローバルな公共倫理とソーシャル・イノベーション』(金子書房, 2018)。(移民政策学会国際交流委員・社会連携委員,多文化研理事)

■おそらく、経済学と統計学のアプローチに関しては、万城目正雄さんから書評をいただいたほうが的確と思いますので、お願いいたします。現在、万城目さんは三重県に出張中で、次々と講演にお忙しいので、9月ごろひと段落したら、よろしくお願いいたします。

【多読味読】欄は、会員の皆様がどなたでも気楽に良書をご紹介いただけるコラム欄です。

ぜひご寄稿くださいませ。

川村千鶴子

================

【多読味読<41>:小笠原理恵著『多文化共生の医療社会学ー中国帰国者の語りから考える日本のマイノリティ・ヘルス』Minority Health 大阪大学出版会 2019年1月 251頁】

多文化研のみなさま  

No one will be left behind!
外国人労働者受入を拡大するなか、日本の医療は生活者たる彼らにどのように向き合っていくのでしょうか。本書は、詳細な病院調査と中国帰国者の日常診療から問い直しておられます。
外国人労働者受入れ拡大のなか、日本の保健医療が、生活者たる彼ら・彼女らにいかに向きあい、健康を支えていくのか。
多文化共生基本法をつくる際には、この健康格差にも向き合ってほしいものです。

2017年の博士学位論文を基盤とし、特に中国帰国者に焦点を当てた本書は、日本におけるマイノリティ人口の動態から始まり、日本の社会保障制度の歴史と変遷をきちんと整理して論文のベースにしています。日本の社会保障制度を学ぶ本でもあります。
病院職員を対象とした独自の丹念な調査がある力作です。
そして中国帰国者(帰国を果した中国残留孤児とその家族)の日常診療のオーラル・ヒストリーから、マイノリティ住民に対するこれまでの日本の医療のあり方を鋭く問いています。医療者、医療通訳者、行政担当者そして人権を守る支援者たちの共創の記録とも言えますね。

目次をご紹介します。

第1章 日本のマイノリティ・ヘルス
第2章 統計からみる日本のマイノリティ人口の動態
第3章 外国籍住民にまつわる社会保障制度の変遷
第4章 マイノリティ・ヘルスに関する研究の動向―欧米と日本
第5章 医療現場におけるマイノリティ患者対応
第6章 中国帰国者の概要
第7章 中国帰国者の受療の語り
第8章 中国帰国者の語りから考える日本の医療

そして著者/小笠原理恵さんのプロフィールです。
大阪大学大学院人間科学研究科助教(大阪大学ユネスコチェアGlobal Health and Education担当)、医療通訳士協議会事務局長、大阪大学医学部附属病院国際医療センター運営委員。博士(人間科学)。
ご専門は国際保健、多文化共生、医療社会学。1993年徳間ジャパンコミュニケーションズ株式会社宣伝部、
1996年北京中央戯劇学院・北京語言学院(現・北京語言文化大学)語学留学、
1998年北京電揚広告有限公司、1999年上海International SOS有限公司を経て渡米。
米国アリゾナ州で看護学を学んだ後、2004年から中国上海市の外資系医療機関ワールドリンク・メディカル&デンタルセンター(現・パークウェイヘルス・メディカルセンター)でクリニック・マネージャーを務め、世界各国から集まった医療従事者とともに、主に上海在住外国人に対する医療サービスの提供に従事。
2011年から大阪大学大学院人間科学研究科博士課程に在籍し、言語や文化の異なる環境下における人びとの保健医療に関する研究に取り組む。
2017年博士後期課程修了、特任研究員を経て2018年より現職。

私も「健康格差」をテーマに何度か講演したことがございます。
「国の平均値の中に埋もれてしまったデータを掘り起こし、健康格差の存在に光をあてはじめた国が増えています。」

CLOSING THE GAP: Policy into practice on social determinants of health.

あらためて健康格差が世界中のすべての国や地域で問題になっていることを痛感いたしました。
貫隆夫先生、貴重な本書をご恵贈いただきありがとうございました。
多文化研の皆様と共有回覧しながら、宝物にしたいと思います。

感謝を込めて。

川村千鶴子🐢
Emeritus Prof. Dr. Chizuko Kawamura
Daito Bunka University

================

【多読味読<40>:明石純一「2018年入管法改正ーその政策的含意についてー」
特集●「移民社会」をどう捉えるか 『三田評論』2019年7月号 慶應義塾大学出版会443円】

明石純一さま 多文化研のみなさま
CC:木内鉄也様(慶應義塾大学出版会)

特集「移民社会をどうとらえるか」、これまでの30年を振り返りながら、玉稿、興味深く拝読いたしました。
明石さんの論考は以下の3つから分析しておられます。
・歴史的転換なのかー否定的見解
・歴史的転換なのかー肯定的見解
・政治的含意―入管法改正の「副産物」?

改正入管法の目玉である「特定技能」の1号の導入は、付随する制度的な副産物を生み出したのではないか、とする明石さんのご意見に同感です。就労が続く限り在留期間に限りがなく、家族の呼び寄せや定住が認められる「特定技能」の二号の併設、そしてまずは211億円の予算が計上されて、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が取りまとめられました。
実は、先週、浜松市国際課、大泉町、太田市、静岡県の職員研修会でテーマ「外国人の高齢化」の講演の最後に逆に私の方から、自治体職員の方々に今回の改正をどのように感じられているかを質問しました。
外国人集住都市会議への意欲がある一方、戸惑いがあることも話してくださいました。
「特定技能」一号に対する「支援」の義務付けに関して企業経営者の戸惑いがあると思いますが、「雇用とはともに働くこと=自己実現への道」という原点にたち、雇用・就労・キャリアそして、生きる喜び=幸福を再確認できる機会でもありますね。
私は、ライフサイクル論の中で「ともに働く」ことが人間発達の源であり、自立→自己実現への道が開かれるように、職場における「安心の居場所」の“共創”こそが今度の鍵を握ると考えております。

日本には270万人をこえる在留外国人が生活しているという現実だけでなく、3世、4世、5世の時代を迎え、“外国にルーツをもつ高齢者”の実態を長期的に調査してきました。
90年代からの在留日系人の人口ピラミッドを万城目正雄さんが作成してくださったのですが、10年後の
高齢化は明らかで、「移民社会化」の焦点が見えてきますね。国際結婚、帰化者の増加、外国育ちの日本人などの日本人の多様化をもっともっと明晰化する必要があると考えています。

多様化する日本の現実に向き合う特集号として本書の座談会も面白かったです。座談会「移民社会化から
考えるこれからの日本」では塩原良和さんの司会も素晴らしいと思いました。
以下は、目次からご紹介します。
・毛受敏浩:公益財団法人日本国際交流センター執行理事・塾員
・施 光恒:九州大学大学院比較社会文化研究院准教授・塾員
・松元雅和:日本大学法学部准教授・塾員
・望月優大:ライター、「ニッポン複雑紀行」編集長・塾員
・塩原良和 慶應義塾大学法学部教授(司会)
■二〇一八年入管法改正──その政策的含意について
明石純一 筑波大学人文社会系准教授
■新元号の年を移民社会で迎えよう
坂中英徳 一般社団法人移民政策研究所所長・塾員
■移民社会フランスの新たな挑戦
森 千香子 一橋大学大学院社会学研究科准教授
■「川崎」にある、多文化共生の姿──若者たちは何を夢見るのか   磯部 涼 ライター
▽KEIO Reportなどでした。
図書館旧館改修工事の終了 渡辺浩史
留学生向け就職支援の試み 小尾晋之介/森澤珠里
も興味深く拝読いたしました。

御礼まで

川村千鶴子

===============

【多読味読<39>:山上博信「一隅を照らす教育制度に思いをはせて」『多文化社会の教育課題―学びの多様性と学習権の保障 Educational Challenges in a Multicultural Society: Diversity and the Right to Learn 』明石書店2014年3月312頁】

多文化研のみなさま

ハンセン病患者と家族への“隔離の壁”“偏見や差別の壁”をどう取り払えばいいのでしょう?ご意見をお寄せくださいませ。

山上博信さんは、六甲山に囲まれた神戸に生まれ育ちました。
関西学院大学大学院法学研究科博士課程、大学講師(刑事法)、行政書士でもあり、国境地域研究センター、名古屋こども専門学校専任講師です。山上さんとは、日本島嶼学会理事会でも国立民族学博物館共同研究でもいつもご一緒で、数年前ご一緒に沖縄を旅することができました。奄美、小笠原、沖縄など国境線が動いて日本社会になった地域とパラオや樺太、台湾、韓国など国境線が去って外国となった地域のくらし、生存権保障と法整備のあり方を研究されてきました。
「一隅を照らす教育制度に思いをはせて」というタイトルで本書『多文化社会の教育課題』で、ハンセン病患者、神戸水上生活者、被差別部落の学習権について鋭い貴重な論考を寄稿してくださったのは2013年秋でした。
「日本政府の誤った政策により、療養所にいた子どもたちの心身に取り返しのつかない影響を与えてきた」歴史を詳述し、差別と偏見に耐えながら生きる子どもたちと家族についてです。
山上さんが撮影掲載した5枚の写真と論考の迫力をご高覧くださいませ。
沖縄本島の国立療養所内の学校の写真(109頁)、沖縄愛楽園に1951年設立された琉球政府立澄井初等中等学校の記念碑の写真(110頁)を見るとジーンときます。(遅くとも1960年には、医学的見地からハンセン病が隔離政策を必要とする疾患ではなくっていた。)

4.ハンセン病と教育
・ハンセン病患者たちと教育の機会の著しい制限
・療養所内の学校
・地域住民の差別

再読してみました。

■基礎教育機会確保法が成立したのは、本書が刊行されて2年後の2016年でした。ぜひ、再読してみてください。
共著者の先生方は、郭潔蓉、金朋央、長邊成章、原友章、長谷部美佳、小林普子、ガルディ(内モンゴル出身)、渡辺幸倫、角谷敦史、三浦純子先生の多文化研の皆様です。

■次回多文化研は、7月27日聖心女子大学です。

会場案内は、以下のURLをクリックしてください。

https://tabunkaken.com/

■【多読味読】はみなさまから直接MLにご寄稿いただけます。
ぜひ良書をご紹介くださいませ。

川村千鶴子

=============

【多読味読<38>:李節子編著『在日外国人の健康支援と医療通訳―誰一人取り残さないために』(株)杏林書院、2018年9月】

李錦純(くんすん)さま みなさま

「Leave no one behind:誰一人取り残さない」の理念は、第70回国連総会で採択された「我々の世界と変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」「17の持続可能な開発目標(SDGs)」の根底に流れる理念です。と同時に、私は、2002年の『多文化教育を拓く』でご一緒したときから、いつも李節子先生の生涯を貫く強い信念だと感じてきました。李錦純先生はじめ尽力される29名の医療関係の執筆者が総力を結集して本書を上梓されたこと、心からの敬意とご恵与への感謝の気持ちをお伝えします。

日本の保健医療福祉制度は世界に誇れるすばらしいものですが、在日外国人の健康支援には、言葉の違いや文化や制度の違いから生じる不具合など、目に見えない問題が数多く残されています。
本書の編集・レイアウトは、実にユニークで、図表が多く、さまざまな現場を想定したグッドプラクティス事例が展開されていて、理解を深めることができます。
特に「在日外国人の保険・医療・福祉の保障と法体系」から拝読しました。とても分かりやすいですね。
実際に医療従事者だけでなく、自治体職員や教師が、ややこしい法体系をどう説明したらよいのかが工夫がされていて必読書と思います。
そして、終末期看護のところの解説にある「終末期の人々にとって最善のケアとは何か」を拝読し、敬服しております。
終章には、在日外国人に関する国家試験問題にも対応できる内容が記述されていて興味深いです。

多文化研のみなさま 
人生周期(ライフサイクル)の「生」から「死」を迎えるまでの医療と相互ケアを理解する素晴らしい本です。
私には書評を書くだけの力量はありませんが、以下に目次をご紹介して【多読味読】とさせていただきます。
みなさまも【多読味読】に気楽に良書をご紹介くださいませ。

第1章 在日外国人の健康支援総論
1 在日外国人の健康支援原論
 1.「国際人流時代」と人々の健康
 2.時代が求める医療人としての倫理的責務と本来業務
Column ジュネーブ宣言と私
 3.在日外国人について
 4.日本における外国人の健康課題
 5.日本における外国人の人口動態と健康課題
 6.多文化共生時代における医療通訳と外国人への健康支援
医療の国際展開に関する厚生労働省の取り組み
-外国人患者受け入れ体制の整備について-
2 在日外国人の保健・医療・福祉の保障と法体系
 1.在日外国人の社会保障と健康に対する権利
 2.在日外国人の保健・医療・福祉に関する実務運用の現状
 3.個人の尊厳の非差別・平等の保障と確保に向けて
3 在日外国人医療のめざすもの
 1.現実に存在する健康格差
 2.外国人の医療アクセスを困難にするもの
 3.言葉の対応はどこまで進んだのか
 4.社会制度や資源の活用に関するもの
 5.改善のための道筋を探る
 6.これからの日本社会と外国人医療
4 医療人として異文化対応で知っておくべきこと
 1.医療は文化
 2.習慣や文化の違いを認識する
 3.宗教上の行為を尊重する
 4.診療では最初に毅然と対応する
 5.来日直後の外国人のカルチャーショック
 6.アジアの国の変化は早い
5 災害時における外国人被災者支援-多文化共生の視点から-
 1.熊本地震と外国人被災者
 2.NGOによる外国人被災者への救援・支援活動
 3.災害時の多文化共生の検証
 4.災害時の多文化共生の具体化へ向けて
 Column 大地震を経験したWさん
 Column 医学生として
6 在日外国人の「こころの健康」支援
 1.こころの健康とは
 2.こころの健康支援で知っておくべきこと
 3.外国人のこころの健康支援とは
 4.外国人のこころの健康支援-アプローチの仕方-
 5.支援のためのCultural Competenceの向上

第2章 在日外国人の包括的健康支援のための事例展開
地域保健
 1 外国人かかりつけ医療
 2 訪問・在宅看護
 3 地域における外国人女性のDV・生活支援
母子(女性)保健
 1 DV被害者への看護
 2 赤ちゃん訪問指導
 3 周産期における母子看護
 4 地域における子育て支援
 5 小児医療・予防接種
精神保健
 1 地域在住外国人のメンタルヘルスとその支援
高齢者保健
 1 介護支援
 2 終末期看護
歯科保健
 1 歯科保健・歯科医療対策
社会福祉
 1 障がい者支援
 2 児童福祉—その1—
 3 児童福祉—その2—
 4 生活困窮者支援
学校保健
 1 就学支援
 2 健康診断
 Column 多文化共生保育の現場からの健康支援
労働衛生
 1 健康相談,健診,予防教育,診療等-その1-
 2 健康相談,健診,予防教育,診療等-その2-
感染症対策
 1 結 核
 2 HIV
災害医療
 1 災害時における外国人母子への支援
救急医療
 1 救急外科医療
 2 訪日外国人医療-その1-
 3 訪日外国人医療-その2-
 Column 医療を受ける際の意思決定

第3章 在日外国人に関する保健師助産師看護師国家試験問題解説
 1.保健師国家試験問題
 2.助産師国家試験問題
 3.看護師国家試験問題
 Column 多様性を包摂してきた日本

クンスン様
同封くださった貴論文も一気に拝読いたしました。
◎李錦純、西内陽子、高橋芙沙子「看護・介護者がとらえる在日コリアン高齢者支援における特徴と困難感」
(兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要別刷第24巻)
これまでの長い研究蓄積をさらに充実された考察でした。
在日コリアンの日本在住歴が長期に及ぶにつれて、世代交代が進み、介護現場においても利用者の価値観や特徴に変化が表れています。
独居や認知症、家族の疲弊の増加も拝読しました。
最近はなかなかお目にかかれませんが、多文化研MLで意見交換ができれば幸いです。

================

【多読味読<37>:移住連
(特定非営利活動法人・
  移住者と連帯する全国ネットワーク)
『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』
  明石書店2019年6月1日発行 347頁 2500円】

多文化研のみなさま
金朋央(特定非営利活動法人コリアNGOセンター)さま
ほか、移住連の関係者のみなさま

注文してすぐに届いたこの相談ハンドブックは、ずっしり重たいですね。ロビーでぱっと開いた真ん中から読み始めました。

 事例9:収容中に体調を壊した被仮放免者の医療
 事例⒑:生活保護世帯の大学・専門学校への進学
 事例⒒:在留資格のない児童の児童手当

本書は、347頁ありますが、たったこの10頁だけでも、ウ―ン、深く考えさせられました。かつて牛久の収容所で、彼らの生の声を綴った日々を思い出しました。

■権利侵害に直面し、問題解決に取り組んでこられた移住連のみなさまの現場から生まれた叡智が、本書にはびっしりと詰まっています。長年の活動の成果だけでなく、関係法令や資料が、掲載されていて親切です。

■善意の医療クリニックは、医療通訳を自ら養成し雇用し、頑張れば頑張るほどに問題を抱え込んでしまう実態もあります。それは拙編著『いのちには国境がない。-多文化共創の実践者たち』にも紹介しました。

■『外国人の医療・福祉・社会保障 相談ハンドブック』の目次等の基本情報は以下のURLに表記してあります。
https://www.akashi.co.jp/book/b456766.html
出版社から目次・内容紹介・特徴などをまとめたワードデータをいただいたので、添付しておきます。

●前回の多文化研で配布した「多文化研30周年記念誌」の54頁、阿部治子さんの「外国人の社会保障と身元保証」も併せてご高覧いただけると幸いです。次回の7月27日にも受付で、30周年記念誌を配布いたします。

■移住連の素晴らしい本書を拝読し、学びながら、「共創の知恵」が湧いてきます。新しい改正入管法は、国が内発的ビジョンを
もってはじめて生かされるのではないでしょうか。

拙いご紹介で、失礼いたします。
川村千鶴子

http://www.clair.or.jp/tabunka/portal/general/life_cycle.html
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766423938/
https://tabunkaken.com/

=====

川村先生 多文化研の皆様

藤原書店から別冊環の移民問題特集号が出版されました。移民や移民2世などの生の声が伝わってきます。多文化研ゆかりの方も数多く執筆しています。書店で手にとっていただければ幸いです。

別冊『環』24「開かれた移民社会へ」
定価=本体2800円+税 菊大判並製 312頁
ISBN 978-4-86578-221-9
2019年4月25日配本
http://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865782219.html(←藤原書店サイト)

「開かれた移民社会へ」表紙

■2019年4月、入管法改定。今ここにある「移民社会」に日本が正面から向き合うために。

外国人「労働者」の受け入れに大きく舵を切ったとして注目を集める、今次の入管法改定。しかし日本社会はすでに、多様なルーツをもつ「人」が共に暮らす「移民社会」でもある。労働、国籍、市民権、社会保障、教育、言語など、単なる「労働力」「人材」ではなく、「人」として生きるなかで不可避の論点について、制度と現場に関わる論考を揃え、さらに、大きく立ち遅れる「難民」受け入れの展望も論じた、真の「多文化共生」への必携の論集!
—-

編=宮島喬・藤巻秀樹・石原進・鈴木江理子

■目次■

序 (編者)

●座談会 開かれた移民社会へ
石原進+鈴木江理子+棚原恵子+藤巻秀樹+宮島喬(コーディネーター)

Ⅰ 外国人労働者受け入れ
宮島喬 「外国人労働者のフロントドアからの受入れを」
鈴木江理子 「移民/外国人受入れをめぐる自治体のジレンマ【移民/外国人は人口危機の救世主となりうるか?】」
旗手明 「技能実習制度からみた改定入管法【ローテーション政策の行方】」
定松文 「家事労働者の受入れの問題点【国際的な比較の視点から】」
安里和晃 「特定技能制度を見据えた送り出し国の動き」
藤本伸樹 「介護労働者の受け入れの課題」
山口智之 「移住労働者の定住化にともなう外国人労働組合活動の変化」

Ⅱ 周回遅れの「移民国」
藤巻秀樹 「第三の開国を問う【選ばれる「移民国家」への道】」
近藤敦 「外国人にシティズンシップを開く【参政権・公務就任権・複数国籍を中心とした諸外国との比較】」
高谷 幸 「日本に暮らす移民の社会保障とセーフティネット」
佐々木てる 「日本人にはなれない、日本人であり続けることができない【重国籍を認めない日本】」
小ヶ谷千穂 「呼び寄せられる子どもたち【「外国につながる子ども」をめぐる課題から、「家族再統合」を考える】」
宮島喬 「移民と家族呼び寄せ」

Ⅲ 「移民」たちの現在
●座談会 日本につながった私たちの今――十代、二十代を駆け抜けて
温又柔+高部心成+谷川ハウ+宮ヶ迫ナンシー理沙  司会=矢崎理恵

リリアン テルミ ハタノ 「ブラジル【在日ブラジル人コミュニティの三〇周年を迎えて】」
田中雅子 「ネパール【定住化を支える在日ネパール人組織】」
斉藤善久 「ベトナム【外国人技能実習生の保護の充実を求める】」
原めぐみ 「フィリピン【「生活者」としての問題にどう取り組むか】」
人見泰弘 「ビルマ(ミャンマー)【民政移管と変容するコミュニティ】」
石川朝子 「中国・台湾【在日外国人で最大のグループの現在】」
山本かほり 「在日朝鮮人【朝鮮学校をめぐる「闘争の歴史」から】」

Ⅳ 日本語教育と母語継承
石原進 「「共生」のカギ握る日本語教育【言葉がつなぐ人と社会】」
川上郁雄 「移民の子どもへの言語教育とは【日本語教育のあり方を問う】」
宮島喬 「移民への言語教育を重視するヨーロッパ」
カルダー淑子 「新時代海外移住者の日本語継承【日本語教育推進法案に対する署名運動から】」

Ⅴ 教育
竹ノ下弘久 「移民第二世代をめぐる教育機会の不平等【下降移動や貧困リスクとその可能性】」
小島祥美 「「不就学」をいかに解消するか【外国人の子どもと学校教育】」
稲葉奈々子・樋口直人 「移民第二世代の大学進学」
山野上麻衣 「ブラジル人の子どもの学習支援を通してみえてきたこと」
丸山由紀 「外国人の子どもと在留資格」

Ⅵ 難民にどう向き合うか
関聡介 「日本の難民認定制度をめぐる近時の動向と課題」
石川美絵子 「庇護を求めて、今、日本に生きる人々」
滝澤三郎 「転機を迎えた難民第三国定住事業」

Ⅶ 「多文化共生」への課題
土井佳彦 「多文化共生マネージャーが果たす役割」
山田貴夫 「地方自治体の外国人施策の現在【改正入管法の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を手がかりに】」
坂本久海子 「これからの多文化共生【雇用する企業の責任とは】
北海道教育大学 藤巻秀樹

=====

【多読味読<36>:申明直(シン・ミョンジク:신명직)編著『東アジア市民社会を志向する韓国』風響社 2019年3月20日302頁】

「他人事」ではない、これは日本の「現在」「明日」でもある。

急激に民主化と高度成長を成し遂げた韓国は、同時に

200万を超える移民の住む多文化社会にも急変した。

本書の著者たちは、競争と格差、非正規就労や高齢化の

波に直面する庶民の問題を移民たちの問題と同根とみなし、

さまざまな活動を行ってきた。貴重な実践レポートの先に見えるものは・・・・

「東アジア市民」申明直

申明直(シン・ミョンジク:신명직)先生

ご高著、感謝申し上げます。先生方ならではの

表題とブックカバーの斬新な写真と帯に込められた

主体性ある気迫に勇気づけられました。

鶴首してお待ちしたご高書をぱっと

初めて扉を開いた頁がたまたま20頁でした。

なんと小見出しが「多文化を生きるー新大久保からの挑戦」

李承珉(スンミン)先生の2015年慶應義塾大学での講演内容が掲載されていました。

『2050年、日本は全体が「今の新大久保のように」なっていくだろう。』

が飛び込んできました(笑)。かつて私はスンミン先生の写真をいっぱい撮りました。

以下の写真が一番好きです。風邪をひいておられるのではなく、毎月、

火曜日の早朝にホウキとゴミ袋をもって新大久保周辺をニコニコと

掃除しておられるお姿です。ヘイトスピーチが激しかったころも掃除を欠かさず。

新大久保映画祭のシンポジウムに、登壇させていただき

韓国との連携と地域の歴史を語らせていただきました。

その節はありがとうございました。申先生のように、単に学者として

座学に生きるのではなく、NPO法人東アジア共生文化センター代表

であり、映画祭やフェアトレード活動などを主催し、幅広い

実践活動を主体的に継続されて次世代を勇気づけている

生き方を尊敬しています。それが本当の学問だと思います。

「東アジア市民社会」という言葉は、申先生と本書の著者が

発したとき、説得力がありますね。お嬢さまの申恵媛(シン・ヒェウォン)さんが

翻訳者として参加していることも信頼性が高まります。

よろしくお伝えくださいませ。明日、30周年記念誌と拙書をお送りいたします。

多文化研のみなさま、どうぞ読んでみてください!!

『東アジア市民社会を志向する韓国』(風響社、2019.3.20)
を拝読して、申先生に感想をお送りくださいませ。

前回3月の「多文化共創フォーラム」には熊本からご光来賜り、

ご意見を拝聴させていただきました。

====—

序論 東アジア市民社会への道
――「東洋平和論」の実践として
第1章 安山テッコル村と高麗人移住労働
第2章 華僑華人の変貌と「東アジア市民」の形成
第3章 韓国の移住労働者政策とシティズンシップの変容
第4章 韓国のネパールコミュニティと帰還後の活動
第5章 ベトナム人母娘3代の結婚と韓国
第6章 「地球人の停留場」と農業移住労働者
――農業、とくに女性労働者を中心に
第7章 公正貿易(フェアトレード)と公正貿易タウン(Fairtrade Town)運動
――なぜアジアでなぜネットワークなのか?
第8章 ロシア沿海州の高麗人と社会的企業 バリの夢
――東北アジアコリアンとともに東アジア協同経済ネットワークを構築する社会的企業バリの夢
第9章 韓国の社会的経済運動とアジア市民社会

[序論]野村伸一(のむら しんいち)慶應義塾大学名誉教授。
[第1章]金勝力(キム・スンニョク:김승력)㈳高麗人支援センター「ノモ(超えて)」の代表
[第2章]申明直(シン・ミョンジク:신명직)熊本学園大学教授、

NPO法人東アジア共生文化センター代表
[第3章]盧恩明(ノ・ウンミョン:노은명)熊本学園大学非常勤講師、

NPO法人東アジア共生文化センター理事
[第4章]李蘭珠(イ・ランジュ:이란주)「アジア人権文化連帯」代表
[第5章]許吳英淑(ホオ・ヨンスク:허오영숙)「韓国移住女性人権センター」の代表、

江陵原州大学多文化学科兼任教授
[第6章]金二瓚(キムイチャン:김이찬)安山の移住労働者シェルター「地球人の停留場」代表
[第7章]李康伯(イ・ガンベク:이강백)「韓国公正貿易団体協議会」常務理事、

「アジア公正貿易ネットワーク」代表
[第8章]金鉉東(キム・ヒョンドン:김현동)社会的企業㈱バリの夢(바리의꿈)代表、

東海協同社会経済ネットワーク代表
[第9章]李栄煥(イ・ヨンファン:이영환)聖公会大学の教授、

聖公会大学社会的企業研究センター所長

あとがき(申明直)

索引

熊本日日新聞に掲載された書評

=====

=====

【多読味読<35>:小﨑敏男・ 佐藤龍三郎 共編著 『移民・外国人と日本社会   人口学ライブラリー18』(原書房)】2019年3月22日

万城目正雄さま  多文化研のみなさま

ご高著『移民・外国人と日本社会  人口学ライブラリー18』(原書房)小﨑敏男・ 佐藤龍三郎 共編著(2019年3月20日発行)をご恵与いただき心より感謝申し上げます。

昨日発行されたHOT BOOKですね。
出入国管理及び難民認定法が改正され(2018年12月成立、2019年4月施行)、外国人労働者の受入れ拡大(在留資格「特定技能1号・2号」の新設など)が決定され、明日の23日は、多文化研が第158回多文化共創フォーラム【添付】を開催いたします。

・第1部は、芹澤健介さん、大阪大学共創機構の佐伯康考さん、文化庁日本語教育専門職の増田麻美子さんが、山積する課題と改善策を語り、
・第2部において万城目正雄さん、明石純一さん、藤巻秀樹さんから外国人労働の拡大はどのような意味をもつのか、異論・反論・コメントいただくことになっております。

タイムリーにも、本書は、この国民的議論を人口学、経済学、社会学の専門家が、切り口を変えながら総合的に検討し、議論を展開しておられます。

http://www.harashobo.co.jp/book/b432015.html

本は、どこから読もうが読者の勝手なので、私は、終章から拝読しております。

終章 外国人受け入れをめぐる議論   小崎敏男(東海大学政治経済学部教授)
第8章 移民・外国人と社会保障財政   増田幹人(駒沢大学経済学部准教授)
第7章 外国人技能実習制度の活用状況と今後の展開   万城目正雄(東海大学教養学部人間環境学科准教授)
第6章 移民・外国人労働者と労働市場             小崎敏男

分析の視点が実に多面的で、さまざまな問いかけがあり、議論の基礎となり、とても面白く、勉強になります。

多文化研の必読書としてお勧めします。
ありがとうございました。
川村千鶴子

電子書籍用カバーPL18

=====
【多読味読<34>:加藤聖文 『「大日本帝国』崩壊 東アジアの1945年』(中公新書 2014)】
2019年2月28日

モンゴルと社会言語学の研究をしております荒井です。
現在、「日ソ戦争およびその後の引揚・抑留に関する総合的研究」というテーマの科研費の研究グループにモンゴル班として参加しております。
戦争が終わった時、今の日本以外の領域には多くの日本人がおり、どの様な形で帰還したかが研究テーマです。
こんなこともするのとお思いかもしれませんが、実は抑留者の調書1万人分をまとめたことが依然ありまして、縁あって参加しております。

つい最近も女性のシベリア抑留関係で、大阪大学の名誉教授の生田美智子先生が見つけたものとして、
「シベリア抑留、女性名簿 邦人121人、ロシアで発見」(中日新聞 2019年2月24日)
www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019022402000064.html?fbclid=IwAR1vYZq8Ld2fyDj424Qef05sogOzDXbA1OSIz30LS_Iem63KablFoWvDvHA
こんな形で成果が出ていたりします。
シベリア抑留にどれだけの女性がいたのかなかなか決定的な資料が見つからなかったようですが名前が見つかることによって随分と研究が進むように思います。

さて、この科研費グループのメンバーでもある方なのですが、加藤聖文さんの『「大日本帝国」崩壊 東アジアの1945年』(中央公論社 2014)を紹介したいと思います。

というのも、2018年6月に秋山肇さんがトルーマンのことを発表されたと思いますが、序章がポツダム宣言の話題で、実は、トルーマン1人でシナリオを描いたもので、スターリンも、蒋介石もその場にいなかったが、「無理矢理」同意の上で発表されたものという話、結構驚きました。いろいろな人が協議したうえでまとめられたものだと思っていましたので。もしかしたら、金澤さんは、この事実をご存じなのかもしれませんが。
つづいて、東京(1章)、京城(2章)、台北(3章)、重慶・新京(4章)、南洋群島・樺太(5章)において、日本の敗戦がどう受け入れられて行ったのかをコンパクトにまとめ、諸地域の事情を踏まえた上で結論として、東アジアにおいて「1945年9月2日は連合国による大日本帝国解体のセレモニー以外の何ものでもなかったのであり、帝国崩壊の波をまともに被った東アジアや脱植民地化へ向かいはじめた東南アジアにとって大きな歴史的重要性も持たない。むしろ、1945年8月15日の前後に起きた歴史が、現在もなお影響を与えているといえよう」(231頁)と書かれておられます。
歴史的なインパクトというのはこうやって考えるものなんだなと、考えさせられました。
とともに、現代にも通じるかなと思うところとして、「大日本帝国憲法が発布された1889年の時点では、大日本帝国とは万世一系の天皇と臣下である日本人だけの小さな国家-「ミカドの国」でしかなかった。だが、対外戦争を重ねるなかで、植民地帝国へと変貌し、多民族国家となっていった。しかし、敗戦までほとんどの日本人はその現実に気づかなかった、否、気づこうともしなかった」(221ページ) という部分も紹介しておこうと思います。

経緯は違えど、多民族社会になっているという日本の現実に、気づこうとしてない(気づかせないようにしている?)人が多くいて対応がどんどん遅れているようにおもえる現在とそれほど変わらないのではと思えて仕方なかったので。

長文にて失礼いたしました。

=====

【多読味読<33>:『多文化共生 人が変わる、社会を変える』にほんご凡人社2018年11月24日】

ニューヨークの加藤丈太郎さん(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程)!!
素晴らしい新書をご恵与いただきありがとうございました。
第2章 多文化教育が拓く多文化共生―日本に暮らす非正規滞在者の視点からー
そこから拝読しました。加藤丈太郎さんの最近の活動は多文化研リラックスを
ご高覧ください。凄く逞しさを感じます。https://tabunkaken.com/

【多読味読<32>:『週刊エコノミスト』毎日新聞出版2018年12月11日号】

毎毎日新聞出版からご恵贈いただきました。面白くって精読しました。
特集号「おにぎりからビックデータまで コンビニ 最終決戦」
「コンビニ外国人」の芹澤健介さんが、「外国人店員に客から心ない言葉」というテーマで外国人労働者の受け入れ態勢について寄稿されています。
31頁に芹澤さんが私を取材してくださって、偏見や差別は、無知と無関心から生まれることといった私のコメントが紹介されています。

【多読味読<31>:産経新聞2018年12月7日】

大阪大学共創機構社学共創本部を支えている佐伯康考 (SAEKI Yasutaka, Ph.D.)さんの語りが次のように掲載されています。
「在留資格にかかわらず、国が悪質ブローカー対策や日本語習得支援などを総合的に行い、単なる労働力ではなく外国人としての強みも生かせる『多文化共創』の制度に高めるべきだ」と話す。その通りだと思います。
大阪大学は「大学の地域貢献度ランキング」で全国総合1位。すごいですね。素晴らしいですね。

https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2017/11/20171106_01

今朝は、読売新聞「台湾の外国人労働者の記事」を興味深く拝読しました。

川村千鶴子🐢

=====

【多読味読<30>:吉成勝男・水上徹男編著NPO法人APFS『移民政策と多文化コミュニティの道のり』現代人文社9月20日325頁】

日本政府は、枯渇する労働力不足を補うために、外国人労働者を積極的に受け入れる方向に政策転換しました。いかにして外国人を、ともに生きる地域社会の構成員として受け入れることができるのでしょうか。30年間にわたり、外国人住民支援をしてきたAPFSの支援活動の軌跡です。
吉成勝男さま、水上徹男さま 加藤丈太郎さま 野呂芳明さま みなさま
APFS設立30周年を記念して、APFSの活動を献身的に支えた多くの定住外国人とともに素晴らしい一冊を上梓され、ご恵贈賜り、心から感謝申し上げます。当時、横浜にはカラバオの会が設立され、山形県最上地区には最上地方国際結婚交流会ができました。
新宿では、女性の家HELPが開設されたほか、アジア友好の家、共住懇、そして私ども、多文化研GLOBAL AWARENESSも毎月、情熱的に活動しておりました。
APFSは、勤務校の大学に近く、最近も訪問させていただき、吉田真由美代表のお話しを伺いました。
この本は、日本の外国人の自立支援の歴史書でもあります。一気に拝読しました。最後の第24章の服部美果さんの章はとてもリアリティがあって面白った。そのあと、吉成さんが解題として①出生、②届出 ③帰化を解説され、多岐にわたる課題解決に尽力された力強いメッセージに感動いたしました。いつもお誘いを受けながら執筆に参加できませんでしたが、今後とも宜しくお願いいたします。バングラデシュにお供させていただきたいと思っています。

御礼まで。

川村千鶴子

<以下に目次をご紹介します。>

目次

第1部 外国人の増加と関連した社会の変化
第1章日本の入国管理の時代と非正規滞在外国人の支援

――問題解決型相談と在留特別許可をめぐって………吉成勝男・水上徹男
第2章支援活動の変遷および大学とのコラボレーションと市民懇談会

――多文化家族の支援と大学とのコラボレーション………吉成勝男・水上徹男・加藤丈太郎
第3章APFSの相談活動の変遷とその意義………吉田真由美
第4章非正規滞在者における家族統合の重要性………加藤丈太郎
第5章多文化共生社会と自治会の役割――高島平ACTと高島平三丁目自治会の連携………宮坂幸正

第2部 トランスナショナルなネットワークと国際移動
第10章 バングラデシュ出身者の出入国の動向とコミュニティの形成………水上徹男
第11章 帰還バングラデシュ人の現在(1)――市場主義と出入国管理政策の変転を生きて………野呂芳明
第12章 帰還バングラデシュ人の現在(2)………久保田仁 163
第13章 ある「不法滞在外国人」の日本での生活と労働――元非正規滞在外国人労働者のインタビュー調査から………大野光子
第14章 外国人住民の支援と日本語教育………中山由佳
ほか

第3部 外国人住民の福祉・教育・自立支援事業
第17章 外国人女性の自立と介護労働の役割――在日フィリピン女性介護職を通して………井上文二
第18章 外国人女性の自立と福祉的課題………南野奈津子
第19章 学校空間と「非正規滞在」・「家族滞在」の現状………福本修
第20章 就労支援講座から見る日本における外国人労働者の実態………荒久美子
第21章 移民、難民、そしてビザなし人(びと)の医療………山村淳平
第22章 多文化家族の自立に向けた包括的支援事業に参加して(1) 日本社会で信頼される介護士とは………後藤ジエニイ

=====
【多読味読<29>:『The Big Issue 8月号340号 特集:難民を知る』】

サヘル・ローズさん(SAHEL ROSA)
石川えりさん(難民支援協会JAR 代表理事。多文化研会員。)
宗田勝也さん(ラジオ番組「難民ナウ!代表)
駒井知会さん(弁護士)は、99.8%が不認定になる難民認定制度に疑問を投げかけています。日本で長期収容の“絶望まみれ”。
今年4月には「仮放免」を不許可にされたインド人男性が牛久入管収容所で自殺。駒井さんは、いつも「次にくるまで死んじゃダメだよ」と被収容者に声をかけているそうです。

【多読味読<28>:藤巻秀樹「『移民国家』へ踏み出す日本。求められる社会統合政策」週刊エコノミスト。2018年9月4日】
新在留資格創設について藤巻秀樹さん(北海道教育大学教授・多文化研理事)の論稿、コピーしておいておきます。

多読味読<27>:水上洋一郎「入管行政からみた外国人政策の変遷と今後」『移民政策研究第10号』2018年5月明石書店】
元東京入管局長、30数年入管行政に携わり、さぽーと21の役員などをなさっている水上氏の講演体論考です。日本政府の外国人政策を厳しく批判し、今後の展望を語られた講演でした。
いま、ボートピープルで来日したベトナム難民のご家族にも読んでいただいています。

💛シェアしたい論考・アルバム、イベントチラシなどお持ちください。

川村千鶴子(セルフケアのため活字は大きく🐢🐢🐢)

=====
【多読味読<26>:芹澤健介著『コンビニ外国人』新潮新書、新潮社2018年5月224頁】

昨夜、広島県呉市で技能実習生のベトナム語の通訳をしている今年の卒業生、ヘリ―さんから「電車はまだ復旧していないけれど、コンビニが復活した!買い物もできて生活できる。」という喜びのメールが来ました。断水明けで水が濁っているそうですが、被災地では、24時間営業のコンビニが命綱であることを知らせてくれました。24時間営業のコンビニを支えているのが、外国人店員。4万人以上です。
今話題の芹澤健介著『コンビニ外国人』をご紹介します。
まず、添付の7月15日の書評(東京新聞)を読んでください。
そこに著者が日本社会に警鐘を鳴らしたいことが書かれてあります。
私は、毎年2回、統括防火管理者として、コンビニの外国人定員さんたちに、避難・消火・通報訓練などを指導しています。多言語パンフレットを配布してもう30年以上も。
だって火災や地震があったら、助けてもらうのは、日本人高齢者。
留学生や技能実習生、難民の方々が地域を守り、人命救助にあたることを身にしみています。お互い様の地域です。
助け合うのは当たり前。本当にいい本を世に送りだしてくださってありがとうございます。
これからも新しい本を次々に出されることを期待しております。

川村千鶴子

(以下は「BOOK」データベースより)
全国の大手コンビニで働く外国人店員はすでに4万人超。実にスタッフ20人に1人の割合だ。ある者は東大に通いながら、ある者は8人で共同生活をしながら―彼らはなぜ来日し、何を夢見るのか?「移民不可」にもかかわらず、世界第5位の「外国人労働者流入国」に日本がなったカラクリとは?日本語学校の危険な闇とは?丹念な取材で知られざる隣人たちの切ない現実と向き合った入魂のルポルタージュ。

【目次】

はじめに
第1章 彼らがそこで働く理由
「日本に来たかったから、がんばりました」/アルバイトは週に28時間まで/外国人留学生がコンビニで働く理由/100万人の外国人労働力に依存する日本/さらに増え続ける「在留外国人」/急増するベトナム人・ネパール人/ベトナムの日本語ブーム

第2章 留学生と移民と難民
5人に2人が外国人という状況/「その他」の在留外国人たち/政府の外国人受け入れ制度/「移民」とはどんな人たちか/日本の先を行く韓国の「雇用許可制度」/ドイツの「ガスト・アルバイター」

第3章 東大院生からカラオケ留学生まで
コンビニ奨学生として日本へ留学/八人で共同生活/沖縄で急増するネパール人/「辞めないでほしい」と毎月1万円/「日本に来てから成長しました」/沖縄とネパールの関係/留学生の間にはびこる人種差別/ミャンマー人留学生が集まる街/日本で働きたくても働けない

第4章 技能実習生の光と影
コンビニも技能実習制度の対象に?/技能実習生の労働環境/技能実習生の人権を守るために/留学生が実習生をトレーニングする?/沖縄ファミリーマートの「留学生インターンシップ」

第5章 日本語学校の闇
九割が留学生という大学/中国人専用の予備校に通う留学生/全国に600校以上 乱立する語学学校/年収100万円の日本語教師/教師一人で留学生100人という現場も/日本語学校の管理ははじまったばかり/日本語学校が留学生の書類を偽造/人材派遣業化する日本語学校/〝出稼ぎ留学生〟が訴えた日本語学校/日本を目指す外国人留学生のルート/「犯罪はよくないが……」地方の経営者の本音/ネパールの日本語教育事情/日本語学校のこれから

第6章 ジャパニーズ・ドリーム
ベトナム人の元留学生が兄弟で起業/外国人起業家に向けた「スタートアップビザ」/外食産業の風雲児はネパール人の元留学生 /犯罪組織に加担してしまう留学生/「またコンビニで働きたいよ」/風俗店で働く現役留学生たち/増加する不法残留者と難民申請者/「日本人ですけど、日本語を話せません」

第7章 町を支えるピンチヒッター
人口が減り続ける日本/そして労働力の奪い合いがはじまる/〝国際都市〟新宿の取り組み/多文化共生を推進する広島県・安芸高田市/日本初の公立日本語学校を開設した北海道・東川町/11カ国の外国人が暮らす「いちょう団地」/学生たちが自治に参加する「芝園団地」

おわりに――取材を終えて

=====
【多読味読<25>:『入門解説 新しい技能実習制度』公益財団法人 国際研修協力機構JITCO。2017年11月】1852円

2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律」(技能実習法)に基ずく、新しい技能実習制度がスタートしたことはご存知の通りです。
長年JITCOにいらした万城目正雄さんには、2018年1月、多文化研フォーラムでご講演いただき、詳細を解説いただきました。
本書は、万城目さんが執筆されたものです。新しい技能実習制度を理解する入門解説書で、わかりやすく解説してあります。
技能実習生を低賃金労働者として扱う企業や、保証金・違約金などの名目で高額なお金を徴収する送り出し機関のことが、批判の的、ジレンマとなっていました。制度の適正化と技能実習生の保護を図るための新しい技能実習制度が、うまく機能することを願わずにいられません。
今年の卒業生(多文化研ユース)も技能実習生のベトナム語の通訳・生活指導者として広島県呉市に赴き社会人としての一歩を歩み始めました。この西日本豪雨被害の中、断水や生活物資も届かず日々、様々な困難との闘いだと思います。
呉市では、今年の第三国定住難民を受け入れています。
多文化研のみんなで、みなさまのご無事を祈りました。
ご遠慮なく、この多文化研MLにご連絡ください。
くれぐれもご無理なくご自愛くださいますように。

川村千鶴子

=====
【多読味読<24>:川村千鶴子「あらゆる子どもの教育権ーNPOと夜間中学の取り組み」『環境創造』17巻大東文化大学環境創造学会2013年】

2012年の七夕の日、私は、日本政府が受け入れた第三国定住難民のミャンマーから来日したBさんに会うために、都内の夜間中学を訪問しました。学生たちが書いたBさんへの激励の手紙と母の手作り人形を届けるためでした。
とてもご親切に次々と夜間中学の授業を聴講させていただき、七夕にちなんだ夕食をご一緒し、初めて会う難民の方々とも実に自然な快話をすることができました。特にチェチェンからいらした男性から、日本での生活の孤独感を伺うことができ、七夕の短冊に願いを込めました。
あらゆる人の学習権への祈りを笹の葉に託した拙文を、最近、渡辺幸倫さんが見つけてメールに添付して送ってくださいました。再読しましたら、懐かしい写真がいっぱいです。参照文献は皆様の素晴らしい論文ばかりです。
【多読味読】で拙文を紹介するのは、恥ずかしいですが、<これもアリです>ということで、ご海容ご笑覧くださいませ。
今年、中国地方で初めて第三国定住難民を受け入れた広島県呉市はいま、豪雨災害の大きな被害に直面しています。
ミャンマー難民の子どもたちは呉市から広島市にある夜間中学に通うことを考えていたようですが、通学は叶わない状況ですね。状況をご存知の方は教えてください。
インターカルチュラル プレイス メイキングを<安心の居場所づくり>と訳してから時を経て、Bさんは、いま立派な大学生となって活躍しています。
亡くなった方々へのご冥福を祈って

川村千鶴子

=====
【多読味読<23>:椙本歩美著『森を守るのは誰か―フィリピンの参加型森林政策と地域社会―』新泉社2018年7月発行、330頁】

何という美しい田園光景でしょう!写真を撮影したのは、著者の椙本歩美さん(多文化研理事)。学部生のころから、いつも元気で明るくて、フィリピンに調査や支援に出かけていました。

椙本[森]

森を守るのは誰か 椙本歩美(著/文) – 新泉社

あれから15年が経過し、このような美しく立派な本を上梓されて感無量です。『異文化間介護―誰が介護を担うのか』(明石書店)でご一緒したのもかなり昔ですね。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程に進み、国際森林環境学、フィリピン地域研究を専門にしました。日本学術振興会の特別研究員となり、研究分析の成果が、博士論文として結実しました。博士(農学)の学位を取得。森林環境学のメカニズムを解いた博士論文が、誰が読んでも感動する最良の一冊に生まれ変わりました。 歩美さんは、森林政策と国際協力の実践者です。国際教養大学助教(秋田県)から、定期的な海外出張をこなし、全授業を英語で教授し、留学生と農家との「戦争と平和を考える交流」に尽力(『いのちに国境はない』ほか)されました。
昨年からマーガレット・サッチャー財団特別研究奨励生となってバッキンガム大学客員研究員。英国に滞在しながら、多文化研理事として活躍くださっています。歩美さん、おめでとうございます!!!北アイルランドに調査にいかれるなど、相変わらず多文化共創アクティブ・ラーニングの最先端ですね。「守る」という文字が、雨?、汗?、それとも涙なのか、水滴にデザインされて、今日は家族一同で美しい表紙に見惚れました。
「国家 vs 住民」「政策と現場のズレ」「保護 vs 利用」「住民間の利害対立」。
国際機関の援助のもと、途上国で進められている住民参加型資源管理政策をめぐって指摘される問題群。森と農地が一体的に利用されているルソン島中部の村落で、二項対立では説明できない多様な森林管理の実態を見つめ、現場レベルで独自に立ち現れる政策実践の可能性を考える。
「フィリピンは1970年代から住民参加型森林政策を開始し、東南アジアのなかでも制度化が進む国の一つである。森林回復や地域住民の生活向上などの評価がある一方で、国家が住民に森林の権利を与えることは、住民や森林に対する国家統治の継続をより見えにくくし、森をめぐる国家と住民の対立構図も不可視化しているという批判がある。
途上国の森林保全に関して、各国政府、援助機関、研究者は、有効な参加型資源管理のあり方を模索してきた。住民参加を進めるための制度の枠組みは検討が重ねられてきたが、政策の意図と異なる現場レベルでの森林管理の実践は問題とみなされ、現場で独自の制度が生み出される仕組みについてはあまり議論されてこなかった。本書の目的は、現場における制度生成の仕組みを分析する概念枠組みを提示し、住民参加型政策が地域社会に及ぼす影響について新たな論点を提示することである。」(著者のことばから)
農村生活の生き生きとしたエッセイ、読みふけりました。
多文化研のみなさま、必読です。こちらからどうぞ。

Amazon  https://www.amazon.co.jp/dp/4787718118/
版元ドットコム https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784787718112

経緯と謝辞を書かれた「あとがき」、ご丁寧にありがとうございました。

川村千鶴子

=====
【多読味読<22>:森恭子著『難民のソーシャル・キャピタルと主観的統合―在日難民の生活経験への社会福祉学の視座― 』2018年3月23日現代出版社】5,500円 368頁

ソーシャルワーカーとして20年以上も難民支援に携わってきた森恭子さんが平成28年に提出された博士論文を加筆修正した力作。森さんは、現在、文教大学人間科学部准教授。家族、同胞、親切な日本人雇用主、家主等、様々なネットワークの中で経験した生活上の課題と心情を紐解いています。学位論文をこのような一冊に上梓されたこと、心よりお慶びもうしあげます。

【第1部】 難民問題の背景・理論
*第1章 研究の背景
第1節 「難民」という対象 「難民」の捉え方
第2節 日本の難民政策と制度的諸問題 福祉的側面からの視座
第3節 日本の難民/申請者の生活実態に関する研究
第4節 諸外国の難民政策 オーストラリアを中心に
第5節 小括
*第2章 理論的枠組み 研究へのアプローチ
第1節 ソーシャル・キャピタル (社会関係資本)とは
第2節 社会統合 主観的プロセスとしての統合
第3節 難民/申請者のソーシャル・キャピタルと社会統合に関する先行研究
第4節 制度のエスノグラフィ
第5節 小括

【第2部】 難民の実像―16人の語り
*第3章 研究方法
*第4章 調査結果 調査データの提示、結果の解釈及び分析
第1節 難民の生活とソーシャル・ネットワーク
第2節 難民のソーシャル・キャピタル
第3節 語りから浮かび上がる難民像 彼らにとって難民とは何か
第4節 難民の主観的統合
第5節 二国間の狭間で翻弄される難民
*第5章 考察

日本に居住する16人の難民/申請者に丁寧にインタビューされています。巻末には日本の難民受け入れと支援の動向という年表を掲載。有難く勉強させていただきます。

=============================
【多読味読<21>:『東京人 6月号特集:アジアタウン TOKYO』 都市出版株式会社 2018年5月2日発行930円】

「連休はどちらにお出かけですか?」
「Shin-Ohkuboに行ってきます。」
「えっ、シンオオクボ?って新大久保?」
「パスポートなしで海外旅行ができるでしょ!」
これってホントの会話です。

5月2日店頭に並んだ雑誌『東京人 6月号』の特集は、〜アジアタウン TOKYO〜
http://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin.html

9ページ目、平井玄さん「東京の泡の底」はさすが。
http://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin_shousai.php

外国人座談会「ボクらのオオクボ奮闘記。」
稲葉佳子さんは、座談会の最後を次のように指摘して締めくくっています。
「大久保にきてみればわかるけれど“多様性”っていうのは本当は大変なことなのです。‥‥言葉を使うのではなく、本当の意味での“多様性”を実現していく覚悟が必要だと思います。」
折しも百人町では昨日、強盗事件もあって説得力がありました。シュレスタさんのお写真と記事も拝読しました。
阿佐ヶ谷、高田馬場、西葛西、錦糸町、西川口、横浜・・とても読み応えがあります。なぜか私は藤沢市の善然寺「日本在住インドシナ人の墓」という共同墓地の写真(難民事業本部の支援と善然寺の厚意)に惹かれました。

素敵なGWを!

川村千鶴子🐢

=====
【多読味読<20>:相原洋子著『多文化社会における地域包括ケア  ―ヘルスリテラシーをキーワードに考える』2018年3月20日】

相原洋子先生 (神戸市看護大学准教授医学博士、看護師、保健師、MPHM)

ご無沙汰しております。本日は、新学期初日でして、教員控室に5冊の新しい本が届いておりました。
その中で、飛び上がる程嬉しかったのは、美しい地球のデザイン表紙がついたずっしりと重い相原先生の『多文化社会における地域包括ケア―ヘルスリテラシーをキーワードに考える』を開けてみたときです。平成26年~29年 科研研究

Community-based Integrated Care in Multicultural Society

そして、研究報告書の最後には懐かしい神戸の老人ホームを思いおこしました。

◆「マイノリティ高齢者を包摂したケアについて考えるシンポジウム」
「多文化共創と高齢者ケア」のパネルディスカッションでは話し言葉をそのままご掲載いただき、とても光栄です。2017年12月3日神戸定住外国人支援センターを訪れた時の感動は忘れることができません。
私は、老親介護が長かったので、本当にあちこちの老人ホームを訪問しておりますが、「ハナの会」ほど多様なルーツをもつ高齢者が実に楽しくゲームをしながら笑っているディサービスを見たことはありません。金宣吉理事長にも介護福祉士のみなさまにもよろしくお伝えくださいませ。
ご研究の成果報告は、皆と共有しつつこれからしっかり拝読します。
医療者主体の「治す医療」から患者主体の「ケア」の場に変遷していること。「延命」するかどうか、ケアを選ぶ権利を行使できる時代、ヘルスリテラシーの学びは極めて重要と思っております。パキスタンやネパールでのご研究のコラムもありますね。
2冊もご恵与いただきましたので、次回の多文化研(5月12日学習院大学)の時に、参加者全員に回覧いたします。
御礼まで。
またの御目文字を楽しみにしております。

川村千鶴子

=====
【多読味読<19>:小泉康一著『変貌する「難民」と崩壊する国際人道制度-21世紀におけ
る難民・強制移動研究の分析枠組み―』ナカニシヤ出版3800円2018年2月27日339頁】

http://www.daito.ac.jp/education/international_relations/department/relation
/news/details_24341.html

小泉康一先生

この度、ナカニシヤ出版から上梓された『変貌する「難民」と崩壊する国際人道制度-21世紀における難民・強制移動研究の分析枠組み―』、ご恵贈いただき、心から感謝申し上げます。毎日、毎日、有難く拝読させていただきます。『危機移民』という新しい言葉、先生が付けられたのですね。困難を極める人々の現状を少しでも変えていくことができるのだろうか。
第5章、都市難民の揺れ動く心と不安定な生活。かつて新宿の難民たちを支援してくださった木村妙子氏や多くの支援者がこの本を手にすることができたら、感動と感謝の涙が流れたことと思います。第6章の気候変動と強制移動。キリバス、ツバル、モルジブ、バヌアツのところ、興味深く拝読しました。いつもひたすら、理論的な見通しをもった革新的研究への地盤を築くために尽力されてきた先生の深い人間愛を感じています。
『国際強制移動の政治社会学』(勁草書房)、『グローバリゼーションと国際強制移動』(勁草書房)、『国際強制移動とグローバル・ガバナンス』(御茶の水書房)に続いて、難民・国際強制移動研究のさらに大きな成果を一冊にまとめられ、私にとってはとても近寄りがたい存在です。
でも4月からまた東松山の学バスでご一緒できると思うと何てラッキーなんだろうと思います。
多文化研には、難民研究者と実践者が大勢おります。どうぞ今後ともご指導賜りたくよろしくお願いいたします。
先生のご厚情に感謝を込めて。

川村千鶴子

=====
【多読味読<18>:エマニュエル・トッドほか『世界の未来』朝日新書2018年2月28日】

みなさま こんばんは 川村です。

もう読まれたかもしれませんが、「ギャンブル化する民主主義、帝国化する資本主義」いう副題に惹かれて読了しました。特に、最後のホリフィールド「分断の克服」の章に共感します。
4名が本音で語ってくれる良書です。

http://www.hmv.co.jp/artist_エマニュエル・トッド_000000000573630/item_世界の未来-朝日新書_8499530
グローバル化への反動として、多くの問題が噴出する私たちの社会。先進国の中でこそポピュリズムが台頭するのはなぜか。行き詰まる民主主義の再活性化には何が必要か。崩壊が進む資本主義に取って代わるものはありうるのか。排外主義の高まりとどう向き合えばよいのか。
目次
1 世界の未来―私たちはどこに行くのか(はじめに「核家族」と「民主主義」があった/ 英米で再登場し、欧州大陸で消える民主主義ほか)
2 民主主義の希望―ポピュリズムと21世紀の民主主義(選挙による民主的な成果の衰退/ ポピュリストのプロジェクトほか)
3 資本主義の限界―グローバリゼーションと国際国家システムの危機(資本主義にかわる新たな秩序/ 国内の反乱 ほか)
4、分断の克服―移民政策に失敗した国は、21世紀の負け組になる(人間社会に不可欠な「壁」/ 移民政策の「リベラル・パラドックス」

=====
【多読味読<17>:『日本における無国籍者―類型論的調査―』無国籍研究会】

多文化研のみなさま

先日、無国籍研究会が執筆した『日本における無国籍者―類型論的調査―』が国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所より発行されました。
日本における無国籍者にはどのような類型があるのか、ということを洗い出し、それぞれの抱える問題を挙げ、その上で解決策を提案しました。
以下よりアクセスできます。
http://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2017/12/TYPOLOGY-OF-STATELESS-PERSONS-IN-JAPAN_web_JP.pdf

英語版は以下です。
http://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2018/01/TYPOLOGY-OF-STATELESS-PERSONS-IN-JAPAN_webEnglish.pdf

ご参照いただければ幸いです。

またこの報告書の内容も含め、無国籍に関するシンポジウムが、2/12にICUで開催されます。
https://mukokuseki-centre.jimdo.com/その他-1/開設記念シンポジウム/
よろしければおいでください。

川村千鶴子

=====
【多読味読<16>:平井晶子、床谷文雄、山田昌弘編著『出会いと結婚』日本経済評論社2017年12月、5,200円】

賽漢卓娜様(サイハンジュナ様)

歴史と比較から読み解く日本の結婚、こんなにタイムリーで重厚な一冊をご恵贈いただきありがとうございました。
嬉しく有難く年末年始に拝読させていただきます。
多文化研の皆様にとって必読の力作です。P367
内容紹介
未婚、晩婚、離婚、再婚、国際結婚、同性婚――。ひとはどんな出会いを経て、誰と結びつくのか。現代および歴史的な日本の状況と、世界の事情から、結婚の意味を再考する。
目次
序章 歴史と比較から読み解く日本の結婚 平井晶子
第1部 現代日本の結婚
第1章 日本の結婚のゆくえ 山田昌弘
第2章 出会いと結婚の半世紀 中村真理子
第3章 「ナショナルな標準家族」としての日本の国際結婚 賽漢卓娜
補論1 法律学からみた再婚の意義  床谷文雄
第2部 世界の結婚
第4章 アジア七地域における「出会いと結婚」の諸相 伊達平和
第5章 フランスにおけるカップル形成と法制度選択 大島梨沙
第6章 「ほどける」結婚 宇田川妙子
第7章 フィリピン・ムスリムの家族形成にみる連続性と多様性 渡邉暁子
補論2 人類学における結婚の諸概念をめぐって 小池 誠
第3部 日本の結婚の歴史的展開
第8章 十九世紀の越後国から陸奥国への遠方婚からみた地域変化 川口洋
第9章 近代移行期における西南日本型結婚パターンの変容 中島満大
第10章 近代日本の出会いと結婚 服部誠
補論3 明治民法と改正要綱における「出会いと結婚」 蓑輪明子

川村千鶴子

=====
【多読味読<15>:「THE BIG ISSUE JAPAN特集:Welcome 夜間中学」2017年10月、350円】

The Big Issue はよく買っていますが、今日はびっくり。
パッと開いたら関本保孝先生の大きな素敵なお写真が飛び込んできました。14~15p。必読です。
28の出身国籍・地域をもつ生徒たち。「行政が形式卒業者も通えることをもっとPRし、自主夜間中学を援助して、基礎教育としての義務教育が保障されることを願っています。」
ほかに川口、松戸、福岡の自主夜間中学が特集されています。
「居場所のような学校」という表現が随所に出てきますね。
【難民映画祭2017:『The Citizen 市民』ハンガリー語】
UNHCR今年の13作品は、それぞれ優れたドキュメンタリー映画です。

http://unhcr.refugeefilm.org/2017/schedule/#01_03

私は、ハンガリー映画『The Citizen』に「人生」「生」「死」を学びました。
アフリカからハンガリーに逃れた難民、市民権の試験勉強を支える教師、恋愛感情、同居するイランの不法滞在女性、出産、医療、強制送還、偽装結婚、警官、移動・・この映画の字幕にも安心の「居場所」が何度も出てきました。
ご紹介まで。

川村千鶴子

=====
【多読味読<14>:五十嵐ゆかり「多国籍化する医療現場の多文化共創を目指して―異なる言語を課題とする認識からの脱却―」『国際人流10月号』】

『国際人流10月号』公益社団法人入管協会、拝読しました。
【多文化「共創」の国・日本】のリレー連載の第8回目です。タイトルは「多国籍化する医療現場の多文化共創を目指して―異なる言語を課題とする認識からの脱却―」

五十嵐ゆかり(聖路加国際大学大学院看護学研究科准教授)

・日本における人口潮流
・外国人の受け入れに対する政策の動き
・多国籍化する医療現場
・共創を阻む課題
・「異なる言語が課題である」という認識からの脱却
・医療現場の多文化共創をめざしてご存知のように2011年から「医療滞在ビザ」の発行が可能になりました。
「外国人医師や看護師の受け入れ」に関しては、13年の国家再興戦略の中でも取り上げられましたが、08年から実施しているEPA(経済連携協定)に基づくインドネシア、フィリピン、ベトナムからの外国人看護師・介護福祉士の受け入れの促進を目指しています。五十嵐さんは、近い将来、医療現場においても同僚が外国人という状況に変わっていくと予測されています。
トランスカルチュラル・ナーシングと国際医療研究に長年携わった五十嵐さんは、医療現場における多文化共創に最も必要なことは、「語学力だけが重要ではないという共通認識」と指摘されています。
つまり異なる言語を課題とする呪縛からの解放が大きなポイントであると言えると結んでいます。五十嵐さんの論稿は、国際医療を考える上に大変示唆的です。
【多文化「共創」の国・日本】のリレー連載は、来年の3月まで毎月続いていきます。ぜひご高覧くださいませ。

川村千鶴子

=====
【多読味読<13>:渡戸一郎(編集代表)・塩原良和・長谷部美佳・明石純一・宣元錫編著『変容する国際移住のリアリティ 「編入モード」の社会学』ハーベスト社2017年8月】

明石純一さん ご恵贈賜り心より感謝申し上げます。
一昨日大学で有難く拝受いたしました。

渡戸先生、長谷部さん、宣さん、明石さん、武田里子さん
長年の科研の研究成果をまとめられた成果を結集され、「編入モード」の社会学として世に問いていただき本当に感銘深く拝読しております。305頁の圧巻です。
ぜひぜひ多文化研あげて拝読させていただき、来春には、合評会ができると嬉しいですね。
多文化研のHPの本の欄にもご紹介くださいませ。

グローバル化が進む中、越境者たちが、いかにしてホスト社会に「編入」されていくのか。そのフェーズをさまざまな角度から分析され、東アジアにおける人の流れとライフステージの変容を興味深く拝読させていただきます。第1章が、昨年、多文化研で発表くださった武田里子さんの国際結婚移住なのでとても本に入っていきやすいです。
目次をご紹介すると以下のような流れです。

変容する国際移住と「編入モード」の社会学
1 家族・女性(東アジアの国際結婚移住―在台・在韓日本人結婚移住女性の比較研究から離婚経験をもつ移住女性の起業―東京在住の韓国人女性を事例として就学前児童支援と移住女性へのエンパワーメント―シドニーの日本人永住者によるプレイグループ活動の発展)
2 教育(学齢難民の社会統合と言語習得―西オーストラリア州の中等教育学校における取り組み
日本在住ベトナム難民第二世代の編入モードについて―1.5世世代の教育達成と支援者の役割に注目して)
3 地域社会(「編入モード」から見る日系ブラジル人の位置と第二世代の課題―リーマンショック後の外国人集住地域の事例を通して
外国人集住地区における日系ブラジル人第二世代の文化変容
―「選択的文化変容」の観点から未完の多文化共生プラン―煩悶するローカル・ガバナンス)
4 政策形成(日本の人口減少と移民政策
移住民支援と統合政策の制度化―韓国の結婚移住女性と多文化家族支援を中心に)
5 多文化受容性(多文化受容性に関する日韓比較調査研究
日本と韓国のナショナル・アイデンティティとゼノフォビア―日韓多文化受容性調査データの実証的研究から)
まずは、御礼まで
感謝を込めて

川村千鶴子

=====
【多読味読<12>:稲葉佳子・青池憲司著『台湾人の歌舞伎町ー新宿、もう一つの戦後史ー』紀伊国屋書店2017年9月29日発行1800円】

稲葉佳子さん

紀伊国屋書店さんからのご出版、本当におめでとうございます!!!
表紙が素敵ですね。
台湾人の歌舞伎町 新宿、もうひとつの戦後史終戦までの50年間も、日本の統治下にあった台湾。8万人あまりが“日本兵”として戦争に駆り出され、戦前から日本に“内地留学”をしていた者も多くいた、とあります。
しかし戦後は、一転して、“外国人”として裸一貫で放り出されたのです。台湾の人びとは駅前のヤミ市で財をなし、焼け野原に新たに構想された歌舞伎町という街を創造しました。そうした激動の歴史を8年もの歳月をかけて稲葉さんと青池監督が、オーラルヒストリーを丹念に聴取しました。その後、明晰化した社会的位相を稲葉さんが執筆し、日本の多文化社会に明らかにした貴重な一冊です。
いかにして日本の多文化社会が生まれたのかが分かります。
素晴らしい名著をご執筆くださり世に送りだしてくださってありがとう。
明治生まれの私の父も大正生まれの母も歌舞伎町が大好きだったのでこの本を手にしたら本の登場人物に再会したような興奮状況になると思います。多文化研の下村治生議員も登場しますね。新宿三田会の方がたもこの歴史の証言者たちです。私は、いつも“職安通り”を“清濁併せ呑む河”として渡る時は、船を漕いでいるような気分になります。

多文化研のみなさん、ぜひゆっくり拝読して、来春にでも合評会をしましょう。
新宿歴史博物館の講堂がいいですね。私も『多文化都市・新宿の創造』慶應義塾大学出版会を上梓させていただき、紀伊国屋書店さんがブックフェアを長期にしてくださいました。
稲葉さん、ぜひ、この本の裏話とか、構成でご苦労なさったところとか
面白いエピソードがあれば、この多文化研MLでご披露くださいませ。
以下は著者のプロフィールと、稲葉さんに送っていただいた詳しい目次です。
写真の迫力がすごいので、パワーポイントで見せていただけるといいですね。

【著者】
稲葉佳子(いなば・よしこ)
1954年生まれ。法政大学大学院デザイン工学研究科兼任講師、博士(工学)。都市計画コンサルタントを経て、2008年よりNPO法人かながわ外国人すまいサ
ポートセンター理事。2012年から新宿区多文化共生まちづくり会議委員。著書に『オオクボ 都市の力――多文化空間のダイナミズム』(学芸出版社)、『外国人居
住と変貌する街』(共著、学芸出版社)、『郊外住宅地の系譜――東京の田園ユートピア』(共著、鹿島出版会)ほかがある。

青池憲司(あおいけ・けんじ)
1941年生まれ。映画監督。監督作品に『ベンポスタ・子ども共和国』(日本カトリック映画賞)、『琵琶法師 山鹿良之』(毎日映画コンクール・記録文化映画賞)、『野田北部・鷹取の人びと』全14部(日本建築学会文化賞)、『阪神大震災 再生の日々を生きる』、『3月11日を生きて~石巻・門脇小・人びと・ことば~』、『津波のあとの時間割~石巻・門脇小・1年の記録~』ほかがある。

【目次】—————————–

はじめに  歌舞伎町、ふたつの物語

第1章 ルンバの青春 1945-49 虚脱から再起へ
“やんちゃ”少年、内地へ留学する
ヤミ市から始まった戦災復興
喫茶店〈ルンバ〉の時代
新宿西口マーケットの“中華街”

第2章 〈地球座〉から始まった歌舞伎町 1945-49 理想と停滞
鈴木喜兵衛が描いた理想のまちづくり
林以文、〈地球座〉に出会う
未だ見えぬまち
〈芙蓉館〉からラブホテル街へ

第3章 「歌舞伎町」前夜 1950-54 焦燥から光明へ
“博覧会”という宴のあと
駅前の“ヤミ市”去って、歌舞伎町に“青線”来たる
〈新宿劇場〉に受け継がれた赤い風車
パチンコとヤキトリで賑わう新宿西口マーケット

第4章 “じゅく文化”の裏に台湾人華僑あり 1955-64 胎動から興隆へ
“じゅく文化”は名曲喫茶から
娯楽のまちと暮らしのまち
新宿西口マーケットの消滅

第5章 台湾人が愛した歌舞伎町 1965-74 爛熟、そして変容
華僑ストリートになった花道通り
新宿・歌舞伎町の“ザ・台湾人華僑”たち
去りゆく戦後

おわりに 再開発のなかの歌舞伎町
—————————–
もっと歌舞伎町を知りたい方は、
武岡暢 『生き延びる都市 新宿歌舞伎町の社会学』があります。

https://www.amazon.co.jp/dp/478851513X/ref=dp_return_2?ie=UTF8
<https://www.amazon.co.jp/dp/478851513X/ref=dp_return_2?ie=UTF8&n=465392&s=b
ooks> &n=465392&s=books

このMLを読んでくださっているみなさまも「歌舞伎町」の情報や文献をこのMLにお寄せくださいませ。

川村千鶴子

=====
【多読味読<11>:南誠著『中国帰国者をめぐる包摂と排除の歴史社会学 -境界文化の生成とそのポリティクス』明石書店2016年2月25日278頁】

南誠様(中国名:梁雪江 LIANG XueJiang)様

長崎滞在中は、大変お世話になりました。
私の心は、いまもなお長崎を旅しております。昨日9日11時2分は新宿区役所全館、平和への祈りを込めて黙祷を捧げました。
午後と夜は中国帰国者の方がたに日本語を教えておられる方との会合がありました。
中国残留婦人のお孫さんにあたる当事者としての南さんが京都大学で博士の学位を取得し、長崎大学多文化社会学部の准教授としてご活躍のこと。
みんぱくでの共同研究員としての出会いが本当に嬉しく、ご高著をいままた有難く拝読しております。

多文化研の皆様には、梁雪江博士のご著書の目次を以下にご紹介いたします。
歴史社会学を学ぶ指標となり、戦後73年、いまだに戦後が終わっていないことを感じております。巻末「中国帰国者に関する年表」をもとにいつか梁雪江さんにご講演を賜る機会があったらと願っております。

川村千鶴子
~~~~~~~~~~~~~~~~
序章 「中国帰国者」の境界文化 一 「中国帰国者」の問い
二 「中国帰国者」の先行研究
三 本研究の分析視角と枠組み

第一部 歴史編
第一章 国民の包摂と引揚 一 国民の送出と包摂
二 引揚と「再祖国化」
三 包摂の余剰
四 国民の包摂と外交

第二章 不完全な国民統合 一 法的処理と国籍問題
二 「残余カテゴリー」の排除
三 法的主体の抹消
四 忘却と記憶のあいだ
五 法の例外状態

第三章 もう一つの包摂物語 一 実態の把握
二 日本人政策の模索
三 国籍と社会統合
四 剝き出しの生

第二部 表象/実践編
第四章 忘却と想起の痕跡 一 「日中友好手をつなぐ会」の活動
二 肉親捜し・帰国促進運動と日本社会
三 民間団体の主張
四 残留と棄民の系譜
五 親密圏から公共圏へ

第五章 支配的物語の生成 一 記憶・表象するメディア
二 錯綜する記憶・表象
三 記憶・表象の政治学
四 「中国残留日本人」は語られたか

第六章 境界の集合的構築 一 「中国帰国者」の「再」包摂
二 国家賠償訴訟運動と社会的構築
三 集合的表象
四 沈黙の語り

第七章 境界文化の政治学 一 命名のポリティクス
二 呼びかけられる行為体
三 境界文化の政治
四 境界文化の諸相

終章 生成的な境界文化 一 「中国帰国者」の歴史/社会的構築
二 「よき国民」と社会的排除
三 今後の課題
~~~~~~~~~~~~~~~~~

=====
【多読味読<10>:齋藤達雄著『ミクロネシア』すずさわ書店1975すずさわ叢書 3】

ネパールの話ならぜひ聴きたいね。と前回の例会には1年ぶりに齋藤先輩も最後列に座っておられました。
後でご感想を伺ったら、「難聴なので、一言も聞こえなかった」とおっしゃっていました。
気が付かなくてすみません。次回は最前列をご用意いたします。杖をつきながら二次会も最後まで参加してくださって、本当に感謝です。
共同通信ホノルル特派員であった30歳の齋藤さんがミクロネシア・ポナペ・マジュロ・ビキニ諸島・クワゼリン・・・辺境の地をくまなく歩いて日本の南洋群島統治、米英仏の水爆実験と「ヒバク」を鋭く暴いた『ミクロネシア』を再読しました。
1975年にこの本を上梓した勇気と正義感・人間愛に感動しました。
多文化研必読書と思います。

川村千鶴子🍀
NPO法人ミクロネシア振興協会顧問
太平洋学会、太平洋諸島学会会員

=====
【多読味読<9>:国立研究開発法人科学技術振興機構、研究開発戦略センターCRDS編『科学をめざす君たちへー変革と越境のための新たな教養』慶應義塾大学出版会、2017年3月30日発行、378頁、1500円】

https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=3348

おはようございます。

トランスとは壁を乗り越えること。文理融合と簡単に言うけれど、サイエンスの越境とはどんなことなのでしょうか。多文化研・必読の一冊です。「はじめに」を拾って
みると。

<人類の命運を握るのは、峻厳な自然ではなく、人間自身の価値観です。今や、自らの倫理観や人生観、文明観を糺し、「あるべき人間社会」を設計するための「価値観のイノベーション」そして「自然と人間性への回帰」こそが決定的に大切だと思います。100年後の後継世代まで確実に「生存の条件」を引き渡すべく、若い世代の新鮮な知性と感性が人類に大きな飛躍をもたらすことを期待して、本書をお届け致します。>

木内鉄也様

誰もが感動する素晴らしい一冊を編集者として完成させ、世に送り出しておられること、心よりお慶び申し上げます。文系・理系双方の日本を代表する著名な学者20名の中で、かつて私が一番影響を受けたのが広井良典先生です。近代における「サイエンス」と「ケア」の分裂から再統合。そして「ケアとしての科学」(science as care)への志向。
私は、そこから人の移動とグローバル・ケア・スケープを提案しました。
安西祐一郎先生とは同期で、学生時代、スキーをご一緒しました。1977年のお写真は素敵ですね。
安西先生は当時、「恋をするコンピューター」を創ろうとしていたのではないでしょうか。懐かしいです。

川村千鶴子

=====
【多読味読<8>:小泉康一著『グローバル・イシュー ・都市難民 Global Issue :Urban Refugees』ナカニシヤ出版2017年2月、217頁、3700円】

Global Issue Urban Refugees 世界中の都市へ逃げ込む難民をどう救うのか。

行政サービスは欠如し、状況は不安定で危険である。・・・最終的な落ち着き先を待
つ間、読み書きの能力、言葉、職業上の技能ギャップを埋める計画を立てて支援することが大切。
メディアの役割やコミュニティとの関わりなども重要。物理的な力で事業を進めるのではなく、世界銀行で使われてきている定住指針に基づいて行うようにされる必要がある。・・・

かつて国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)でプログラム・オフィサーとして従事さ
れ、その後も世界中の強制移動民の調査をひたすら続けてこられた小泉康一先生が,農村から都市部へと向かう難民の実態と,援助のあり方を議論されています。難民の労働権に関して、難民が安全で正規の雇用が許可された場合には、利益となることを実証的に示されています。さらに難民は知識や技術をもたらし、農業以外にも専門技術や商いの技術を持つ人もいる。受け入れ国の経済は利益を得る。経済成長と政治的安定を求める国は、難民に職業機会を与え、関連する諸権利を認めるべきであろう。
定住は複雑な社会過程であり、地域で彼らが活動的で、一貫性と機能性を再び取り戻
せるように支援すべきとも書いています。現在の避難の状況は、強制移住理論や大半の人道援助措置にはそぐわない。原因国、目的国、周辺国、各国政府、実業界と市民社会などすべての行為者の役割を明確にし、国際合意を進め、いまある制度をより良く機能される上で、創造性が求められていると結んでいます。
序 章 問題の概観
1 はじめに
2 現代の危機と移動する多様な人々
3 急激な都市化と都市型災害
4 不可視の人々 ――利便性と危険性――
5 〝現実は選択の問題ではない〟という多様な理由を理解する
第1章 背景と文脈
1 都市難民とは何か
2 困難な定義
3 UNHCRの見方と取り組み
4 敬遠・忌避される難民キャンプ
5 都市にとって、なぜ都市難民が問題なのか
6 都市難民が抱える特有の事情
第2章 都市難民へのアプローチ ――基本となるデータと分析法――
1 はじめに
2 移動の心的状況
3 都市への流入と困難な実態把握
4 国際強制移動研究と生計アプローチ
第3章 難民の法的保護 ――国家の政策と法制――
1 はじめに
2 国家の安全保障への懸念と負担の感覚
3 厳しさを増す〝北〟への入国と暴力的抵抗
4 法の実施と難民保護
5 UNHCRの新政策と保護活動
6 登録と難民認定
7 書類入手と法的地位
8 労働権
9 まとめ  ――人道と政治(市民権)――
第4章 都市で生きる
1 はじめに
2 受け入れ国での障害
3 深刻な住居問題
4 頻繁な移動と登録
5 〝ただ待つ〟ことは病気にする
6 生きるための戦略・工夫
7 歪んだ戦略を強いられる難民もいる
8 絆の社会ネットワーク
9 当面の課題
10 調査と介入
第5章 都市の成長と危機移動――地方自治体と国際人道援助――
1 はじめに
2 地方自治体の責任と役割
3 多様な対象者と援助
4 移動と開発
5 都市開発と人道活動
6 人道空間と人道行為者
7 人道援助とコミュニティでの生活
8 法的枠組みと統合過程
第6章 グローバルな避難民と都市対応の人道活動
1 はじめに
2 不可逆的な都市化と国民国家の人口管理政策
3 グローバル化の高まりと南北間の格差の拡大
4 おわりに――広い視野と新しい人道指針――
終 章 都市難民の研究 ――倫理と科学的厳密さ――

著者のプロフィール:1948年仙台市に生まれる。1973年東京外国語大学インドシナ科卒業。1977年東京外国語大学大学院修士課程修了。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)タイ駐在プログラム・オフィサー、英オックスフォード大学難民研究所客員研究員、ジュネーヴ大学国際関係高等研究所客員研究員。現在、大東文化大学国際関係学部教授。専攻、難民・強制移動民研究

小泉先生とは、日頃、学バスでご一緒できるので幸運です。

川村千鶴子

=====
【多読味読<7>:河合優子編著『交錯する多文化社会ー異文化コミュニケーションを捉え直す』2016年12月20日ナカニシヤ出版】
http://www.nakanishiya.co.jp/book/b253443.html

河合さん、ご出版おめでとう!!!ご恵与いただき感謝申し上げます。
人種、エスニシティ、ネイション、ジェンダー、階級、宗教などが関わる構造的力関係とアイデンティティが複雑に絡まり合う多文化社会。そうした社会を「交錯」を軸に長い間探究された成果をありがたく拝読しています。
つい言ってしまう「イタリア人」「ネパール人」「○○人」といった境界を揺さぶることって大切ですね。多文化研の多くの会員は、この抗しがたい複雑なコンテクストと多様なカテゴリーとの交錯を研究されてきたので、河合さんのご発表の機会があればとても盛り上ると思います。特にメディア分析に関しては異論・反論・加論とかいろいろありそうな気もします。・・

川村より

<目次>
◎序章 多文化社会と異文化コミュニケーションを捉える視点としての「交錯」(河合優子)
第一部 越境と混淆
第一章 トランスナショナルな家族形成における差異の交錯
――夫の国パキスタンに子と移住した日本人女性の事例から(工藤正子)
第二章 〈共に生きる領域〉における多文化的実践
――在日コリアンの「若者」の追跡調査から(川端浩平)
第二部 言説と実践
第三章 メイクアップされるブラジル人女性の生活世界(渡会 環)
第四章 日常的実践としてのナショナリズムと人種主義の交錯
――東アジア系市民の経験から(河合優子)
第三部 表  象
第五章 大久保の表象に見る文化の交錯/非交錯(田中東子)
第六章 「風景論」再考――交錯する風景『サウダーヂ』(高 美哿)
編著者
河合 優子(立教大学異文化コミュニケーション学部教授)

=====
【多読味読<6>:好井裕明編『排除と差別の社会学(新版)』有斐閣選書2016年9月30日】

佐々木てるさん、素晴らしいご著書をご恵贈いただきありがとうございました。
2009年に刊行された旧版が版を重ね好評で、執筆者メンバーを半分以上入れかえての改訂新版ですね。時代の変化を感じつつありがたく拝読しています。
排除や差別と向き合い、日常をより豊かに生きるためにはどうしたらいいのでしょうか。
原発事故やヘイトスピーチ、いじめ、マタニティ・ハラスメント、JGBTと老後など、日常生活で生じているさまざまな排除や差別を社会学の視点で読み解き、多様性の社会学に迫っています。「くまさんの映画コラム」も役立ち、学生にも紹介しています。
排除と差別を超える社会学として、多文化研でも合評会の機会をもって、佐々木てるさん(青森公立大学准教授)にご教示いただけるといいな~と思っています。

▽多文化研のメンバーの筆力を感じています。次々に新しい良書が出版されています。ぜひHP管理者にご執筆された新書をご紹介いただけると幸いです。
また【多文化研の多読味読】欄の担当者も数名お手伝いいただけると幸いです。多分野・多言語・辛口甘口に対応できる【多読味読】にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

川村千鶴子

=====
【多読味読<5>:増田隆一著『変わりゆくマスメディア』あみのさん2016年10月31日】

「変わりマス」

増田隆一さんの力作『変わりゆくマスメディア』(あみのさん、1000円)が出版されました。増田さんは、京都大学工学部を卒業され、朝日放送に入社され報道、編成、メディア開発室インターネット事業部長などを歴任されました。
パリ特派員のころにはベルリンの壁崩壊や湾岸戦争などを取材されました。
本書の第5章 新たなメディアの時代へ から拝読しました。とても面白いです。2020年までに、眼鏡型やベルト型など直接身体に装着するようなタイプの情報端末(ウェアラブル端末)が多数現れる・・・。
そんな時代についていけなくなったらどうしよう🌷🌸🌿。
ぜひとも多文化研でマスメディア論についてお話を頂きたいと思っています。

川村千鶴子

=====
【多読味読<4>:新垣修「現代の難民レジームにおける武力紛争と国際人道法」『論究ジュリスト』19号秋特集号】

国際基督教大学教養学部教授の新垣修先生より
『論究ジュリスト』19号秋特集号の複写データをお送りいただきました。
多文化研のみなさまとありがたく共有させていただきます。感謝いたします。
「現代の難民レジームにおける武力紛争と国際人道法」
新垣先生は、名古屋での国際メトロポリス会議の無国籍のセッションでもご講演されました。拝聴させていただきました。
今日の多文化研例会では、近刊の文献、興味深い資料など回覧したいと思いますので、ぜひお持ちくださいませ。

川村千鶴子

=====
【多読味読<3>:小泉康一・川村千鶴子編著『多文化「共創」社会入門ー移民・難民がともに暮らし、互いに学ぶ社会へ』慶應義塾大学出版会】
Multicultural Synergy: Conceptual Challenges and Practical Solutions in the Age of Global Migration
2016年10月31日、慶應義塾大学出版会 2200円

多文化共創社会

https://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=3274

まえがき   川村 千鶴子
第1部 移民・難民理解へのアプローチ
第1章 学びの多様性と多文化共創能力
―― 親密圏と社会統合政策   川村 千鶴子
はじめに
1 フォーマルな学びとノンフォーマルな学び
2 親密圏と統計資料には見えない数値
3 難民とともに生きる――人道危機と国際社会を学ぶ
4 日本人の多様性――海外帰国子女から学ぶ
5 人の異なりと多重知能理論
6 生涯を通して学び合う ―― ライフサイクルの視座
おわりに
第2章 多文化と医療
―― 性と生殖を守るために   五十嵐 ゆかり
はじめに
1 医療現場における課題
2 課題の解決のために、あなたは何ができるか
3 リプロダクティブヘルス・ライツとは
おわりに
第3章 家族の変化を知る
―― 多文化な家族と地域社会   渡辺 幸倫
はじめに
1 日本在住の国際結婚家庭の状況
2 中国や韓国に住む日本人の父親のケース
おわりに
第4章 多文化共生の担い手を育てる
―― 群馬県大泉町での日本語教育   齋藤 俊輔
はじめに ―― 多文化社会における日本語教育の重要性
1 大泉町におけるブラジル人コミュニティ
2 大泉町における日本語教育
おわりに
第2部 多文化共創まちづくりへの基礎知識
第5章 エスニック・コミュニティと行政の役割
―― 外国籍住民が「主体」になるために   長谷部 美佳
はじめに
1 日本のエスニック・コミュニティの現状
2 エスニック・コミュニティの役割と限界
3 エスニック・コミュニティと行政の連携
4 エスニック・コミュニティと地域、市民団体との連携
5 外国籍住民――支援対象から地域の主体へ
おわりに
第6章 企業が取り組む多文化共創
―― CSRとダイバーシティ・マネジメント   郭 潔蓉
はじめに
1 グローバル化と企業組織の多国籍展開
2 外国人雇用の傾向と課題
3 「ダイバーシティ・マネジメント」とは
おわりに
第7章 日本の移民・難民政策   藤巻 秀樹
はじめに
1 移民政策不在の日本
2 社会統合への模索
3 難民鎖国ニッポン
4 グローバル人材を求めて
おわりに
第8章 エスニシティの形成と創造
―― マジョリティ・マイノリティ関係の動態   川野 幸男
はじめに
1 マジョリティとは何か ―― 喪失と忘却の共同体
2 エスニシティの形成 ―― 国家とマジョリティの役割
3 マイノリティを引き受けること ―― 創造するエスニシティ
4 マジョリティの観点 ―― 加害や犠牲の事実に真摯に向き合う
おわりに
第9章 外国人の市民権とは
―― グローバル市民への視点   錦田 愛子
はじめに ―― 人はなぜ移動するのか
1 人を守る仕組みとしての市民権
2 国籍の取得をめぐって
3 市民となるための葛藤
4 多文化社会をめぐる課題
おわりに
第3部 人の移動から世界を読み解く
第10章 現代世界の人の移動
―― 複合する危機と多様な人々   小泉 康一
はじめに
1 危機の時代
2 難民/移民の区分に合わない人々
3 高くなる国境の壁と密輸業の隆盛
4 出口が見えない解決への道筋
おわりに

第11章 人はどう動いてきたのか
―― 世界の変化と人の移動   池田 丈佑
はじめに ―― 「ホモ・モーベンス」としての人間
1 自然環境と移動
2 宗教と移動
3 迫害と移動
4 移動と主権・国家
おわりに
第12章 世界は人々をどのように守ってきたのか
―― ルール・組織と活動・恒久的解決   上野 友也
はじめに
1 難民を守るためのルール
2 難民を守るための組織と活動
3 難民の問題を解決するためには
第13章 私はどこに属しているの?
―― 無国籍に対する国際的取り組み   新垣 修
はじめに
1 無国籍者の地位に関する条約
2 無国籍の削減に関する条約
3 UNHCRの役割と活動
おわりに
第4部 21世紀をグローバルに考える
第14章 途上国では、いま何がおきているのか
―― ソマリアの事例から   杉木 明子
はじめに
1 ソマリ社会とソマリアにおける紛争
2 ソマリアにおける国内避難民問題
3 ケニアにおけるソマリア難民の状況
おわりに
第15章 難民流入に対するEUの移民・難民政策   久保山 亮
はじめに
1 移民・難民政策の「共同体化」はどこまで進んだか
2 EUと難民 ―― 「要塞ヨーロッパ」の高い壁
おわりに
第16章 国境を越える民、国家を超える人権
―― 移民・難民の人権保護と国際人権法   藤本 俊明
はじめに
1 人権保護としての移民・難民の保護
2 国際人権法における移民・難民の人権
3 日本における移民・難民の人権保護
おわりに
第17章 難民の定住と心的トラウマの影響   森谷 康文
はじめに
1 定住に先立つ体験
2 難民の体験が与える定住生活への影響
3 日本における難民の定住支援の課題
おわりに
第18章 移民・難民への見方を問い直す
――〝新しい人道主義〟を超えて   小泉 康一
はじめに
1 難民は各自違う
2 〝人道〟という言葉の危うさ
3 〝模範的な人道主義〟と〝政治的な人道主義〟
おわりに
あとがき   小泉 康一
資 料

=====
【多読味読<2>:『三田評論8・9月号』特集:日本における多文化共生2016年8月2日発行:慶應義塾】

度々すみません。http://www.keio-up.co.jp/mita/ とても綺麗な表紙ですね。定価443円

◆特集 :日本における多文化共生
世界各地で「多文化共生」が試練に面しています。欧米等と比べ、日本では「多文化共生」の必要度が薄いようにも感じられますが、グローバル化の中、多くの自治体が「多文化共生」の課題に取り組み、またダイバーシティー(多様性)を力にしています。「共に生きる」という意味が様々な場で問われるなか、「日本における多文化共生」の現状とこれからを探ります。

〈座談会〉グローバル化の中で「共に生きる」とは
渡戸一郎(明星大学人文学部教授)
鈴木康友(浜松市長・塾員)
金 迅野(社会福祉法人青丘社評議員・塾員)
塩原良和(慶應義塾大学法学部教授)

〈関連記事〉
◆「データから考える日本の多文化化」鈴木江理子(国士舘大学文学部教授)
◆「外国にルーツを持つ子どもたちの学び
──「たぶんかフリースクール」の取り組みを通して
枦木典子(特定非営利活動法人多文化共生センター東京代表理事)
◆「ライフサイクルの視座と日本における多文化「共創」
──社会統合政策に向けて」
川村千鶴子(大東文化大学環境創造学部教授・塾員)
◆「日外国人医療の変遷および現状と課題」
小林米幸(医療法人社団小林国際クリニック理事長・院長、
特定非営利活動法人A M D A 国際医療情報センター理事長・塾員)

「共創」の概念を書きました。枦木典子さんの取組みもぜひ、ご高覧いただけると幸いです。

川村千鶴子

=====
【多読味読<1>:太平洋諸島学会誌『太平洋諸島研究』第4号 太平洋諸島学会2016年7月】

学会誌の編集作業は、骨の折れる仕事ですが、この1年間、『日本オーラルヒストリー研究』と『環境創造22号特集号』9月号に取り組んでいます。
『太平洋諸島研究』第4号が届きました。特に印象に残ったのは、
<研究ノート>◆「礼節のポリティックス―現代ミクロネシア・ポーンペイの政治秩序形成における敬意表現の役割―」河野 正治(筑波大学大学院)
多文化研のNiko Besnier 教授の論文が引用されています。

◆”New Visions for International Aid: Perspectives from the Pacific Islands”
Kaitu’u ‘I Pangai FUNAKI(立命館アジア太平洋大学大学院)
かつてトンガからの留学生だったフナキさんの立派な論文です。

<資料>◆「第二次世界大戦前のトンガにおける日本人の足跡」
葉室和親(元トンガ日本大使)、青柳まちこ(元立教大学)、北原卓也(早稲田大学大学院)

伴野貿易の懐かしい歴史の数々。新宿区にお住まいの伴野ジェシーさんは、いま105歳、お元気です。
みなさまも面白い本は、どんどん投稿してくださいね。

川村千鶴子

=====